第33話・妖刀村正
―――ウェスタン王国武器道具屋―――
僕達はレディの買い物に付き合わされ、武器屋へと向かっていた。以前、魔法剣を見つけたお店だ。
「いらっしゃい!」
「すいません、この方に武器を見繕ってもらえませんか?」
「はいはい、ちょっと待ってね!」
アリスとレディは2人で武器を物色している。と、僕は冒険者4人組に目が止まった。1人は真っ赤なマントをつけた長身の男性で細剣を見ている。店員と商談中らしい。
「いやいや、セイリュウ!それはちょっと高いよ!」
「ビャッコ、これは私にはちょっと重たいわ」
「ゲンブはもう決まったかい?」
「スザクはそれにするの?」
四聖かいっ!とツッコミたくなった。
四聖とは青龍、白虎、玄武、朱雀の総称でニッポンに古くから伝わる聖獣である。4人いるから四聖の名前にしようとでも思ったのか……安直な。
「むむむっ!これは!」
レディがガラスケースに飾られる美しい刀を見て声をあげる。以前に1度来た時も飾ってあり、客引き用の非売品だと思っていた。
「これはうちの目玉商品。飾ってはいるけどオーナーは売る気はないよ。ほら値札見てごらん」
「いちじゅうひゃくせんまん……1000万金貨!」
「ねぇ、あなた、これが欲しい……」
違うよ、あなたではないよ。買わないよ。
「旦那さん、奥さんにねだられて大変ですねぇ。へへへ」
よいしょ、とかいらないよ。
「他の武器を彼女に見繕って……」
「買います」
「アリスッ!?今のは冗談です!冗談です!」
「へ?いや、お客さん。それは売り物というか、客寄せの……」
「分割で」
「ちょ、ちょっと、オーナーに確認しますが、本当に買われるので?」
「買います」
おぉ、神よ。このいたいけなアリスに裁きを。
「ちょっとアリス!いくらなんでも高いって!」
「いや、これが良い。これを買わないと、ゼシカの下着姿をウェスタン王国中に流すぞ」
「どんな脅しだよっ!……はぁ、参ったな。マリンに宝物庫開けてもらわないと。トホホ……」
「お客さん、オーナーは売っても大丈夫だそうです。ただ身分証明をいただくようにと。何でも持つ人持つ人、生命を吸われる呪いの刀だとか……お客さん、本当に買うんですかい?」
「くどい」
「……はぁ。わかりました。ではこちらでサインを」
武器屋の亭主に妖刀をガラスケースから出してもらう。レディがその刀を持つとカタカタと刀が震え出した。
「これは相当の代物ですわね……」
『妖刀村正』値札の横にそう書いてあった。武器屋のオーナーのはからいで、レディに合う着物もサービスしてくれた。ご機嫌なレディ。マリンに何て言おう……。
僕達は買い物を済ませ王宮へと向かう。ちょうど日も暮れてきた。先程、冒険者ギルドの物見が来て明日にはイスタン帝国の騎士団がこちらへ到着するようだった。やはりアリスの予想は正解か。
僕達は魔王軍の死神を探しますか。あと大臣のちょびひげ眼鏡。死神はイスタン帝国に潜んでる可能性が高いが、戦争となると万が一にもウェスタン王国に侵入してくる可能性もある。そんな不安は的中するものだ。
――王宮に着くと客間に案内され夜まで休むことにした。ラルクさんから早馬が来たらしい。城の中は厳重な警戒だった。横になっているとウトウトし、いつの間にか眠っていた。
「おい!起きろっ!」
頭でアリスの声が響く。起きようとするが体が動かない。息も苦しい……まずい!寝入ってる間に襲われたか!目を開けてみるがよく見えない。
「すぅーはぁーすぅーはぁー」
息が苦しい。
「う……ん……あぁ……♡」
レディの声がする?あれ?レディが僕を抱き枕にしていた。僕はレディの胸で窒息しかけていた。
「外に魔物の気配じゃ!たぶんヤツもおる!」
「死神か!レディ!起きて!死神が来てる!!」
「まことかっ!」
バサっと起き上がるレディ。そして僕の目の前で着物がはだけるレディ。
「あれ……?旦那様?旦那様?もしもーし」
よし!目が覚めたっ!……へへ。なんか、がんばれそうだ!!
僕とレディは急いで城内の庭園に向かう。冒険者たちも既に集まっていて戦闘が始まっている。しかしなぜ、城内にいきなり魔物が?
「おそらく死神が召喚したのじゃろう。城内で魔物を暴れさせ城外からはイスタン帝国に攻めさせる。ウェスタン国王がたまたま留守で良かったの」
アリスは最近、急に眠気に襲われるらしく宝石内の部屋で待機中だ。不安に見守るきりん。
「ご主人様、用があればいつでもお呼びください」
「きりん、わかった。ありがとう」
「さて、妖刀の出番じゃな……」
喋り方がなぜか侍になってるレディ。そんな影響もあるのか?ただ侍に憧れがあったのか?
庭園に降りるとそこは既に城兵、冒険者が全滅している。相手の魔物はアンデットだった。その数100体超。
「ゆくぞっ!」
レディがアンデットの大群に突っ込んで行く!そして妖刀村雨は抜群の効果を発揮した。主人の生命力を魔力に変換、その魔力はアンデットを一刀両断する。レディが刀を振り下ろす度にアンデットが倒れていく。アリスはこれを見越してこの刀を買ったのか!買ったの僕だけど……。
「光の剣!」
僕もレディが打ち損じたアンデットを倒していく。
「ご主人様、アリス様は今、お休みになられてます」
「わかった。きりん、アリスを頼む」
レディの村正がアンデットをほぼ殲滅する。さすがというか、元魔王軍幹部というのも頷ける。
「そこまでだ。お前レディではないのか?」
女を人質に取りこちらを見ている。一人の長身の……赤いマントの冒険者。
「スザク!く、くるしい!離して!」
武器屋でセイリュウと呼ばれていた女性が人質となっている。足元ではビャッコ、ゲンブと呼ばれていた男が血を流して倒れている。
「クックック。愚かな人間よ。皆シネ」
長身のマント男の顔が……口が耳まで開き、キバが伸び目が笑っている。
「お前が死神かっ!!」
「クックック。我が名はザクス。名を変えて冒険者共に近付いた。お陰でまんまと城内に入れたわ。あとは城門を開けてイスタン帝国を迎えるだけだ」
「スザク……何を言って……!!」
「ウルサイ人間だ……」
女性が背後から死神に刺され、その場に力なく倒れる。
「お前っ!!」
「旦那様!下がって下さいっ!ここは私が――!」
「レディ!気をつけ……!旦那様?え?いつから……」
レディと死神ザクスとの戦いがついに始まった!




