第40話・伝説の剣
―――マザードラゴン住処―――
『ごっくん』
「ギャァァァァァ!」
「ホゲェェェェェ!」
「キャァァァァァ!」
「ノォォォォォォ!」
思い思いに叫ぶ者達。僕はマザードラゴンに食べられました。今まで関わってくれた人たちありがとう。僕は幸せでした……。と声が聞こえてくる。
「……御人よ、我の声が聞こえるか。聞こえたなら、腹の中の毒の元を断ってくれぬか。頼む」
「念話かっ!」
マザードラゴンの胃袋の中で僕は生きていた。
胃の中には溶けずに色々と刺さってる。プスッ!近くの剣を抜いてみるとグラグラっと胃袋が揺れる。痛いらしい。数本刺さってる剣を抜いていくと、その中に1本だけ光輝く剣が刺さってる!
「マザードラゴン!原因がわかったよ!光る剣が刺さってる!」
「そういえば何年か前に勇者を食べた時に伝説の剣がどうこう言ってたような……」
「勇者を食ったんかいっ!ま、まぁ、今はこれを抜くのが先だ。行くよ!歯を食いしばって!!5・4・3……!!せいっ!!」
「はぐぅぅぅぅ!!!」
3で抜いてみた。グラグラ!と胃袋が激しく揺れる。傷口から血も吹き出し、大量の血が僕を押し流す。
「完全回復!!」
傷口が塞がっていくのが見えた!が、僕はそのまま流されていく……この展開はまさか!!
――数分後。
ぽんっ!と僕は産まれた。マザードラゴンのお尻から……。
「ギャァァァァァ!」
「クセェェェェェ!」
「キャァァァァァ!」
「ノォォォォォォ!」
「おい。今誰かクセェて言っただろ!」
僕は側にあった水溜まりに入り、汚れを洗い流す。
「あれ?これも温泉か?温かい……ふぅ」
マザードラゴンは僕を産み落としです目をぱちくりしている。
「妾は今まで何をしていたのだ。悪い夢を見ていた様な……」
「僕は夢じゃなくて現実でしたけどねっ!」
「マザードラゴン様!あぁぁ、良かった。元の優しい目をしておられる!」
「おぉ、ガイアではないか。久しぶりじゃのぉ」
「腹の中にこんなに剣が刺さってたぞ?」
僕はアイテムボックスから剣を取り出す。全部で8本……そしてアイテムボックスが臭い。洗えるのかな、これ。
「もしかしてこの光る剣が腐敗の原因か?」
「うむ。この毒はおそらく、その剣より出たものじゃ。だが意識操作は呪いっぽいのぉ……」
アリスが鼻を抑えながら、剣を確認する。マザードラゴンは呪いをかけられ、自我を失い、勇者を食べたのか。
「マザーよ!この剣はまさか!?」
「はい、アリス様。以前に勇者を名乗る異世界人が来まして、その最初はドラゴンを倒すとか言ってたんですが、何と言うか……剣の自慢ばかりするので、そのぉ、ウザいので食べました。てへっ」
「マザードラゴンのキャラが随分変わったなぁ……。いや、そこじゃない!異世界人って!?」
「それはわしがユリゲルに頼んで作ってもらった神聖剣。その名も!聖剣エクスキャリパー!」
「ん?聖剣エクスカリバーじゃなくて?」
「……え?エクスカリバー?ワタシ、ニッポンゴ、ムツカシイアルネ」
「嘘つけっ!」
アリスの事だ。たぶんエクスカリバーをはっきり覚えておらず、適当にエクスキャリパーと付けたんだな。
マザードラゴンが最後の力を振り絞り、体を起こす。
「皆には感謝しかない。はっきりとは覚えておらぬが、妾は呪いをかけられこの地に来た。しかしもう魔力は尽きたようじゃ……命尽きるまで時間の問題じゃ。最後に出来る事があれば何でも言うてくれ」
「マザーよ、とりあえずそこをどいてくれ。お主の体で源泉が潰れ水が詰って困っておる」
アリスが言うとマザードラゴンが竜族の姿に戻り、巨体で塞いでいた場所から水が吹き上がる。これが水の濁りの原因だったのだ。
マザードラゴンが竜族になると何も着用していない女性が目の前に現れる。
「あなたは見たら駄目っ!」
僕はゼシカに両手で目を隠される。何だかちょっと幸せな気分だ。
「ちょっと服を着るから待っておれ」
マザーが洞窟内に姿を消すと、ゼシカがその場に座り込んだ。
「あれ?ゼシカ?何で手を洗ってるの?」
「う、ううん!何でもない!そ、それより伝説の剣エクスキャリパーを私も見たいなぁ!」
「あぁ……そこでちょっと洗おうか」
「う、うん!」
――数分後。
着物を着てくる人の姿のマザー。もっと高齢の方のイメージでいたが、50代位の美人の女性が現れた。
「お待たせしました」
「うむ、マザーよ。考えたのじゃが、お主もこいつの体に入れ。魔力が回復すればまだしばらく生きれるじゃろうて」
「アリス様そんなことが可能なんですか?可能であるなら是非お願いしたいです」
「良いな?ハルトよ」
「僕は構わないけど……。それより、後で異世界人の話を聞かせてくれ」
「ありがとうございます!では失礼して――」
こうして僕はマザードラゴンを取り込み、ガイヤさんの背に乗り、サウス山を後にした。
―――中央都市コリータ―――
「ただいま。はぁ、疲れたぁ。マリンお風呂入れる?」
「お疲れ様でした!すぐにご用意致しますね。ハルト殿、ちょっとなんか……匂いますね……」
「やっぱり。そうだよね……くんくん」
「やぁやぁやぁ!ハルトさんお疲れ様!」
「おっアクア!来たのか!これからよろしくな!」
「今朝着いたんだけど、お姉ちゃんがもうそれはそれは仕事丸投げしてきて……って何か臭い」
「あ、うん……。早速なんだけど、ウェスタン王国の武器道具屋さんあるじゃない?あそこにね、支払いが1000万金貨あるからお願いね!あぁ、疲れた」
「もうハルトさんまで仕事振ってきて……え?それはどういう……え?1000万金貨ぁぁぁぁぁ!?」
廊下でアクアの叫び声と魔法障壁がキラキラ光ってる。興奮したんだね。
その声を聞きつけてか、クルミが廊下を走ってくる。
「ご主人様!おかえりにゃ!」
「クルミ!ちょうど良かった。ガイヤさんを竜族の団地まで案内してあげてくれるか」
「かしこまりです。ご主人様!」
ガイアさんは一礼してクルミと竜族のいる東町へ向かった。これでリンも一安心だろう。
「ゼシカ!わしらも風呂にいこう!おふろおふろ~」
「はいっ!アリス様!お供致します!」
僕の体からアリスの本体と人型きりんが出てくる。そこへ留守番をしていたプリンも騒ぎを聞きつけやって来た。
「ねぇぇぇぇぇさまぁぁぁ!みぃぃつけたぁぁぁ!」
「ギャァァァ!」
プリンがなぜか般若のお面をかぶって走って来る。恐怖で逃げ出すアリス。どこで買ってきたんだ……そのお面。
◆◇◆◇◆
かぽんっ!
「はぁぁぁぁぁ。生き返る……お風呂最高!」
「そうですわねぇ。妾も殿方と一緒にお風呂なんていつ以来かしらぁ。ふふ、今日は何だか興奮しちゃいますわ」
「そうなの?僕は先日、ゼシカと入ったからそうでもないんだけど。ははは」
「あら、やだっ!おもてになるんですねぇ。妬けちゃうわ!おほほほ!」
「はぁ……って!マザー!?どうして男湯に!?」
「あらやだ。人型の時はお菊と名乗っております。今後共、よろしゅうお願い申します」
湯船から上がり、裸で三つ指ついて頭を下げるお菊さん。その姿に僕も慌てて風呂から出て、合わせて頭を下げる。
「おぉぉぉい、ハルト!そっちにマザードラゴン行ってないかぁぁ!こっちにいないんだがぁ!」
「アリス様!こっちの湯加減はとってもよろしいですわよ。極楽極楽!」
「何でマザーが男湯に入ってるのよ!!」
「ちょっ!ゼシカよ!どこに行くぅぅぅぅ……」
ドタバタドタバタ!
足音が聞こえたかと思うと、お風呂場の戸が勢いよく開けられゼシカが仁王立ちした。
「ハルトっ!あなたって人は次から次へと!私の体では物足りないのっ!!」
「ハルトはゼシカと交尾したのかっ!!」
ゼシカを追って走ってくるアリス達。そして男湯の入口で石鹸を踏み、つるんっとアリスが滑った。
「あっ……」
ザッパーーーーン!!全員巻き込まれてお風呂へと突っ込む。
「アリスっ!!」
「バカハルトっ!!」
「やったのか!やってないのか!どっちじゃ!」
「おほほ!賑やかです事!」
「あらあらまぁまぁ」
こうして賑やかな日常が戻ってきたのでした。めでたしめでたし。
―第3章完―




