5話
青い稲妻を纏い、俺は高速で移動する
「っふ!」
オーガは大振りの攻撃を避け、すれ違いざまに渾身の回し蹴りを顔面に放つ
オーガは一瞬よろけるが、たいしてダメージは受けてないようだ
今の蹴りで一瞬オーガの動きが止まった
「はぁ!」
その隙を見逃す俺ではない
続け様に顔面に月を放ち、オーガの鼻を潰す
「グガアァ!?」
盛大に鼻血を吹き出し、デタラメに暴れる
俺は一旦距離を取るために、バックステップをし離れる
やっぱり3歳の体では、いくら鍛えようが力は無いな
オーガの体はとても頑丈で、ちょっとの攻撃では致命傷にはならない
「ガアァァァァァァァ!!!」
オーガは鼻を潰されたことに怒り狂い、さっきとは桁違いのスピードで俺に迫る
「っ!?」
大きな腕の攻撃が、俺の脇腹を掠る
一撃受けただけで、俺は戦闘不能になるだろう
慌ててオーガから離れようとすると
「グガアァァァ!」
なんと両腕で地面を叩きつけた
「ぐっ!」
凄まじい力により、地面にクレーターが出来、その余波で俺は吹っ飛ばされる
カエデの体に石や木が当たり、赤い血が出る
今の攻撃のおかげで、何とかオーガから離れられたが、俺は冷や汗をかく
もし、今の攻撃が当たっていたら、俺は潰されて死んでいただろう
さすがに素手じゃキツいな
剣があればもう少しまともに戦えるが
汗が顎を伝い、緊迫した空気が流れる
砂煙からオーガがゆっくりと歩いていき、俺を殺そうと殺意の篭った目を向けてくる
このまま逃げても殺される、なら!
俺は攻めの姿勢に入り、オーガに立ち向かう
オーガも俺目がけて走り、超至近距離の攻防が始まる
「はあぁぁ!!」
オーガの攻撃を交わし、蹴り突きを入れるが、全然ダメージに入らない
くそ!体が硬すぎる!!
俺はオーガの大振りの攻撃を避けて、蹴りを放つ
しかし、やはりダメージははいってないようでオーガはニヤニヤ笑う
なら!
俺は攻撃を交わし続けて、拳に雷を貯める
少しでも出力を間違えたら拳が破裂してしまうが、限界ギリギリまで溜め込む
拳に荒々しい雷が纏い、オーガの拳目がけて、俺は全身全力の月を放つ
どっちの力が強いか勝負だ!
『ドゴン!!』っと2つの拳がぶつかり合い、激しい余波を散らす
「ぐっっっ......あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
筋肉の筋が切れ、腕から血が吹き出すが力強く踏ん張り拮抗を維持させる
辺りに雷が迸り、俺は徐々に押されていく
ここまでが限界なのか?
霞む視界の中で、俺は自問自答を繰り返す
いや、まだだ
まだ俺は雷神魔法を完全に使いこなせていない!
「グガアァ!?」
俺は体の事など後回しにし、出力最大で雷装天魔を纏う
「っぐうぅ!!」
体の神経が焼き切れ、全身の毛穴から血が吹き出す
だが、今出力を下げてもオーガ攻撃でこのまま死ぬだろう
なら、俺はここで限界を超える!
押されていた拮抗が戻り始め、カエデが逆に押し返す
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「グガアァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
1人とモンスターがラストスパートをかけ、全力で力を振るう
いける、このまま押し込む!
拮抗の中で勝機が見え、俺は必死にギアをあげる
『ゴキリ』
しかし、そんな俺を嘲笑うかのように拳が限界を迎え砕けてしまった
そのままオーガの攻撃で腕が後ろに行き、肩が外れる
オーガがニヤリと笑い、勝機を確信した
そのまま俺を潰し殺そうとする
だが、拮抗が急に崩れ、重心が前に出過ぎたオーガは一旦体制を戻さなければいけない
オーガは気づかなかった
相手は小さな子供。今ので心が折れたと確信していた
そして今の攻撃に勝てば、自分が勝つことを信じるあまり、次の攻撃を予測していなかった
気がついた時には自分の目に子供の手刀が突き刺さっていた
オーガは自分の浅はかなさを呪った
そして.........
『爆ぜろ』
俺は目に差し込んだ左手に、腕の事を考慮に入れず、全力で雷を放った
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突き刺さった左手を抜き、俺は空を見上げる
オーガは地面に倒れ、顔が黒焦げになっていた
俺は咄嗟の起点で唯一柔らかくてダメージが入る場所、目に手刀を突き刺しら何とか勝利をもぎ取った
いくら体が頑丈だろうと、内側の攻撃は耐えられるはずがない
それに、生物の弱点である脳をやき尽くされたら、どんな者も即死だろう
俺は大きく息を吐き、そのまま地面に倒れる
危なかった。奇跡的に勝てたがまだまだ精進が足りないな
そう、この勝利は奇跡だ
拳が砕け、オーガの重心が前に出過ぎたお陰で何とかトドメをさせた
次戦うならば、普通に俺は殺されているだろう
だが、この死闘のお陰で俺はさらに成長出来たはずだ!
この戦いの余韻に浸り、清々しい青空を眺める
1時間以内に帰ってこなければ行けないが、もう指1本たりとも動かせない
雷装天魔の無理な扱いで、全身の神経が焼き切れ、拳も粉砕された
まさに満身創痍だな!
俺は苦笑いを浮かべ、誰か人が通らないかなっとぼぅっと待ち続けるのであった