第102話・世界の崩壊
―――コリータ王国―――
――大陸間会議から半年。
「北のネプチューン様より連絡が来てます!全員に繋ぎます!」
「――こえるか?ノースタンのネプチューンじゃ。現在、北の海に隕石と思われる飛来物を確認した。人魚族が確認に向かっておる。海洋生物は順次、ウェスタンの入江へ避難を開始するのじゃ。以上」
アリスがいつにもなく真剣な表情を浮かべる。
「……ついに始まったか」
「ねぇさま……」
「マリン、アクア。各国に繋いでくれ。それと世界中に飛ばした魔法球の起動を頼む」
「はいっ!」
急に慌ただしくなってきた。
もうすぐ世界は崩壊する……。その目安となるのが地震、魔界門、そして宇宙からの飛来物、全てアリスの言った通りになった。
僕はマサミカ大陸中に聞こえる様にマイクを取る。
「マサミカ大陸の皆さん、聞いてください。コリータ国王ハルトです。現在、北の海上で飛来物を確認。落ち着いて避難の準備を始めて下さい。詳細は各国通達の上お知らせします。繰り返します――」
そして回線を切り替える。
「千春、千夏、千秋、千冬、ステラ、愛花、よく聞け。これからブースに向かい魔力を貯めるんだ。近日中に大結界を発動する。各護衛の任務の者は、ブースの警護を頼む。皆、頼んだぞ」
『はいっ!!』
元気そうな子供達の声が返ってくる。
「わしも最上階で待つとするか」
「ねぇさま、気をつけてくださいませ!」
「うむ。ハルトよ、セリを連れて後で来い」
「あぁ、わかった」
ザザ……!
「――こちらエスポワールのエリサです。南のキウイ山で飛来物を魔法球にて確認。ウィンダ町の住民はすべてエスポワールで受け入れ完了しております」
「わかった。引き続き報告を頼む」
さて行くか。
「マリン、伝達はここから任せた。セリを屋上へ呼んでくれ」
「はい。国王様、どうかお気をつけて……」
よしよしとマリンの頭をなでる。プリンとクルミが泣きそうな顔でこっちを見ている。
「ハルト……実は……」
「どうした?プリン」
「い、いや……ねぇさまを頼みましたわ……」
「おう、任せとけ。2人共、皆を守ってやってくれ」
僕はそう言うと執務室を出て屋上へ向かう。
ピュゥゥゥゥゥゥゥ……!
風が強い。曇がかかった空が今にも落ちてきそうだ。
「アリス様、お待たせしました。どうかされましたか?」
彼女の名はセリ。半年前、西の洞窟に倒れていた女性だ。今ではすっかり元気になりここで暮らしている。
「単刀直入に言う。セリ、お主神族じゃな?」
「なっ!セリが神族……!?」
アリスのいきなりの発言に驚いてしまった。
「おわかりでしたか、アリス様。いいえ、天照大御神様。私は……スセリヒメと申します」
「やはりな。プリンに調べさせていたのじゃ、許せ」
「いえ、問題ありません」
「で、なぜあの洞窟にいたのじゃ?」
「正直に申しますと覚えておりません」
「質問を変えよう。おぬしの固有スキルはなんじゃ?」
「……寿命を読み取ることです」
ピュゥゥゥゥゥゥゥ……!
「固有スキルを相手に言うのは、自分の手の内をさらすという事……まぁ信用してやるかの」
セリは別大陸の神だった。そこで何不自由なく生活していた。しかし気が付いたらこの大陸に来ていたそうだ。
「話は色々聞きました。私の父は素戔嗚尊……しかし皆さんには何の恨みも御座いません。当然の報いだと思います」
「なんと!お主、スサオの子か!なんじゃ、それならわしの甥っ子ではないか」
ニコッと笑うアリス。
「しっしっし!そうか。この世界の崩壊前に粋なことをしてくれる……のぉ、セリよ。こやつの寿命は見れるのか?」
「いいえ、神族の方の寿命は見えません。ですがそれ以外の種族なら」
「うむ。ここにいる人間達がこの先、生きているかだけ知りたい」
「……大丈夫です。安心して下さい」
「そうか……その未来を聞いて安心したわ。すまなかったな、こんなとこに呼び出して」
「いいえ。おば様、私は別に……」
「おば様ではない!おねぇ様だ!」
「えっ!?は、はい!おねぇ様!」
「うむ、それで良い。無事に事が済んだらまたゆっくり話をしようぞ」
「わかりました、おねぇ様。どうぞご無事で」
そう言うと一礼して、城内に戻っていくセリ。話を聞いていたが、いつもの様に頭の整理が追いつかず、ポカーンと口を開けている僕だった。
「さて、この様子だと2~3日中には来そうじゃな」
「ふぅ……いよいよ……か」
◆◇◆◇◆
屋上に設けた祭壇に、神器・天之叢雲、八尺瓊勾玉、八咫鏡を奉納する。
天之叢雲はドムドさんが修復してくれた本物だ。八尺瓊勾玉はアリスが持っていた魔除けの紋章がそれだった。八咫鏡は月子から預かっていた鏡だった。
そういえば以前、白兎が手鏡を持って来ていた事を思い出す。
準備が整い、いよいよ大結界を張る。
「子供達、準備が出来たら始めてくれ。数日間は魔力を切らさないように頼む。終了の合図はマリンに頼んである」
『はいっ!』
コリータ、ウェスタン、イースタン、ノースタン、サウスタン、エスポワールから光の柱がゆっくりと天に伸びる。
空には雲が広がり、数日前から晴れ間を見ていない気がする。
『大結界・天ノ岩戸!!』
アリスの体が光り出し、手を握った僕から魔力が流れていく!
キィィィィィィィィン!!
甲高い音が大陸中に響き、全都市をドーム状に結界が覆っていく。この状態を6人の子供達の魔力で維持をするのだ。
アリスと僕は、大結界・天ノ岩戸を張ると役目を終えた。
「うむ。ここまではうまくいったようじゃな」
「後は災害が過ぎるのを祈るだけか」
数時間後、上空で隕石が結界に当たり激しく燃え、衝撃でコリータ周辺の地盤が揺れる!
ドゴォォォォォォォォン……!
ガタガタガタガタ……!
「ついに来たか……あの1個でも災害級じゃな。さぁ、今回の崩壊は耐えれるかのぉ……」
「大丈夫だよ、きっと。過去の崩壊は知らないが、今は皆がいる」
「ふっ、ハルトよ。言うようになったの。さすがわしの見込んだ人間じゃ」
ガタガタ……!!
その後も幾度となく隕石は結界に衝突し、衝撃が伝わってくる。
「エリサ聞こえるか?」
「――い。聞こえます」
「ノエルがいつでも交代出来る様に準備しておいてくれ。どの都市でも行ける様に転移魔陣は起動している」
「わかりました。準備させておきます」
6人の神の子によって維持される結界。数日間は維持しないといけない。しかし、千冬の出現で7人目の神の子が現れた。これにより交代しながら維持する作戦が取れたのだ。
はるか昔、アリスは単独で結界を張った事があるそうだ。しかし数日間続く天変地異には耐えれず、結果崩壊をもたらせてしまったらしい。
「お空が怒ってるにゃ……ぶるぶる」
「おい……嘘だろ?何だあれはっ!!」
北の空にひときわ大きな火球が見えた。通常の隕石の10倍はあろうか……!
「言ったであろう。あれが別名アンコロモチじゃ!」
「ぶつかるぞっ!!」
キュィィィン――!
………
……
…
ドゴォォォォォォォォン!!
ガタガタガタガタガタガタッ!!!!
遅れて、コリータにまで凄まじい衝撃が伝わってくる!
「――かっ!!ステラ!大丈夫かっ!!旦那様!結界にヒビがっ!!」
「ノエル!!ステラと交代だっ!ノースタンへ急げ!」
「くっ!!これは持つのかっ!?」
「急ぎステラとノエルを交代!回復をしろっ!」
「わかりもうしたっ!!回復班を残して、地下へ退避!!」
ザァァ……!
巨大隕石アンコロモチは勢いが弱まると、ドーム状の結界をすべるように落下していく。あのクラスの隕石を受け続けるのか……?
「ごくっ……」
僕達はかなりやばい賭けに乗ったのかもしれないと思った。




