第4話・初めての出会い
―――砂漠の聖域オアシス―――
「あれはっ!?ハルト!急げ!人間が魔物襲われておる!」
「高速移動ッ!!」
加速魔法を唱える!
一定時間移動速度が極限まで上がる初級魔法だ。
「誰かっ!!ゼシカを助けてっ!!」
頭が豚で体は人間の姿をした魔物に殺されそうな女騎士が見え、その周辺には護衛であろう兵士が横たわっており、先程助けを求め泣き叫ぶ少女の姿もある。
「加速ッ!!」
加速魔法にさらに加速を加え、魔物めがけ剣を抜く!!ザシュッ!!!
魔物の首を一閃!魔物の首が吹き飛び血しぶきが上がる。間一髪の所で女騎士を救えた。後は……スライムの群れか。
「光の雨ッ!」
無数の光の雨がスライムの頭上に展開し、激しく突き刺さり消滅していく!
この数ヶ月で魔法と剣の使い方がわかってきた。これもアリスの教えのおかげか。この世界で生きていく為の……。
「うむ。ハルトよ、見事だ。修行の成果であるな」
「あぁ……生命回復!」
僕は女騎士ゼシカの傷を癒やす。
「すまない。なんとお礼を言っていいものか……助かった」
美しい。水色の髪に青色の目。スラッとした体型なのに豊満な……が、鎧の上からでもわかる。
「大丈夫ですか?お礼などいりません。僕と子供を作り……」
「アリスちょぉぉぉっぷ!!」
『べしっ!!』
「いってぇぇぇぇぇぇ!」
「ど、どうかされましたか?」
気を抜いていた。アリスの姿は周りには見えず、1人で痛がる僕は周りの人の目にはどういう風に映るのだろうか。
「たわけ。順序というものがあろうが」
冷ややかな眼差しで僕を見るアリス。
「ゼシカ!!ゼシカッ!!わぁぁぁぁん!!」
「チグサ様、申し訳ございません。私共がいたらぬばかりに……お怪我はございませぬか!」
「私は大丈夫!それよりもゼシカが無事で……」
泣きじゃくるチグサと呼ばれた少女。兵士達は間に合わなかったが、数人のメイド、ゼシカ、チグサは助かったみたいだ。
しかしこのチグサと言う少女……記憶の中の何かが引っかかる。
「そなたの名前を教えて頂いてもよろしいか」
ゼシカがチグサを抱きかかえ、こちらを振り向く。
「ハルト。センケ・ハルトと言います」
「えっ!おっ……!?ハ、ハルト様……ゼシカを救って下さり本当にありがとうございます。チグサと言います!このご恩は一生忘れません!」
毅然とした表情で彼女は言った。
「ハルト殿。ぜひお礼をさせて頂きたい」
「そうですね!ぜひ我が家でお礼をさせて下さい!」
2人が笑顔で誘ってくれる。
「まぁ、急ぐ旅でも無いし、お言葉に甘えて……」
「それでは、あちらにお乗りください」
メイドさんが馬車の方を指差した。そう言えば馬車に乗るのは初めてだ。そもそもメイドさんっていうのも初めてかもしれない。
「アリス、探しものはあったのか?」
アリスに念話してみる。念話とは言葉を発せずとも、直接相手の頭に話しかける魔法だ。
「いや、見当たらないの。ここに無いとすれば……あるいは……ブツブツ……」
アリスは物思いにふけっている。
僕が馬車の方へと移動するとアリスも引っ張られ着いてくる。アリス本体が僕の中に存在する事によって、分体は引っ張られるらしい。いつも歩いている様に見えるが、分体は若干浮いている説もある。
どのくらい離れて移動できるか試したことがあったが、数十メートルでアリスの分体はすぅぅぅと寄ってきた。守護霊というか、守護神というか、今後対策を考えないといけない事もある。例えばお風呂とかトイレとか……。
馬車に乗り込むと、早速ゼシカに聞いてみた。
「ところで、ゼシカさん達はこちらで何をされていたのですか?」
「はい。チグサ様とイースタンの森へ行った帰りにオアシスで休憩していました。先程のオアシスで突然魔物に襲われまして……そこへハルト殿が来てくれたのです」
「本当に助かりましたのっ!!」
チグサはコロコロと笑顔がかわいい無邪気な少女だ。ゼシカにくっついてこちらを見ているが少し違和感を覚える。視線が妙に上を見ているのだ。
僕は気付いていないフリをし、話を続ける。
「ゼシカさん……見た所、あの魔物に遅れを取る人数ではないとお見受けしましたが……」
「はい、そうなのですが、チグサ様を逃がすのが先決でして。後手を取ってしまい、あの有り様です。お恥ずかしい。ところで先程の太刀筋見事でした。ハルト殿は旅の冒険者とお見受けしましたが?」
『はい。南の大陸より来たばかりで聖都へ向かう途中でした』
アリスの念話に合わせて嘘の返答をする。突然、異世界から来た人間族と神族のハーフって言われても信じられないからだ。
「南の大陸?サウスタンではなく?」
まずいっ!何か余計な事を言ったか!
「……は……ははは!す、すいません!サウスタンの方角でした。田舎者でして!僕は仕事を探しに聖都へ向かう所だったんです!」
「そうか!それはちょうど良かった!馬車で2日ばかり走るが、私達も聖都へ戻る途中。これもなにかの縁だ。ぜひご馳走させて下さい」
ゼシカがそう言うと、チグサも合いの手を入れてくる。
「ぜひぜひっ!」
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます。聖都は初めてなので色々と教えてください」
そうか。この大陸の南端がサウスタンなのか。さらに南は大陸が繋がっていないということなのだな。
「おかしいのぉ。以前はサウス山脈の向こうに大陸があったのだが……」
アリスが難しい顔をしている。
「……ゼシカさん。僕は聖都が初めてでして、通貨の種類など教えて頂きたいのですが、構いませんか」
「もちろん。通貨や聖都のこと、仕事を探すなら冒険者ギルドの話も教えましょうか?」
「ぜひお願いします」
僕は移動中のこの2日間で、通貨の種類、聖都、冒険者ギルド、大陸の話などを教えてもらった。




