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短編もの

群衆に轢かれた少年

作者: 忍原富臣

世界って生き辛いですよね……。

 灯りに群れた群衆は、他人の道を歩いていた。

 考え行動した結果、他人個人をそうさせている。


 行き場のない僕はどこへ行けばいいんだろう。



 人混みに紛れれば、自分は自分ではなくなり群衆になる。

 人混みに紛れずに独りで居れば、群衆から後ろ指の冷たい世界。


 元々、生きることが向いていなかったんだと思う。


 世界は僕を必要としていない。

 誰も僕を必要としていない。



 だから僕は死んだんだ。

 群衆に轢かれて心が死んだんだ。



 どうしようもない気持ちが溢れて止まらなかった。

 生きたいという気持ちが強いのに。

 群衆はそれを嘲笑う。

 世界はそれを嘲笑う。


 自分を殺すことは出来なかった。

 だから僕は。

 わざと群衆に轢かれて死んだんだ。


 心を守る為に。

 魂が穢れぬように。

 死んだふりをしてやった。


 世界は笑う。

「虫が一匹死んだ」

 って。



 ある時、群衆は囁いていた。

「道を決めるのは自分じゃない」


 ある時、群衆は残酷に囁いていた。

「私たちは世界に生かされている」


 ある時、群衆の一人が呟いていた。

「生きていたこの人生は自分の生か誰かによる生か」


 その人は、次の日には動かなくなっていた。



 生きていたんじゃない。

 生かされていた事に気が付いた。


 この世界で生きていく時点で。

 この群衆と生きていく時点で。


 自分の道じゃなかった。

 最初から自分の道ではなかった。

 選ばされた道だった。


 逆らうことは出来ない流れ。

 これが群衆。

 これが人生。




 僕はそれまで、生きていたいと誰よりも望んでいた。

 死ぬつもりはないと 馬鹿にした世界に復讐しようって。

 渇望し、絶望し、希望を抱いていた。



 だから僕は死んだ。


 世界に逆らうために。

 群衆に混ざらないように。



 反旗を翻すために死んだんだ。


 世界の思い通りにはさせないって。

 群衆の言いなりにはなりたくないって。



 歯車の一つになるなんて、そんな人生は認めない。


 だから僕は死んだんだ。

 偽物の身体を使って死んだんだ。



 世界の好きにはさせないと。

 傀儡のままでは終わらないと。



 世界は冷たい。

 消えれば最後。

 存在抹消の烙印を押される。



 身体に押された烙印を、僕は遠目で見つめ続けた。




 そして、僕は歩き出した。


 群衆に轢かれ、世界に轢かれたこの魂だけで。

 宛てもなく彷徨う僕の道。


 きっと何かが見つかると信じて。

 きっと世界は綺麗だと信じて。


 僕は空っぽの心に水を入れて。

 僕は空っぽの魂に火を灯して。




 そうして僕は旅立った。

お読みくださった方、ありがとうございます。

何かを失い、何かを手に入れる。


世界は残酷で儚くて、どうしようもないのに綺麗なんですよね。。。

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