第46話・神の経典
―――エルフの森南の湖―――
ゴォォォォォォォォォォォォ……!
パラパラパラパラ……。
しばらくすると辺りに再び静けさが戻る。そしてにらみ合う、僕と魔物となったカイ。
「時雨一文字!」
魔物カイとの間合いを一瞬で詰め、右腕を切り飛ばす!血しぶきと共に魔物カイの右腕が地面に転がる。
「ほぅ、お前なかなか速いな。だが……グガガガガガガガガ……!」
雄叫びと共に魔物のカイの右腕が再生する。
「アリス、今の見たか?再生したように見えたけど……」
「嫌な胸騒ぎの元はもしやこれか。こやつ神族かもしれぬ」
「神族……」
「ゲヘヘヘヘ。何をしても無駄だ。いくら切った所で再生して甦る。ギャハハハハ!」
「あぁ、ウザい。こんなやつの下でメリダは奴隷としてこき使われたのか。ゲスめ、ゴミ虫め……」
「死ぬ前にお前に教えてやるよ。この大陸の魔王軍四死聖の四人はいずれオレが殺す予定だった。このマサミカ大陸はいずれオレの物。女以外は全員殺してやる。お前らなんぞ……」
くそが……この雑魚……雑魚雑魚……。
「ザコザコザコザコ……あっ」
思っていた声が口に出ていた。次から気を付けよう。
「きさまぁぁぁ!!死ねぇぇぇ!!」
魔物カイの体から無数の毒針が放たれる。そして口から光線が放たれる!さらに目も光りだした!
「……合体ロボか、お前は」
呆れた顔で僕は右手をかざす。
『黒穴!』
僕が手をかざすと、すごい勢いで黒穴に魔物カイが放った攻撃が全て吸い込まれていく。
「……へ?」
「もういいか?疲れた、お前と遊ぶのに」
「くそっ!魔王殺法電気火花!!」
辺りに閃光が走り爆発する。
「……だからそれが何だ」
僕はかわす事も無く全部受けきる。扇風機の中風くらいな感じしかしない。
「アリス。もしかしてだけど、神族を消滅させようとすると再生不可能な大きさとかがあるのか?」
「うむ。2分の1程度ではなかろうか。本体の2分の1を失えば戻らない可能性はあるの」
「そうか……よし。やってみるか」
僕は妖刀時雨を構え、身を低くする。
「高速移動・改・脱兎!」
さらに見様見真似、加速剣技……!
「奥義っ!!無双千草っ!!」
スッ……!と僕の周りの時間がゆっくりになる。
「き、消えた……?どこだ……どこへ行きやがった!」
次の瞬間!
ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!
「ギャァァァ!ウォ!イテェ!ヤ、ヤメ!ギャァァァ!」
ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
魔物カイを切り刻む!!
「ヤ、ヤメ!タ、タスケ……!」
「もういい、だまれ!」
ザシュ!!!!!
おびただしい鮮血が辺りに飛び散り魔物カイは粉々になり、そして蒸発するように消えていく……同時に、ドクンッ!と副作用の疲労が足にきて倒れ込む。
「はぁはぁはぁ……これでようやくメリダに胸を張れ……る……」
カイの最後を見届け、僕はそのまま倒れ込んだ……。
―――異次元空間・アリスのお部屋―――
「HI.everyone!」
「誰、得だよ」
「お疲れ、お疲れ。まぁまぁ一杯」
「アリス……おっさん化してきたな……」
「あらあら。ハルトさん、お疲れ様でした。どうぞ」
きりんが紅茶を淹れてくれる。魔物カイを倒した所までは覚えているが、その後また気を失ったのか。
「そうじゃの。神属性魔法を使った反動じゃな」
「あ。そうだ!アリス、色々聞きたいことがある!魔物――」
「魔物カイは消滅したぞ。レディと避難したエルフ、エルも無事じゃ。ミレーとベリアルが出来とったのは茶化して笑っておいてやったぞ!しっしっしっ!」
「あぁ……う、うん。だいたいわかった。て、あれ?僕が意識がない間は外に出れないんじゃ?」
きりんが窓を指差す。
「それがですね。窓がですね。開くようになりまして……出入りが自由に……おほほ……」
「もう僕は人間卒業ですね……カイの事を合体ロボとか言ったのに、自分も似たような者です……」
「わしも知らんかった。あれって開くんじゃな!しっしっし!ちなみにゼシカとレディが夜這いに来て、かち合って喧嘩しておったぞ!」
ゲラゲラ笑いながら僕に指を差すアリス。
「おのれは……!はぁぁ……」
僕は紅茶を一口飲んで落ち着く。
「そう言えば前から聞きたかったんだが、神の子6人を育てて魔法陣を張るっていうやつ。あれは神様に伝わる言い伝えなのか?」
「うむ、この教典の教えじゃな」
アリスが大事そうに本を取り出した。かなりの古さを感じる。
「経典の……18ページ目じゃったかの。わしが幼い頃に母上様が良く読んでくれたのじゃ。懐かしいのぉ」
「へぇ、神様の教典か……どれどれ」
経典が破れない様にそっと18ページ目を開く……。
『ゆうしゃは、わるいまものをたおすために6にんのかみのこをさがしました。だけどみつかりません。そうだ。ぼくがかみのこをつくればいいんだ!ゆうしゃはたびにでて、おんなのこをさがしました』
「……え?これって絵本?ちょっと待て。そんなはずは……」
僕は目をこすり、もう1度18ページ目を開く。
『ゆうしゃはわるいまものをたおすために6にんのかみのこをさがしました。だけど……』
そこには勇者の挿絵が描かれている。そして後から色鉛筆でヒゲとか、眼鏡とか、色々描き足されていた……。
「絵本じゃねぇかっ!?」
「どうじゃ、そこに書いてあるだろう」
「アリス……たぶんこれは作り話……」
頭がまっ白になる。
「え?作り話……?」
僕とアリスときりんが顔を見合わせ、首を横に傾ける。
落ち着け僕。そもそもこれが教典だとしてもだ。
『ゆうしゃはわるいまものをたおすために6にんのかみのこをさがしました』て言うことは、神の子を6人探すのが先なのでは……。
「アリスっ!」
「はひっ!?」
僕の呼びかけにビクッとするアリス。
「もしかしてだけど……アリス、プリン、レディ、ベリアル、ミレーて神の血筋の子だから既に5人いるんじゃないのか?」
「……え。どういう事なのじゃ?」
「あぁ!なるほどですわね」
きりんには意味がわかったみたいだ。
「だか……ら――」
言いかけて、急に意識が飛んだ。
―――エルフの里宿舎―――
「ここは……?」
体が重い。いつもの神族魔法の反動か?
「!?」
ゼシカとレディとエルが絡まって、僕に乗っている。何があったかは知らないが、色々と丸出しだっ!ありがとう神様!
チュンチュン、チュンチュン……!
外から小鳥の声がする。今日はすごく良い1日になりそうだ!




