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現代の吸血鬼  作者: いづる
2/2

吸血鬼と人間のハーフ レイラ

「でも、今日あったばかりだわ」女はためらいながらも、男の不思議な魅力に吸い込まれるように力が抜ける。


「そんなこと俺たちには関係ないさ。きっと、この出会いは運命なんだよ」男は女の身体に覆い被さり、白い美しい首筋を撫でると連さんの顔が私の首にキスをする。その間、私は息を殺して待つ。


「カット」ああ、もう少しその歯でもっと奥に差し込んでほしい。そして、私の身体に流れている血を力強く吸ってほしい。なーんて、とてもじゃないけどいえないから…そんなこと、過去の幻影でもあるし。


「ちょっと。連さんいつもいってるけど、また歯が伸びていない?この吸血鬼もの大好評でシリーズ化されるのはいいけど、毎回傷が治らなくて大変なのよ」なんて、彼に悪態をついてみる。この傷なんて、5分もすれば再生するのであるが…。


幼い頃、私は物心がついたころにはすでに箱入り娘だった。宮殿並みの家に森のような広さの庭すべてが、皆の羨望の的に値するものだった。けれど、私にとってはそれは当たり前の生活。忙しい両親の代わりに私は、メイドと家庭教師とテレビに育てられた。

こんな私の好きなテレビドラマが吸血鬼シリーズだった。この番組と、主演の男優 吸血 連に惹かれてずっーと見ていた。子供ながらでもテレビ越しのその超人類的な魅力は私にも伝わっていた。そう、私の中にも半分は受け継がれているのを知ったのはずっと後のことだけど。


ある日、主演女優の募集がテレビやメディアで大募集していることを知った私は父に頼んでみたが、まだ子供の頃の私では誰にも相手にされなかった。それから何年か経ちテレビでの共演女優が何人も変わっていった。彼も年齢と共に2代目、3代目と変わる(実際には、変わっていないだろうが)ロングランの高視聴率のドラマだ。私も年頃の娘となり、ほぼ父の力で次の主演女優を勝ち取った。


なぜ、こんなに共演相手が変わるのか⁈ それは、首につけられる傷が悪化するのだそうだ。それと吸血鬼の呪いだとか、根も葉もない噂が飛び交っていたが相手役が私に変わってからは、安定したファンも増えて来た。


なぜ、こんなにお金持ちかって⁈ それは私の両親が現代で生きぬくために文明の限りをつくして、作りあげたいくつもの商品。それが、大ヒットとなり一財産を築きあげたのだ。


いくつか取り上げてみると私たち一族は日の光に弱く、光を全身に浴びるともがき苦しみながらミイラになりそのあげくは塵になり消えてなくなるという宿命。


それは、特殊コンタクトの発明や1日1個のカブセルを飲むことによって身体が日の光を浴びてもほとんど周りの人間と変わらなくなっていった。


もともとは不老不死の身体。人間の何倍も寿命を持っている。ゆえに1財産も2財産も増やせたのだ。


そう、過去の痛ましい惨殺……十字架、ニンニク、聖水


我らの種族は、それによって激減していったがそれも、過去のこととして日々の生活を改善して取り入れることによってなんなくクリアしていくことができた。


そして肝心の、人の血を吸いその挙句征伐されるという負の連鎖も断ち切ることができた。お互いに害がなければ、そう過去のことを忘れて共存が出来ればなんてこともない。



〇〇〇ーーー□□□


レイラは、仕事が終わり去っていく連の後ろ姿を見つめる。吸血鬼の抹消と言われる男。我々生き延びた種族では、有名である。それゆえに、私みたいな雑種は近寄りがたい。

「ハアー」ため息をつき、それと反するように仕事終わりの達成感を味わいながら帰路につく。運転手の後ろに座りながら、いつもの冷蔵クーラーボックスから1本のタンブラーを取り出し飲み干す。


「ああ、おいしいわ。仕事終わりは特にね」

レイラの口元から真っ赤なドロッとした液体は喉を通り入っていく。


そのタンプラーの中身は、事故死や病死などにより亡くなったものから新鮮なうちに回収した血液だ。今の世の中、すべてがエコである。それによって、無意味な争いごとがなくなったことはいうまでもない。

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