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だからある日の放課後、思いきって彼に思いを伝えた。


だけど彼は思いっきり顔をしかめ、一言。


「―俺はお前のこと、そういうふうには思えない。いや、一人の人間としては尊敬できるヤツだし、俺の片腕としては信用もしている。だけど恋愛感情としては…好きじゃない」


困ったように、泣きそうな顔で言われた。


だから僕は苦笑し、


「分かりました」


と、彼の返答を受け入れた。


だからその後、自分の思いを口に出すことはなかった。


それから数ヶ月の時が過ぎ、春休み、生徒会の集会の後で、言い出したことだった。


「ウソでも良いんだけどな…」


もうすぐエイプリルフール。


ウソをついても良い日というのは、僕にとっては好都合だった。


彼にとっても都合がいいと思ったんだが…やっぱり難しいか。


なので4月1日は、1人で出かけることにした。


大学受験も始まるので、電車に乗って塾の下見に行った。


3つの塾を回ったところで、すでに昼過ぎになっていた。


コンビニで昼食を買って、公園で食べようとした時、ケータイが鳴った。


表示を見ると…彼からだった。


「はい、どうしました?」


『どうした?じゃないだろう! どこにいるんだ! お前!』


「えっ? どこって、外です。外出しています」


『地元にいないのか?』


「ええ、塾の下見に街中まで来ましたから」


彼の興奮した声に、少し驚いた。


あまり動じない性格だと思っていたから。


「それでどうしたんです? 生徒会の仕事のことですか?」


彼と僕の共通点は、そのことぐらいしかない。


あの告白後から、彼からは一定の距離を置かれているから。


『…ああ、まあな。今から帰って来れるか?』


「用事は全部済ませましたので戻れますが…。時間がかかりますよ? 急用なら、今伝えてもらえれば」


『いいからとっとと帰って来い!』


ブチっ!


「っ!?」


いきなり電話を切られた。


なっ何があったか分からないが、とりあえず急いで戻ろう!


…と思っても電車の都合があり、学校へ着いた時には1時間が経過していた。


怒っているだろうか?


あの電話の調子では…怒っているな、確実に!


何はともあれ、生徒会室へ向かった。


春休みでも部活動は行っており、しかし私服は目立った。


「会長? 遅くなってすみません。どうかしましたか?」


生徒会室の扉を恐る恐る開けると、予想に反して、落ち込み気味の彼が、制服姿で座っていた。


「…遅い」


「すみません。電車の時間が上手く合わなくて…。ところで何があったんです? 今日は生徒会の用事は無い日だと思っていたんですけど…」


もしかして、春休みだからと生徒達が問題でも起こしたのだろうか?


落ち着かない気持ちで、彼の側へ寄った。


すると彼はいきなり立ち上がった。


「うわっ!?」


驚いて後ろに下がるも、腕を引っ張られ、顔を近付けてきた。


そして彼の薄く開いた唇からこぼれた言葉は…。


「好きだ」


「…えっ?」


眼を見開いた。


今…あの言葉が聞こえた。


彼の口から、ハッキリと。


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