6話
今頃、母さんが心配しすぎて倒れていないだろうか?
オーガを倒してから30分くらい経ったが、一向に人がくる気配はない
まあ、こんな森深くに来る人などそうそういないだろう
しかし、戦闘が終わってから体がどんどん痛くなってきた
「くっそ、めちゃくちゃ痛い!」
涙目でカエデは叫ぶ
戦闘中はアドレナリンがドバドバ出ていて、痛み関係無しに動けたが、終わった後は別だ
全身の筋肉、神経が悲鳴を上げ、ズキズキと絶え間なく痛みが襲う
「ほんと、誰か助けてください」
徐々に死んだ目をして行くカエデだったが、「ガサ」っと草が揺れた
「!?だ、誰かいるのか?」
今、確かにそこの茂みが揺れた!
俺は人が来ることを祈り、ついでに神様にもお願いしてみる
しばらくすると、それが出てきた
「....あ、おわた」
そう、終わったのだ
出てきたのは人ではなく、包帯をぐるぐるに巻いた何か
頭部らしき物から除く蒼い輝きが、何とも不気味さを醸し出している
ソレがゆらゆら揺れながら、俺の方に近づいてくるのだ
こえぇぇぇぇ!!!
「(お母さんお父さん、こんな俺を育ててくれてありがとう。神様、ごめんね。せっかくのチャンスを無駄にして」
心の中でさよならを言い、抵抗の意思は無いと目をつぶり覚悟を決める
殺らならサクッとお願いします!
そして、ソレが遂に俺の所まで来てそっと触る
「っ!?いってぇぇぇぇ!!!」
今の俺は全身バッキバキ状態だ。少しの振動でも激痛が走り、死ぬほど痛い
くそぅ!覚悟していたがやっぱり痛え!
涙がほろりと流れ、再び激痛に襲われる覚悟をする
「あ、あのあの、痛くしてごめんなさい!」
「....は?」
だが、俺に襲ったのは激痛ではなく、鈴のような可愛らしい少女の声だった
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今の、俺の目の前でカオスがおきている
包帯を巻いた何か(声は少女)が、オロオロとして、足らしきに着いていたサブバックを漁っている
「あ、あの、これどーぞ!」
そして、俺に試験管ぽい何かに入った輝く緋色の液体を渡してくる
「きずによくきくポーションです!」
どうやら、俺を殺す訳ではないらしい
だが、包帯を巻いた不審者の持っていたものだ、素直に信用して飲んでいいものか?
心の中でどうするべきか葛藤していると
「?きづなおるよ?」
こてんと首を傾げ、なんで飲まないのか分からない様な様子
「いや、傷が治るなら有難いけど。包帯巻いた不審者から素直に受け取っていいものなのか葛藤してな?」
「包帯取ったら飲んでくれるの?分かった」
そう言い、包帯をしゅるしゅると解き始めた
そして徐々に顕になる姿に俺は息を呑む
まず、最初に目に映ったのは白銀の輝き
絹糸の様にサラサラで見るものを惹き付けるその髪は、神の創造物の様に美しい
そして、唯一包帯越しでも見えた蒼い輝きは、彼女のサファイアの様な瞳だった
澄んだ瞳は穢れを知らず、また、顔もかなり幼いながらも整い過ぎていた
肌もとても華奢で、雪の様に真っ白だ
そしてなにより
「......なぜ服をきていない?」
「おばあちゃんにその方が良いからって言われたから」
こいつのおばあちゃん、ロクでもないな!
「とりあえず、そのポーション?くれないか」
「あ、はい、どーぞ!」
無垢な笑顔で渡して来た試験管を俺は取ろうとしたが
「ごめん、今指一本動かせないから飲ませてくれないか?」
「わかった!」
少女は何故かポーションをグビっと口に含んでそのまま
「うぐっ!?」
俺にキスをしてきた
口の中に強制的にポーションを移し返され、俺はごくごくと飲んでしまった
飲んだ瞬間、全身の痛みが軽くなり始め、その効果にびっくりする
しばらく少女に口移しされていたが
「ぷはっ!全部飲めたね」
「ケホッケホ、助かった。ありがとう」
別に口移しではなくても試験官も口元に持ってきてくれさえしてくれれば自力で飲めた
まあ、美味しい目にあったから黙っておくが
俺は体をお越し、立ちはじまる
「あー、自由時間とっくに超えているな。急いで帰らないと」
本当にやばい、早く帰らなければ下手すれば、お母さんが心配過ぎて倒れてしまう!
「もう行っちゃうの?」
少女が俺の手を掴み、行かないでっと可愛らしくねだってきた
「両親が心配するからな。まあ、頻繁にこの森にはくるからまた会えると思うよ」
「わかった、また会おうね!」
俺の手を離し、バイバイっと手を降ってくれた
俺は一応オーガの角をポケットに入れ、少女と別れ家に帰宅したのであった






