第1話!
小さい頃から剣に囲まれていた
実家は古い武道の屋敷で、その中でも剣術に置いて皆から注目されていた
しかし、時代が平和になってから暴力は必要なくなった
それに伴い、武道はどんどん衰退して行った
必然的に門下生等は居なくなり、俺の実家も寂れてしまった
両親は幼い頃に交通事故で無くなり、俺を育ててくれた祖父も高校生入ると同時に寿命で亡くなってしまった
広い屋敷で祖父と剣を交えていたのがとても楽しかった
俺の人生の生き甲斐だったのかもしれない
そして親も居ない、ましては祖父まで居なくなった俺には剣しか無かった
今思えば俺は剣バカだったのだろう
鍛錬すれば、銃相手でも本気で勝てると思っていたし、いつか銃弾や核を斬ってみたいと言うのが俺の夢だった
馬鹿げた夢だと思う
でも、努力し続けたらいつかはそこに至るとずっと思っていた
そう、人類の到達地点
最強に
皆がゲームや恋人を作って青春を謳歌している時、俺はひたすら竹刀を振っていた
友達の遊びも断り、恋人も作らないで俺は最強を目指して1人で鍛えていた
俺の家はかなり裕福だったこともあって、両親や祖父が居なく、親戚の助けもなくても暮らしていけた
そして、そんなある日
俺はお金を下ろす為には銀行に行って、そこで事件が起こった
黒いマスクをした複数の男達が銃を突き立てて、金を要求している
そう、銀行強盗だ
そこにいた人達は、悲鳴を上げ混乱していたが、強盗の1人が銃を1発発砲したら、しんっと静まり返った
「騒いだらお前ら次々に殺していくぞ!!」
皆は必死で頷き、静かにその場に座った
運が悪かったのだろう、その場にいた赤ちゃんが大声で泣いてしまったのだ
「おぎゃあぁぁっおぎゃあぁぁ!!」
「お、お願い泣かないで!」
赤ちゃんを抱えていたお母さんが真っ青な顔をして宥めている
「うるせぇぇぞ!!あと10秒以内にこいつを泣きやめせなきゃぶっ殺すぞ!!」
「ごめんなさい、ごめんなさい!どうかこの子だけは!!」
銃口が赤ちゃんに向いた時、俺は遂に我慢できなくて飛び出した
「っふ!」
「な、なんだお前!ぐはっ!!」
銃口を突き立てていた男の腕を思いっきり蹴っ飛ばし、顔面に鋭い突きを放つ
「てめぇ、やりやがったな!」
「ぶっ殺してやる!」
強盗犯は全員で5人いた。そのうちの1人を今の突きで気絶さしたが、圧倒的にこっちが不利
武器は当然のように無く、相手は拳銃を持っている
「パン!」
「ぐぅっっ!はぁぁぁぁぁ!!!」
銃弾が腹に被弾したが構わず突き進む。渾身の回し蹴り顔面に放ち、ぶっ飛ばした
「ぎゃあぁぁぁ!!」
「こ、殺せ!早くそいつを殺せ!」
「「死ね!!」」
左肩、右太ももに被弾し、鮮血が飛び散る
「っっあ゛ぁぁぁぁぁ!!!」
無理やり体を動かし、1人は再び顔面に突きを、もう1人は根性で頭突きをして気絶させる
あと一人!!
最後の1人を気絶させようと振り向いた瞬間
「パン!!」
気がつけば俺はゆっくりと倒れていた
周りの人達は悲鳴を上げていたが、よく聞こえない
ドスンっと、俺は地面に倒れ天井が視界に入る
「お、お前が悪いんだからな!俺は悪くねぇ!」
最後の強盗犯が何か言っていたが、生憎俺には聞こえない
その強盗犯は、客のみんなに抑えられていて警察もやっと入って来た
俺の体、そして頭から大量の血が出て、そこを小さな水溜まりに変える
どうやらヘッドショットを食らったらしい
俺はこれから死ぬのだろう
あぁぁ、刀さえあればこいつらに勝てたかもしれない
銃弾もカッコよく斬って、キャー!とか騒がれていたかもしれない
死ぬ間際でも、相変わらずアホなことを考えている俺
ここで死んだら、俺の夢だった銃弾と核を斬れないな
核を斬って英雄になろうと思っていたのに
段々と意識が朦朧として行き、眠くなってくる
来世では最強になって、核ぐらい強くなって最強になりたいものだ
そして、あわよくば可愛い女の子とキャッキャウフフをしたいなぁー
そんな願いを込めて俺は意識を失った
こうして、この銀行強盗は1人の少年の命と引き換えに幕を下ろしたのであった