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東一局「異世界雀鬼ジャン、女神に会う」

「終わりだな……」

その声を呟いたのは誰だっただろうか……。()()()()()()

ここは新宿の歌舞伎町、地下666階にある地下麻雀闘技場。そして俺こと和泉雀(イズミ ジャン)はここで代打トーナメントの決勝を戦っている。

代打ちとは即ち代わりに打つ。負ければ即死の危険な薔薇の棘のようなとんでもない世界さ。

相手の持ち点はもうゼロ。あとは軽く捻るだけだ。

いや、軽いなんて話ではない、なぜなら俺にはどの牌が来るか分かる生まれついたギフトがあるからな。

相手が手にしたのは3索、奴はそれを捨てざるを得ない。

「そいつはロンだぜ!」

俺がそう叫ぶと同時に奴は牌を捨てた。その3索で俺は緑一色(リューイーソー)を役満で直撃した……はずだった。


奴が捨てたのは4索、俺はチョンボ(チョンボ)の罪で運営に殺された。

なぜだ、あれは3索のはず。死にゆく中そう疑問に思う俺の目の前に女神が現れた。

「私は女神ピンフ、先程は申し訳ございません」

その美しい女神の言葉に俺は気付いてしまった、こいつだと。

「するってぇと何かい?あんたがあの牌をすり替えたと?」

「はい、女神ですからその程度の事は造作もございません」

これは困った、大変困った、どうやら俺は女神に殺されたようだ。これじゃ何も言えない。

「貴方に死んでいただいた理由はただ1つ、救っていただきたい世界があるのです」

ほらな?やっぱりだ、みんな俺に代打ちを頼むんだ。なら仕方ねぇ受けるしかねぇって事だ。


「依頼するのはいいが、ちゃんとギフトは用意してるんだろうな?」

「はいもちろんです、貴方にはこのギフト【全自動麻雀卓】けっせんのバトルフィールドを授けましょう」

俺の貰ったギフト【全自動麻雀卓】けっせんのバトルフィールドを簡単に説明するならば。いついかなる場合でも麻雀卓を召喚し、相手に代打ちバトルを強制的に仕掛けられるというモノ。そして敗者は死ぬ。

「こいつはいいものを貰ったな。俺が探し求めていた力だ……いいのかい?」

「はい、貴方に最も合うであろうギフトを授けました。この力でどうか雀魔王ヤックマンを打ち倒してください」

くくくっ、こいつはとんだアホだぜ。いままでのどんな女神よりもな……。

ならばこうだ、と俺は口を開く。

「ギフト発動!【全自動麻雀卓】けっせんのバトルフィールド!俺は女神様……あんたに代打ちバトルを挑むぜ?」


その瞬間、空間が光り麻雀卓がその場に現れた。

「正気ですか?女神と言えば麻雀力(インフィニティ)の化物と相場で決まっているのですよ?それを麻雀力20程度の貴方が倒そうなどと……」

不快感をあらわにする女神、しかし俺には関係ないね。

「御託はいいんだ、座りな?駄女神様よぉ!」

俺の決め台詞は女神を死地へと招いた。


そして代打ちバトル開始のダイスが振られる、そしてその瞬間。

「ツモ!天和(テンホー)です!」

女神がそう叫ぶ、タイマンが基本の代打ちバトルにおいて役満は即死(デスリアリティ)、つまりはデスリアリティだ。

しかし、そんな中笑う者が1人居た……。()()()()()()

「何がおかしいのですか!貴方はこれにてデッドエンド!はいお陀仏なのですよ!?」

「まぁまぁそう怒りなさんな女神様よぉ……?()()()()()()()()()()

東1局は女神の親番、天和(テンホー)和了(アガ)られれば俺に文字通り打つ手はない。

だがそれも……東1局だったらの話だ!

「こ、これは!対局が東2局まで進んでいるですって!?」

そうそれが俺の仕掛けた罠。


「女神さんよぉ、あんた俺の持つギフトが【配牌眼】デスティニードローアイズだけだと思っていただろ?」

そう、俺は今まで数々の異世界を代打ちバトラーとして渡り歩いて来たのだ。

「俺の持つ麻雀ギフトは108個!そして今のはその内の1つ、【時空間殺法】(クロノスブレイク)だ!」

説明しよう!【時空間殺法】(クロノスブレイク)とは、自分に不利な局や配牌の悪かった局の時間を殺法(ブレイク)して、流局していた事にできるのさ。


「そ、そんな!チート……チートですわ!」

「そんな事よりチョンボ(チョンボ)だなぁ駄女神さんよぉ?でも、俺は優しいからなそのチョンボ(チョンボ)は見逃してやろう」

俺ももう少しだけ神話生物との麻雀というモノを楽しみたい気分だったのだ。

慈悲の東二局仕切りなおし。お互いに配牌を取っていく音だけが響く。

そして……。


「さて、今度こそ俺の親番……と()()()()()()()()()

「さぁ、早く牌を捨てなさい、それで人和(レンホー)を私が和了(アガ)り貴方を冥府の彼方にバイバイですわ」

くくくっ、滑稽な駄女神はこれだから面白いのだ。


「悪いな?天和だ……」

俺は手牌を公開した。そこには大三元(ダイサンゲン)字一色(ツーイーソー)四暗刻(スーアンコー)単騎(タンキ)天和(テンホウ)が光り輝いていた。

「そ、そんな!麻雀力20の貴方になぜ……はっ!」

そう、俺は今まで真の麻雀力を隠していたのだ。

「ま、麻雀力が上昇していくわ……1万、10億、100兆、まだ増える……!」


()()()()()()()()()()


「麻雀力(インフィニティ)の45乗!?そんなただの人間にそんな麻雀力があるわけ!」

「言っておくがこれはギフトでも何でもない、俺自身の素の麻雀力だぜ?さぁ、このクインティプル役満を喰らうんだな!」

「嘘ですわ!チート、チートですわ!」

俺はため息を吐き、そしてもう一度吸ってからこう言い放つ。

「終わりだな……」

その瞬間、5倍の役満パワーを喰らい女神は5回死んだ。


この空間に清寂が訪れる……。

女神ですら俺を楽しませることは出来なかった。しかし、女神が言っていたことを思い出す。

「雀魔王ヤックマンだったか?少しは俺を楽しませてくれるといいんだがな。じゃなきゃわざわざ死んでやった意味がない」

ニヤリと笑う口元は、期待と諦めに満ちていた。

そして俺は光の中へ消えた……。


そして遥か魔王城でも同じように笑う1人の男がいた。

「ふっ、遂に待ち望んだ時だ。来い……異世界雀鬼ジャンよ!」

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