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18/19

暑い夏、新たな仲間、ばれる秘密

お待たせいたしました。

仕事が残業続きで、帰って寝るを繰り返しておりました……

夏休み入ったはずなのに、一体全体どういうことじゃあ!!


 オリヴィエのステータスを確認してから少し経った。季節は夏だ。

 こんな暑い日にはプールに行って冷たい水の中を泳ぎたいと思うが、プールなんてあるわけもなく、海もここから遠いので日陰で大人しくしているしかなかった。

 

「あぁ〜つぅ〜いぃ〜」

 

 それでも朝は畑に行かなくてはならないので、ルークは熱中症対策として帽子を被って毎日畑に通うのだった。

 

 

(暑いってどういうものなの?)

 

 いつものベンチでぐだっとしていると、イフが気になったのか聞いてきた。

 イフは火精なので暑さには強くできているのだ。その代わり寒さには滅法弱いらしいが。

 

「説明に困るな〜」

 

 ルークは頭を捻った。

 

「どれ程の言葉を尽くしても説明しきれないけど、あえて言うとするなら、やる気全てが吸われて、何もする気が起きなくなるかな?」

 

 人間の三大欲求である食欲すら無くなるのだ。この説明で間違ってはいないと思う。

 夏の暑さは感覚的には真冬の炬燵みたいなものだと思っている。まあ炬燵は天国なんだけど。

 

(うーん?よく分からないわね)

 

 やはり理解してくれないか。

 

「まあ寒いの反対と考えたらいいよ」

 

(……それは辛いわね)

 

 寒いという言葉が出た瞬間イフは顔を顰めた。今までの冬、どのような思いをしてたのだろうか?想像がつかない。

 

 

「……というかイフ少し離れてくれ」

 

 ルークは急に話題を変えた。別に冬の頃のイフの話を聞きたくなかったからという訳では無い。

 

(え、何で?)

 

「イフが側にいると熱い」

 

 イフは火精なので熱を放っているのだ。夏の太陽から逃げて日陰にいるのに、イフがそばにいると日陰にいる意味がなくなるのだ。

 夏にカイロを持っているようなものである。

 

(ふーん。じゃあ却下よ)

 

「何でだよ!」

 

(今は飛ぶ気分じゃないからよ)

 

「そんなの知らな……って熱い熱い!」

 

 イフは嫌がるルークの肩に座った。

 飛んでないときはここが定位置なのだが、何せ暑い。春だったらまだ我慢できたが、夏では厳しい熱さだ。

 イフが側にいると気分はサウナになる。蒸し暑い訳ではないのだが、そのイフの触れている部分ではなくエリアとして暑くなっている気がする。

 体感気温だけ上がっている感覚だ。

 

 

「本当に熱いんだけど……」

 

(我慢しなさいっ!)

 

「そう言われてもな……」

 

 ルークがベンチに倒れこむと、肩に乗れなくなったからか、今度は顔に頭に座った。

 熱い……感触とかどうでもいいくらい熱い……

 

 ルークが熱さでヘロヘロになっていると、頭の中に妙にやる気のない、気だるげな声が響いた。

 

(ふわぁ……ボクと契約すればいい~)

 

 声は聞きなれたオリヴィエでもイフでもない。

 

(誰だお前は?)

 

 ルークは声の主に向けて念話を送った。

 

(いつも君の頭の上に乗ってる精霊さ~)

 

 え!?ニー子さんですか!基本無反応なニー子さんが何故自分から?

 ルークは頭の中が疑問でいっぱいになった。基本やる気がなくて寝ているだけのニー子さん。こちらから絡もうとしても無反応だったのだが、何故このタイミングで?

 

(いや、ボクは君の頭の上で寝れたら満足だったんだよ~?でもね、彼女はそれを邪魔したからね~)

 

(えっと、つまり?)

 

(お灸を据えたいということだよ~)

 

 ああ、なるほど。寝ていられたらそれで満足だったのに、イフのせいで寝られなくなったから復讐させろということか。

 

(わかった。名前考えるから少し待ってくれ……)

 

(は~い。しっかりいい名前考えてね~?)

 

 いい名前と指名が入ってしまった。ニー子では納得してくれないということだ。

 だが、ルークの頭の中ではニー子と固定されている。もう他に思い浮かぶ気がしない。

 という訳で前回同様、オリヴィエさんの力を借りることにした。

 

(オリヴィエ~!)

 

(はい、何ですか?)

 

(また名前考えるの手伝ってくれ)

 

 ルークはそう言って、ニー子の情報を渡した。まあ情報と言っても水精であることと、性格を伝えただけなのだけれど。

 

(そうですね……シアとかはどうですか?)

 

(その心は?)

 

(ギリシア神話に出てくる海神、オケアノスをローマ字書きするとOceanusになります。その中のcea(しーいーえー)をとってシアにしました)

 

(なるほど、流石オリヴィエだな。俺には想像もつかないよ)

 

(いえいえ。御兄様も知っている通り、神話とかそういう本が好きだったので知識があるだけですよ)

 

(例えそうだとしても充分ありがたいよ。俺はそういうセンスには恵まれなかったから。また今後も頼むかもしれないけどいいか?)

 

(はい!御兄様の頼みとあらば、何でも大丈夫です!)

 

 ルークはオリヴィエ御礼を言ってから念話を終わらせると目の前のニー子の方に目を向けた。

 

(決まった~?)

 

「ああ……君のことをシアと名付ける」

 

(シアね~……うん、ボクはシア!受け入れるよ~)

 

 

 イフの時同様、シアは激しい光に体が包まれる。

 

 光が収まるのを待っていると、イフの声が頭に響く。

 

(ちょっ!あなた、これはどういうこと!?)

 

 声色から察するに、急に起こった目の前の事態に混乱しているのが窺える。

 

「どういうことも何も、つい最近自分も体験しただろ?」

 

(ってことは、やっぱり……)

 

「そう、精霊契約だよ」

 

 ルークがそう言うと同時にシアの光が収まった。

 

 出てきたのはボブカットの女の子。髪の色と眼の色は、自分の属性を現しているのか、青色になっている。

 スタイルはイフとは比べ物にもならないくらいデカイ。何処とは言わないがデカイ。

 

 顔は何だか眠そうで目が半開きになっている。ジト目と言ってもいいかもしれない。

 

 服はイフの色違いで、これも属性を表しているのか青色を着ている。

 

「ありがとう、マスターさ~ん」

 

「……あ、マスターって俺のことか?」

 

「他に誰がいるのさ~」

 

「ごめん、そう呼ばれたのは初めてでな」

 

 流石に二度目だからか、ルークはかなり落ち着いていた。それとは正反対の反応をしている人もいる。それは勿論イフである。

 

(もももも、もしかしてその子は!)

 

 あ、今のままだとシアにイフの声が届いてないよな?同じ契約者を通してるから聞こえるのかな?もしくは精霊同士だから聞こえるのかな?

 

 その辺りの事は追々確認するとして、いずれにせよ、イフだけ霊体化だと不公平なので、イフの姿を実体化させてあげた。

 

「ひひひ久し、ぶ、ぶりね!」

 

「ボクはずっとマスターの頭の上で寝てたけど~?」

 

 イフの態度がいつもと違うのがよく分かる。混乱とかそういうのを通り越して、まともに話せてないレベルだ。

 

「そ、そうなの?しし、知らなかったわ~!!」

 

 イフは必死に目を泳がせながら言い訳をする。

 

「ボクが寝ているところを邪魔されるのが一番嫌いって昔言わなかったっけ~?」

 

 口調は穏やかなのに、何故かシアから覇気のようなものを感じるのは気のせいだろうか?いや、気のせいではないだろう。

 シアは静かに怒るタイプなのだろう。

 これは個人的な感想だが、静かに怒るタイプの方が、顔を真っ赤にして怒鳴る人より怖いと思う。

 

 

「ソ、ソンナコトイッテタカシラー」

 

 完全な棒読みで目を逸らしながらイフは言う。見ていて憐れだと思うのは仕方のないことだろう。

 

「へー、まあいいや~」

 

「いいの!?」

 

 シアがそう言うと、光の早さで食い気味にイフは態度を変えた。調子がいいにも程がある。

 

 この後、シアの一言二よりイフは絶望に落とされるのだが……

 

「覚えてても覚えてても、お仕置きする事には変わらないからね~」

 

「ひぃっ!」

 

 イフは逃げようとするが、そんな事シアが許す訳もなく、あっという間に捕まってしまう。

 

「さて、火精相手にお仕置きするなら一つだけだよね~」

 

「それだけはご勘弁を!どうか!」

 

 イフの必死の命乞い?のようなものを無視して、シアはお仕置きを開始する。

 

「アイスフィールド~」

 

 シアの魔法により、シアを中心として辺り一帯の温度がガクッと下がった。

 

「これはいいな~」

 

 まるでクーラーのような魔法に、ベンチに寝転がっているルークは心地良さそうに鼻歌を歌う。

 

 それとは反対に、捕まっているイフはというと、

 

「さ、寒い……」

 

 凍えて、震えていた。

 

 ルークはそれを横目にしながら疑問に思う。下がったといっても、35度が25度くらいになった程度なはずだ。エアコンで言えば強くも弱くもない程度である。春や秋の気温と変わらないと言っていもいい。イフはどうしてそこまで震えているのだろうか?

 

「この魔法はボクに近づけば近づくほど寒くなっていくんだよ~」

 

「へー」

 

 ルークの位置は、イフが逃げようとしたため、少し離れているのだ。そのお陰で適温な位置にいるのだった。

 

「……ゆ、許して、ください」

 

 顔を青くさせながらイフは謝る。

 

「もうボクの寝る邪魔はしない?」

 

「……し、しない、から」

 

 見ていて可哀想になってきたのでこの辺で止める。

 

「シア、そろそろいいだろ?」

 

「そうだね~」

 

 シアは魔法を解除したのか、一気に暑くなった。

 魔法だけは発動したままでいてもらったらよかったかも、と少し後悔しているルークなのであった。

 

 

 イフはボロボロになりながらこちらに飛んできた。

 

「さっきはありがとう……」

 

 どちらかと言えばお仕置きを許したのだから同罪だと思うが、まあいいか。

 

「次は気を付けろよ?」

 

「うん……」

 

 そう言ってルークの肩に乗った。

 近づくだけで熱さが増したイフが、今は少し熱いかな?程度になっている。

 さっきの魔法に対抗するために魔力を使って体温を上げていたのだろう。

 

「ふわぁ~……お仕置きも終わったし、ボクは寝るね~」

 

 シアは相変わらずルークの頭の上に乗って寝るのであった。

 水精だからか、イフとは反対に近づくと涼しい。

 

 シアの規則正しい吐息が聞こえるようになったとき、イフがいつもの熱さを取り戻した。回復したようだ。

 

「散々だったわ……」

 

「自業自得だけどな」

 

「うっ……それは、まあ、そうだけど」

 

 イフは口籠る。

 本人が自分の責任と認めているからいいが、個人的には、そこそこ理不尽な怒りだと思った。

 確かに寝るのを邪魔したイフは悪いが、それだけであそこまでするかと言われるとな。

 まあ口には出さないけど。

 

 

 その後レスティアがご飯ができたと呼びに来るまで、ルークはいつも通りイフと雑談していた。

 

 この時ルークは一つ重大なことを忘れていた。

 

 

「ルーク、ご飯……!?」

 

「母さんどうしたの?」

 

 レスティアは目を見開いて言葉を失う。レスティアの行動の意味がわからず、ルークは聞いた。

 

「そ、その浮いてる小さい女の子は?」

 

「……あっ」

 

 ルークは実体化を解除するのを忘れていたことに今気がついたのだった。

 

「母さん、これは――」

「貴方!!!ルークが~!!!」

「ちょ、待っ!」

 

 止める暇もなく、アルベルトに報告しに行った。

 

(ごめん、オリヴィエ……今日そっちに行けそうにない……)

 

(え?)

 

 ルークの予感は的中し、家族から根掘り葉掘り、精霊の事について、聞かれるのだった。

 

 あっ、母さんが走った後にでも実体化を解除しとけば見間違いで終わったかもしれなかったのに……

 

 今さら後悔しても遅いルークであった。

次回、一年飛んでオリヴィエ一歳の誕生日です。

一歳の誕生日と言えばあれがありましたよね!

そこで問題が起こります。(というか既に問題)

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