異世界転生を始めよう
プロローグは前回で終了
今回から本編入ります
そして連続更新も今日で終わりかもしれません(泣)
本分を疎かにはできないので
神とあの部屋からお別れしたあと、響揮は水底に沈むような、深い深いところに落ちていくような、それでいて心地よい感覚だ。
そして響揮はゆっくりと意識を失うのだった。
◯
響揮は眩い光に目を覚ました。
「おぎゃあ!おぎゃあ~」
どこからか赤子の産声が聞こえてくる。瞼が開かないためどこに赤子がいるのかはわからないが、元気に泣いていることだけはわかった。
「やったぞ!元気な男の子だ!」
「ええ……無事に産まれてくれて良かったわ」
赤子の声とは別で、大喜びで興奮している男性の声と、優しそうな女性の穏やかな声が聞こえた。
きっと二人は夫婦なのだろう。
今泣いている赤子はきっとこの二人の間にできた子供なのだろう。
その三人以外にもこそこそと声が聞こえる。
「エド!そっちは行っちゃダメでしょ!」
「あー!」
幼い女の子がもう一人の子に何か注意をしているようだ。この二人はきっと、赤子の兄弟なのだろう。ちなみに声だけで判別しているので、二人目の子の性別はわからない。
さて、そろそろ現状の確認のために目を開けたいところなのだが、どうしても目が開かない。無理に開こうとすると危険な気がする。
響揮は大人しく、耳だけで自分の現状を理解しようと努力するのだった。
少しして響揮は叡智の権能を使えばいいということに気がついた。
叡智の権能はこの世界の全ての情報が入っていて常にそれは更新されている。
この能力を使えば自分の現状を思い出すことなど造作もないだろう。ちなみに何故思い出すなのかというと叡智の権能は全てを知っている能力だからだ。知っているのに知ると表現するのは、日本語として間違っている気がするからだ。
閑話休題。
響揮は自分のことについて思い出した。思い出す時は頭の中をインターネットのようにして、検索をかけている感じだ。
情報量が莫大なため整理されているのだろう。
そして刹那といえる程度の時間で情報を思い出す。若干思考加速している気がしないでもないが、これはこれで便利なので気にしないことにした。
響揮のこの世界での情報はというと、
ルーク・クライシス(転生者)0歳
・村人のレスティア・クライシスとオルドナ・クライシスの間に産まれる末の子供
・天職は吟遊詩人
・3つ上の姉と2つ上の兄がいる
・後神代3053年産まれ
この程度だった。生まれたばかりなので仕方のないことだ。
そして響揮は気がついたのだった。この大きな声で泣いてる赤子が自分なのだと。
響揮は色々なことに辻褄があったので、やっと現状について理解することができた。
異世界転生というのだから0歳児からなのは当たり前だが、こうも意識がふわふわしているとは予想していなかったのだ。
意識がふわふわというのは、そうとしか言えないというか、身体と精神が完璧にくっついていないからなのか、無意識のうちに赤子として行動してしまっているようだった。
だからこそ自分が赤子だと気付かなかったのだ。今でさえ泣いている自覚がないのだから。
それにしても先程無理矢理目を開けようとしないのは正解だった。赤子は自然と目が開くまで目を開けてはいけないらしい。無理にすると失明の恐れがあると日本にいた時、高校の授業で習った。
ただし、目がなかなか開かないのは開かないので問題ならしい。その辺はあまり詳しくないし、叡智の権能でもわかることではないので考えるのをやめた。
響揮はわからないことは基本思考放棄するのだ。
◯
色々納得がいってすっきりしたので先程から気になっていた後神代について叡智の権能で検索した。
後神代
・神代の後の時代のこと。
出てきたのはこの一文だった。
(知ってるわ!そんなの検索かけなくても文字見ればわかるに決まってるだろ!)
響揮は声が出せないので心の中で盛大にツッコミを入れつつ、負けじと今度は神代について検索した。まあ声を出すことができるとしても心の中に留めておくのだが。
神代
・神が存在していた時代
・この世界の派遣をめぐる争い神々の間で行われていた(神代戦争)
・神から力を授かった一人の少年により戦争は幕を閉じた
出てきた情報はというとこの程度だった。多分経緯とか神々の存在とか調べようと思えば可能なのだろうが、正直なところ、響揮はこの神代戦争とやらにそこまで興味がなかった。
ただ神から力を授かった少年というのが、自分の境遇にあまりにも似ているためそこだけは検索をかけた。
カイン・ホルベース(転生者)
・日本名は橘 楓
・神代戦争を終わらせた英雄
・後に現代のウィルスン聖国の初代皇帝となる
・封殺の魔眼と超身体能力強化を授かる
やはり自分と同じく転生者のようだった。この人がどの時代から来たのかは分からないが、同じ日本人であることだけはわかった。
あと、神への願い事は内容によっては神殺しすらも可能であることも。
まあそんな物騒で罰当たりなことはしたくないので今のままで充分満足して……
ここで響揮は重要なことに気がついた。
転生するときに神の部屋で、どのような村人家族の間に生まれたいか、いつの時代に生まれたいか、どの辺りの地域に生まれたいか、など色々なことをサイコロやらルーレットやらで決めたのだ。
地域に関してはよく分からないので、響揮の豪運を使って住みやすい土地に生まれるようにしたのだ。同じように家族も、穏やかで優しく、少しだけ裕福程度の村人の間に生まれるようにした。
ちなみに何故村人なのかというと、天職の都合らしい。村人からはいろんな天職が生まれるが、他の職業の場合、基本は親と同じになるそうだ。
ここで言うところの例外は、勇者や、歌織の天職である賢者の場合、その天職を持った子供が生まれてくることはないらしい。
多分レアな天職というのは、劣勢遺伝のようなものなのだろうと勝手に思ってる。
それで残る時代はだが、さすがに百年、千年単位での話ではなく、今すぐか、もう少し遅いか。つまり0~5年の選択ができた。
選択肢が6つな理由は六面サイコロだったからだ。
それはさておき、歌織の希望もあって、日本と同じように3つの年の差で生まれることなっているのだ。
さて長々と話たが、ここまで来れば何が言いたいのかご理解いただけただろう。
だが、あえて言わせていただく。
(後三年!後三年、俺は歌織なしどうやって生きればいいんだぁぁあああ!!!)
次回から歌織ちゃんが生まれるまでの三年間を何回かに分けて書いていきたいと思います。
あと、しばらく会話文は少ないと思います。
主人公が喋れないので