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天職賢者の宿命

お久しぶりです、お待たせいたしました。


 精霊二人(イフとシア)と契約してから大体一年が経った。はっきり言って殆ど毎日、同じようなことの繰り返しだったので、省略させていただく。

 あっ、収穫は去年と同じくらいあったらしい。暑い日や、寒い日でも毎日通った甲斐があったというものだ。

 

 そんなこんなで一年間が経ち、オリヴィエも随分と成長した。一人で立ち上がるのは難しいが、何かに掴まりながら歩く程度はできるようになった。

 成長が微笑ましい。

 

 そして、視力もよくなったので、顔を見られてしまった。あの時の事は忘れられない。

 何故かというと、オリヴィエとの念話で

 

(御姉様……?)

 

 と言われたからだ。

 

 自分でも気づいていた。中性的な顔立ちだとは思っていた。ただ、最愛の女の子に女扱いされると、中々心に来るものがあるのだと知った。

 こんな感情知りたくなかったけど。

 

 ルークの顔立ちは100%アルベルトになると思いきや、100%レスティアになってしまったのだ。

 レスティアをそのまま男にしたような。後、十年位あれば多少男らしくなるだろうが、現在の容姿だと女の子に間違われても文句が言えないのだ。所謂男の娘というやつである。

 アルベルトに似ているところは正直髪の色くらいだ。アルベルトの遺伝子弱いな~とルークは思ったが口には出さなかった。

 

 閑話休題

 

 本日はオリヴィエ一歳の誕生日である。盛大に祝いたいところだが、この世界に誕生日を祝うという風習はない。

 なので、念話で伝えるだけになった。

 大人になったら二人だけの行事として誕生日会をしたいと思っている。その時は今までできなかった分を取り戻したい。

 

 まあ一歳に関しては、ある行事があったことを覚えているだろうか?そう、登録の儀式だ。

 ステータスプレートをもらう日となっている。ステータス自体は叡智の権能によってステータスプレートより詳しく分かっている。

 だがステータスプレートにはステータスの確認以外にもう1つ使い道があるのだ。

 

 それは身分証明である。

 

 ステータスプレートに嘘を混ぜることは不可能なので、それを相手に見せることで身分の証明となるのだ。

 

 あの日にもらったステータスプレートは、未だに親が持っているというのは秘密である。

 子供に身分証明要らない。

 

 

 登録の儀式と言えば、あの針は痛かったな~と思った。子供だからMNDが低いのが原因だ。

 あの痛みにオリヴィエは堪えられるだろうか?ルークは少し心配になったが、称号の事を思い出して安心した。

 

 恋する乙女

 

 この謎称号のお陰で、オリヴィエのMNDは現在の自分よりも大幅に高いのだ。

 余裕で堪えられるだろう。

 

 

 

 悶々と考え事をしていると、時間が経つのが早い。

 気がつけば御昼時になっていた。レスティアに呼ばれたので、ルークはベンチから立ち上がり、家に戻った。

 

 

 

「今日ってオリヴィエの登録の儀式だよね?」

 

 ルークは一応念のために、レスティアに確認を取る。この確認に特に意味はない。

 あえて言えば、次の事を聞くための伏線と言えばいいだろか?

 

「ええ、そうよ?」

 

 分かりきっていた答えを聞いた後、本当に聞きたかったことをルークは言った。

 

「いつ頃行くって言ってた?」

 

 この質問こそルークの大本命である。

 自分の時は御昼を食べてから行ったので、今回もそうなのではないかと予想している。

 そうなると、いつのタイミングでオリヴィエに会いに行けばいいのか分からないので、行く時間から帰ってくる時間を予想しようとしているのだ。

 

「もうそろそろ終わるのではないかしから?」

 

「そうなの?」

 

「お昼前に帰ってくるように行くって言ってたから」

 

 それが本当ならのんびりと食事する理由がないな。そう思い、ルークは食べるスピードを上げた。

 

「うふふ、分かりやすわね……」

 

 レスティアは自分がオリヴィエのことをどう思っているか知っているので、特にこのような態度をとられても気にならない。

 

「はい、二人もどうぞ~」

 

「ありがと、戴くわ」

「いただきます~」

 

 ルークが黙々と食事を続ける横で、レスティアはイフとシアにも料理を運んできた。

 

 妖精と契約しているのがバレた日、家に二人を実体化させたまま連れて帰ったら、前々から人間の食事に興味があったということをイフが言い出したのだ。

 

 試しに食べさせてみたら、娯楽と言えばトークな精霊のことを考えると、当然と言うべきか、案の定二人は人間の料理にハマってしまった。

 それから毎日作ってもらっているというわけだ。

 

 体が小さいので食べる量はそこまで多くないし、収穫量が増えてお金もあるので特に問題はない。

 

 それに父に至っては半分崇めている始末だからな。農家には精霊の助けが必須なのはこの世界に来てよく分かったが、流石に目の前で崇められた時は軽く引いてしまった。

 

 

 

 

「ご馳走さま!」

 

「もう行くの?」

 

「そろそろ帰ってると思うから」

 

「そう……」

 

 そう言うとレスティアは何かを取りに、自分の部屋へ、小走りで行った。

 ルークは食器を下げて、服を着替えているとレスティアが小さな袋を持ってやってきた。

 

「これ、持って行きなさい」

 

「これ何?」

 

 ルークは中身を確認せずにレスティアに確認を取る。渡すタイミングからしてプレゼントなのは間違いないだろうが、中身が全く予想がつかない。

 重さ的に食器とかではないだろうし、他にあるとすれば……

 

「オリヴィエちゃんの服よ」

 

 やはり服だったようだ。買っているところを見ていないので恐らく手作りだろう。

 母親の服作りは趣味の域を越えている。その辺の服屋よりもよっぽど良いものだろう。

 

「ありがとう!」

 

 ルークは満面の笑みでお礼を言った。

 

 

 

「じゃあ行ってきます!」

 

 ルークはプレゼントを持って出ていこうとしたその時、急に扉が開かれた。

 

 

「ど、どうすれば……」

 

 扉を開けたのはオリヴィエを抱いたアイリスだった。

 

 アイリスはオリヴィエを抱いて泣いてしまった。扉の前で。

 

 家の中に入れるべきか、事情を聞くべきか、とりあえずここで励ますべきか、ルークは迷いに迷っていた。いや、最後のはないか。

 多少は冷静な判断をできるルークなのであった。

 

 結局のところルークは判断がつかなくて、アイリスの前でオロオロとしていると、何かあったのかと部屋からレスティアが出てきた。

 

「ど、どうしたの!?」

 

「それがわからなくて……」

 

 心強い味方が来てくれた事によりルークの心にゆとりができたのか、ルークの判断力はいつも通りにまで回復した。

 

 ルークはここはレスティアに任せて別のところから事情を聴くことにする。

 別のところというのは勿論オリヴィエのことだ。側にいたのだから何も知らないということはないだろう。

 

 ルークはそう考えて、早速行動に移した。と言っても念話を送るだけなのだが。

 

(オリヴィエは事情を知ってるか?)

 

(…………)

 

(オリヴィエ?)

 

 オリヴィエに異常があったのだろうか?それだと、アイリスの様子がおかしい事に納得がいく。

 返事が中々返ってくることが無かったため、ルークは心配になり、もう一度呼び掛けた。

 

(え?あっ、はい!何でしょうか?)

 

 流石に二度目の呼び掛けには答えてくれたが、いつもと反応が違う。いつもなら呼び掛けて秒ですぐに返答がくるのに。

 電話ならワンコールと同じ位早いのにも関わらず今回は凄く遅かった。やはり何かあったのだろうか?

 

(いや、何かあったのかなと思って。アイリスさんが泣いてるからさ)

 

(……それは――)

 

 

 オリヴィエは今日の出来事をそのまま語ってくれた。母がアイリスさんを慰め終えるのと同じくらいの時間を要したため、内容はこちらでまとめさせてもらう。

 

 

 まず今日2人は登録の儀式のために教会へ行った。自分の時と同じように、プレートに血をつけるまでは良かったらしい。

 

 血をつけたカードに変化が起きたそうだ。

 

 カードは青白い光を放ち、文字を刻んでいったらしい。そして刻まれた文字は、家族だけでなく他の人も見ることができたらしい。

 

 天職:賢者

 

 それ以外は見えないらしいが、天職を見られたことにより、神父さんにも母親にも、自分が賢者であることがバレてしまったらしい。

 まあ元々母親には見られるんだけどな。

 

 何故見られて問題があるかと言うと、やはり天職に問題があるらしい。

 

 オリヴィエの天職は世にも珍しい賢者だ。

 天職賢者を持つ人間はこの世界で数人しかいないのだ。賢者の特性が、『全ての魔法を使用できる』というのもあって、何処の国でも賢者を求めているのだ。

 

 実際のところ求めているのは賢者だけではない。優秀な人材が欲しい各国は、魔法使い、魔女等の魔法系天職の人は、半強制的に国のために働かされるらしい。というのも成人すると無理やり王宮に連れていかれるそうだ。

 

 だが、何故天職の事について国の方に情報がいってるのかだが、その秘密はステータスプレートにあるらしい。

 

 ステータスプレートの情報は全て魔法で国に流れているらしい。

 戸籍的な役割もステータスプレートが担うと考えればいいのだが……って、ステータスがバレるってヤバくない!?

 

(それ本当か!?)

 

 ルークは急に不安になってオリヴィエに問いただした。それと同時に自分の叡智の権能を用いて、ステータスプレートについて調べる。

 

(……残念ながら事実です)

 

 叡智の権能でも同じだった。

 

 どうやらステータスから称号まで全てこの国に伝わっているそうだ。これはわざわざ全員分確認してないことを祈るしかない。

 『神を超えし者』なんて馬鹿げた称号を持っているのだ。目をつけられたら面倒なことになる。

 

 幸い、強制連行は15歳の時にある成人の儀のタイミングらしく、ルークは11年、オリヴィエは14年ある。

 

 ルークが連行されるかは別として、14年後は必ず来るだろう。逆に14年もあるのだ。それだけあれば何とかなる気がしてきた。

 何とかならなくても、何とかするけどな。

 

 ちなみにアイリスさんが泣いてる理由はこれが原因らしい。

 まあ子供を国に盗られるようなものだ。しかも普通の村人なら抵抗などできるはずもない。

 

 普通の村人なら、ね!

 

 ルークは村人ではないし、普通ではない。異常ですら収まらない。チート持ちってやつだ。

 

 

 ルークはオリヴィエとアイリスに近づき、こう宣言した。

 

「安心して!オリヴィエは俺が守るから!」

 

 ルークの言葉は冗談や、比喩ではない。ましてや子供の戯れ言でもない。

 勿論励ますために言ったというのもあるが、全部本気である。

 

 レスティアは笑いを堪えながら、アイリスを励ます。

 

「……ふっ……ほら、ルークもこう言ってることですから……ぶふ……安心してください……」

 

 レスティアの反応が少し癪だが、今後見返してやればいいだろう。

 

「ふふ、そうですね」

 

 アイリスさんも涙を拭いて笑ってくれたのでよしとするか。

 

 ルークは気を引き締めて、これからのことを考えようとしたその時、

 

(御兄様っ……私感動しました!私も御兄様に守ってもらえるような素敵な女性になれるように頑張りますっ!)

 

(えっと、オリヴィエさん?せめて自分一人でも逃げれるように女子力アップ以外のこともしてくれるよね?)

 

(私、御兄様のことを信頼してますから!)

 

(お、おう)

 

 若干一名、斜め上のことを言ってる人がいますが、この兄離れできない可愛い妹のため一肌脱ぐとするか。

 

 自分のことを棚に上げるルークであった。

次回はいっきに時間を飛ばしましょう!

早くストーリーを進めたいのです

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