第22話・最悪の結末
―――中央都市南の草原―――
ポツポツポツ……サァァァ……!
雨が降りだし、遠くで雷も鳴っている。
「コゾウ!ワシノ、シモベヲ。ユルサンゾ……!」
「うるせぇ!トカゲ!降りてきやがれ!」
「プリン!ご苦労じゃった!ハルトの中へ入っておれ!」
「ねぇさま!お願いします!」
プリンは僕の胸の宝石に吸い込まれるように消えた。いまだにどういう原理かはわからない。
邪神トカゲネビュラと、残りドラゴンが10数匹。他のドラゴンは地面でうずくまってる。羽根が傷つき動けないだけで、死ぬほどのダメージはなかったはずだ。生き残ったドラゴンが馬車を追いかけ出す。
「ニガスナ……」
「きりん!頼む!」
アリスと一緒にきりんの背に乗り、追いかけながら念話を試みる。
『誰か聞こえるかっ!』
ザ……ザァァァァァ……!
「え?ハルト?」
「リンか!後方より10数匹ドラゴン接近!避難民を逃がし、皆はそこで応戦してくれ!!」
「わ、わかった!ゼシカに伝える!」
ドラゴンを追いながら、魔法剣で羽根を狙って切っていく。しかしドラゴンの様子がおかしい。動きが鈍いというか、無抵抗というか……。
「こやつらトカゲに操られておるな……」
「そういうことか。やはり殺す程ではないな」
ゼシカ達の馬車が見えてきた。ドラゴンも残り3匹。きりんが上手く誘導してくれ、ドラゴンの羽根だけを切っていく。
残り1匹。ドラゴンが馬車の前で応戦するゼシカたちに襲いかかる!
「そうは行くか!!魔法障壁!」
ゼシカ達の前に魔法の障壁ができる。ドラゴンの爪は障壁に阻まれ、攻撃は届かない。
その間に最後の1匹の羽根を切る。ドラゴンはドスン!と音を立てて倒れた。これであとはトカゲ野郎のみ。
「ゼシカ!馬車に引き上げて退避を!僕はトカゲ――」
「避けろっ!ハルトっ!!」
背後から無数の魔法弾が飛んでくる!
「くっ!これは避けきれな……!!」
避けきれず、何発か直撃を喰らう。
「ぐぅっっ!痛っ!」
致命傷という程ではないが、魔法障壁をも破壊する威力だ。
ゼシカ達も倒れている!僕は急ぎゼシカ達の元へ向かう。
「ゼシカ!大丈夫かっ!」
「私は……な、何とか生きてはいるが……」
「マリアッ!マリアッ!!」
マリアがギルをかばって倒れている。エルが回復魔法を唱えるのが見えた。
『ハルト!リンッ!よく聞け!』
アリスが念話で作戦を伝えてくる……リンも黙ってうなずく。
「ゼシカ!馬車の中でマリアの手当をっ!馬車にシールドを張る!」
馬車に魔法障壁を二重に張った。トカゲネビュラはさらに魔法弾を放つ!
僕は剣で弾きつつ魔法弾をかわすが、見境なく攻撃は続く。らちが明かず前進しながら足に斬りかかる!
「せいやっ!!」
トカゲネビュラの足を切る!が、切った感触がない。
「魔法剣が効かないだとっ!?」
頭上からトカゲネビュラのするどい爪が襲ってくる。同時に、ドンっ!と、にぶい音を立ててアリスが吹き飛ばされた。
「アリスッ!!」
アリスは動かない。
「クククッ。ニンゲンヲカバッテ、シヌカ。オロカナ……」
トカゲネビュラが倒れて動かないアリスの方へと近づく。
「リン!今だっ!」
「混沌の地より生まれし彗星、我の声に答え、導け。我はこの世界を欲する也……我が名はリン・ドラコ!この名を世界に示せっ!すべてを破壊せよっ!!」
リンが詠唱する!
『奥義・大地隕石魔法ッッッ!!』
雲を裂き、空からトカゲネビュラの頭上めがけて隕石が降ってくる。このタイミングで僕も魔法を発動!
「束縛呪縛っ!!」
イバラのツタがトカゲネビュラの足を絡める。これで逃げ場はない!
ゴゴゴゴ……ズドォォォォォォン!!
「グガァアァアアアア!!」
隕石がトカゲネビュラの頭に直撃した。アリスの作戦通りだ。
「はぁはぁ……アリス、リン!大丈夫か!」
「う、うむ。さすがに効いたわ。ちょっと部屋に戻るぞ」
そう言うとアリスの分体がスッと消える。
「……ぼ、ぼくは大丈夫、それよりマリアさんが……」
「そうだ!マリアの回復を!!」
「死んじゃった……」
「え……?今、何て……」
僕は自分の耳を疑う。
「マリアさん……息してない……て、ゼシカが……」
雨が強さを増す……。
最悪だ。何をしている!動け!足が動かない?足がすくんでる?クソ!まだ間に合う!動けっ!!
「残念だが無理かもしれん。リザレクションじゃろ?神に殺された者は生き返れない。それが本来の姿……複製も効かぬ。そなたの体だから今まで複製できたのじゃ」
アリスが念話で話しかけてくる。
「そんなこと言われてもやるだけやってみないとわからないだろっ!」
「好きにせい。ちっ、クソトカゲめ。まだ生きておるのか」
「オ、オ、オマエラ……ユルサン……!」
「あ゛ぁ゛?ジャマをするなっ!!」
トカゲネビュラの毒を帯びた爪が僕の体をかすめる。
「モウドクノツメ。ダ……シネ……」
「もういい。黙れ……トカゲ……」
僕は構わず、魔法剣をトカゲネビュラに向ける。
「ふぅぅぅぅぅ……神々之黄昏!!」
黒いまがまがしい闘気を帯びた魔法剣がにぶい光を放つ。しかし以前使ったラグナロクとは見た目が明らかに違った。これがアリスと同化し神族になった力なのだろう。それはゆうに雲を突き抜けた。
「シネッ!クソトカゲ!!」
トカゲネビュラの体は雨と共に、真っ二つに切れた。
「グガァァァァァ……!?」
バタンッ!!!
雨が降り続く中、僕達は邪神トカゲネビュラを倒したのだった……。
ザァァァァァ……!
「マリアッ!」
馬車に乗り込むと皆が泣いている。嘘だろ?ゼシカが振り向き、涙声で言う。
「ハルト……マリアが……!!」
「汝、我の声に答えよ、光の精霊よ、今、その力を示せ!生命帰還!!」
ザァァァァ……。雨の降りしきる音が大きく聞こえる。……何も起きないのだ。見かねたアリスが皆に念話で話かける。
「リザレクションはな。本来、神のみに使うことが許された魔法。それは生死を操る。しかし神に殺された者は蘇らん。それが本来の姿。残念じゃがマリアは生き返りはしないのじゃ。ハルトを憎まないでやってくれ。こやつなりにようしたと思う……」
皆、アリスの言葉を聞き、もう無理だとわかったのだろう。中央都市に着くまで泣き続けた。そして僕は道中、トカゲの毒がまわりそのまま気を失った……。
ギルの泣き叫ぶ声を聞きながら……。
「マリアァァァァァァァ!!!」
ザァァァァ……!雨はまだ止む気配はなかった……。




