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帰り橋  作者: 河村諭鳥
1/4

おばあちゃん家

小さい頃、おばあちゃんの家に遊びに行った時、 家の近くに大きな木造作りの橋があった。

「帰り橋」という名前なんだけど、

おばあちゃんは、この橋を見る度に口癖の様に、


「帰り橋は絶対に渡っちゃいけないよ、赤鬼に食べられてしまうからね」


と言うのだった。


私は小学生の夏休みになると、1人でずっとおばあちゃん家に行って過ごしていた。

5年生の夏休み、友人を連れておばあちゃん家に遊びに行った時、2週間位経って、友人は急用が出来たので、次の日帰ると言い出した。


そして、朝起きたらいなくなってしまった。


家にも帰ってなくて、捜索願いが出され、 村中の人間が探し回ったが、見つからなかった。

同時期にその子の母親も亡くなった。

噂によると、誰かに刺されたらしい。


おばあちゃんは、


「きっと赤鬼に食べられてしまったんだよ」


と言った。 私はそれ以来怖くなり、あの橋には近づかくなかった。


小学校最後の夏休み、おばあちゃん家で過ごしていた時の事だった。


「今日はスイカがあるから、台所から取って来ておくれ」


と、おばあちゃんが笑顔で言った。


「はーい」


と答えて、私は台所へ行って冷蔵庫を開けたら、大な皿の上に三角形に切ったスイカが並べられていた。


おばあちゃんはスイカを食べながら、ふと、


「あの子はもう二度と戻って来ないよ」


と言った。


私はスイカを食べる手を止めた。


「おばあちゃん?」


おばあちゃんは、その後、急に泣き出した。


あの時、おばあちゃんが泣き出した訳を、

私はずっと後になってから知る事になった。 それから数年後に大学に進学し、実家を離れて都会で一人暮らしを始め、無事に卒業し、 小さな会社の事務員として勤めていた。

独りぼっちで。

その年の夏、おばあちゃんが急に亡くなったので、久しぶりに御盆休みも兼ねて実家に帰省する事になった。


「あんたに手紙が来てたわよ」


と、母が私に渡してきた。

受け取ると、あの橋を渡って帰って行った友人からだった。

切手も無く、封筒に私の名前が書かれていて、 裏を見ると、確かに友人の名前が書かかれていた。


「これ、いつ届いたの?」


母に聞くと、


「今朝、ポストに入っていたわよ」


と言った。


私は自分の部屋に籠もり、恐る恐る封筒を開けてみた。

一枚の便箋が入っていたが、中は白紙だった。


「呼んでる」


私は無意識につぶやいた。






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