ステータスプレート
ギリギリ更新できた……
本日はルーク一歳の誕生日である。誕生日プレゼントは歌織がほしいと切実に願う今日この頃だ。
一年も経つと歌織なしの生活にも慣れて……来なかった。毎日寂しい思いをしながら寝ているのだ。夜泣きの原因は殆んどこれである。
妹離れできないルークなのであった。
そんななか本日はルークの誕生日である。自分の誕生日よりもどちらかと言えば、歌織が生まれるまで残り二年というところを喜ぶルークなのであった。
それはさておき、一歳ということで出来ることもかなり多くなってきた。
目は殆んどはっきり見えるようになり、耳も聞こえやすくなった。まだ上手く歩くことはできないが一人で立つくらいは出来るようになった。
あとは話せるようになればいいのだが、それはしばらく先になりそうだ。今はとりあえず身振り手振りで意思を伝えるようにしてる。
◯
「今日でルークは一歳の誕生日ですね」
お昼頃、レスティアがルークを抱きながら言った。
「あっという間だな~。じゃあ今日はあそこに行くのか?」
「はい」
ルークは、あそこってどこ?と伝えるために首を傾げてみたが、
「では行ってきます」
レスティアは気付かなかったようでそのまま家を出た。コミュニケーションが成立しないことに、ルークはガックリと項垂れるのだった。
「ルークも重くなりましたね」
レスティアは歩きながらそんなことを言った。一歳の赤子となると生まれたときの体重の約三倍になるらしい。
今のルークの体重はだいたい10キロなので2Lのペットボトル五本分だ。重いのも当然と言えるだろう。
ルークも母親にあまり迷惑をかけたくないので早く歩けるようになりたいと思っているものの、そう上手くはいかないもので、苦戦を強いられているのだった。
「着きましたよ」
レスティアがそう言ったので見てみると、なんとそこは教会だった。一応叡智の権能のマップ機能で前来た教会と同じか調べてみた。結果同じ場所であることがわかった。
教会は元の世界にあるような豪華な見た目ではなく、少し大きめの家に十字架が飾ってある程度のものだった。
サルマリーが田舎の方だからこんなものであって、実際の都市部にある教会は豪華な造りなっているのだが、それはまた別の話である。
(それにしても教会に何が用があるのだろうか?)
ルークの頭の中は疑問でいっぱいになった。教会というのは病院のような役割だ。別にルークのからだに悪いところがあるわけではないので、ここに来る意味がわからなかったのだ。
「もう一年ですか。早いですな」
「はい、ルークもこんなに大きくなったんですよ」
レスティアと神父がゆったりと話している中、ルークはちらりと神父の顔を見た。一度会ったことはあるが、あの時は顔を見ていなかったのでこれがはじめてである。
神父は声の通り優しそうなお爺さんだった。年齢は60代半ば位だろう。
じっと神父を見ていると、ルークの視線に気づいたのかこちらに手を振った。一応振り返しておく。
その後、しばらくの間二人が話しているのを聞いていると、神父が何かカード?のような物を持ってきた。
「さて、では始めましょうか」
「お願いします」
ルークは適当な椅子に座らされた。
その後すぐにチクっと痛みが走る。手を見ると針のような物で刺されていた。
赤子になってから痛みにも弱くなっているのだが、意地と気合いで泣くのを我慢する。
「……強い子ですね。きっと将来いい男になることでしょうな」
「うふふ、当たり前ですよ。何て言っても私の子供何ですから!」
何でもいいから早く針を抜いてくれというルークの心の叫びが伝わったのか、神父は針を抜くと、ルークの血をカードのような物につけた。
神父の早業を見ていると気付けば手にあったはずの怪我が無くなっていた。
「これがルーク君のステータスプレートです。あと指の怪我は治しておきました」
「ありがとうございます」
レスティアは神父から先程血をつけたカードを受け取った。
ステータスプレート?
ルークは聞き慣れない単語が出てきたためお馴染みの叡智の権能を使って検索した。
ステータスプレート
・登録の儀式にて血をつける人のステータスを確認できる
・天職以外は本人の許可なしでは見れない(天職も本人の許可なしに見れるのは親と兄弟のみ)
・一歳の誕生日の時に儀式を行う(土地や国によって時期に差あり)
だそうだ。ルークはゲームのステータスウィンドウのような物と勝手に納得した。
ルークが調べてる間にレスティアはルークのステータスプレートを見て目を見開いていた。
ルークがその事に気付いた時には時すでに遅く、
「すいません、急用ができましたのでこれで!」
と言い残してルークを抱いて家の方に走っていった。ステータスプレートの登録にはお金が要らないのでよかったと言えるだろう。
何せお金が必要だったら食い逃げのようなものなのだから。
「は、はい」
そして一人神父はわけもわからずポツンと取り残されたのだった。
◯
「お帰り……ってそんなに焦ってどうしたんだ?」
勢いよく扉を開けたレスティアに対して、若干というかかなり驚きながら、アルベルトはとりあえず椅子に座って落ち着かせようと準備するのだが、
「それどころじゃないのよ!」
あまりの剣幕に気押された。
「何があ―――」
「ルークの天職が〝吟遊詩人〟だったの!?」
アルベルトが何が起きたのか少し引き気味に聞こうとすると、言い切る前に被せるようにレスティアが言った。
「な、なんだって!?」
それを聞いてアルベルトも態度が急変する。
「「…………」」
そして二人してまじまじとルークを見るのだった。
ルークは何が起きたのか全くといっていいほどわからなかった。いくら知識があるといっても、一年やそこらで急にこの世界の常識に馴染めるほど対応力は高くないのだ。
ルークがアワアワしているとアルベルトがルークのことを抱き上げて、
「凄いじゃないか!村人の両親から別の天職を持った子供が生まれるなんて!」
「そうよね!さすが私の子供だわ!」
二人して大興奮で大騒ぎしていると、騒ぎを聞き付けてレイとエドがリビングに降りてきた。
「何かあったの?」
「ルークの天職が〝吟遊詩人〟だったんだ!」
「凄いじゃない!」
今度はレイも一緒になって騒ぎ始めた。
「凄いの?」
「きっと凄いのよ!」
エドが不思議そうに聞くと、レイも何が凄いのかはよくわかってないらしい。
とりあえず父と母が凄いと言ってるから凄い!って言ってるから凄いんだわ!って様子だ。
「村人から他の天職が生まれるのは本当に珍しいのよ!」
母が興奮気味に二人に説明するが、二人はそもそも天職が何かわかっていないらしく首を傾げるのだった。
「よーし!今日はお祝いだ~!」
アルベルトの一言で一家はさらに盛り上がるのだった。
陰ながらルークは、プラスの感情でよかったという安心と同時に一つの不安が襲った。
(歌織の天職が〝賢者〟っていうのが広まると大変なことになるんじゃあ……)
ルークの予想は正しいのだった。
次回はステータスに関して掘り下げていこうと思います