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望むうそ

「一つ、お願いを聞いてもらっていいですか?」


「何だ?」


「4月1日、エイプリルフールに言ってほしい言葉があるんです」


「…お前、いい加減にしろよ」


目の前にいる彼は、うんざりした表情でため息をつく。


「俺、お前のこと、好きじゃない」


「知っていますよ?」


あなたが僕のことを嫌っていることぐらい、分かっている。


それだけ近くにいるから。


「なら諦めろ」


「…別にまだ、何も言ってないじゃないですか」


「予想がつくんだよ。俺はお前のことが好きじゃない。ならわざわざウソをついて良い日に言ってほしい言葉なんて、一つしかないだろう」


相変わらず妙なところで勘が働く。


「いいじゃないですか。たった一言なんですから」


「イ・ヤ・だ」


「一瞬ですよ?」


「断る」


頑固だなぁ。


でもまあそんなところも…。


「おいっ! 今、変なこと考えなかったか?」


…思うことぐらい、許してほしい。


「いえ、別に」


「答えるのが一瞬遅れたな?」


「気のせいですよ。それより一応、考えておいてくださいね。エイプリルフールのこと」


「お前な…。…そもそもその言葉を俺がお前に言ったら、どうなるんだ?」


「ウソでも良いんです。あなたの口から言ってほしい言葉ですから。その一言さえあれば、もう何もいりません」


…と言うのは、半分ウソだった。


愛おしい人が近くにいるのに、何も望まないということはできない。


でもその一言はとても重くて、大事だ。


だからその言葉さえあれば、これから気持ちを抑えることができそうだと思った。


「…もう二度と、俺に好きだと言わないつもりか?」


「どうでしょうね? 実際言われてみないと、次の行動がどう出るか、自分でも分かりません」


「あのなぁ~。…あ~! もう良い! 俺は帰る!」


「はい、お疲れ様でした。また明日」


「じゃな!」


彼は足音高く、部屋から出て行った。


…ヤレヤレ。


僕のことが嫌いならば、わざわざ2人っきりになることもないのに。


時は夕暮れ。


場所は都内にある高校。偏差値が高いことで有名だ。


その高校の生徒会室が、今、僕と彼がいた場所だった。


彼は生徒会長、僕は副会長だった。


彼は僕の世界を変えた人。


僕は成績は良かったものの、人付き合いが苦手だった。


だから仲の良い友達が1人もいなかった。


でも別にイジメられていたワケではない。


一定の距離を保って、友人関係は築いていた。


しかしある日、そんな平和な日常を彼が壊した。


彼は生徒会長の座を狙っていた。


そこで成績優秀者である僕に声をかけてきた。


「一緒に頂点、登らないか?」


と。


そして半ば強引に、彼の選挙活動を手伝うようになった。


彼は見事に会長の座についた。


そして僕は副会長に。


その頃にはもう、自覚していた。


彼に惹かれていく自分に。


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