精霊魔法
……夏休みの方が忙しいってどう言うことだ!
相変わらずの予告詐欺すいません。
予告しない方がいい気がしてきた
無事永訣の儀も終わりルーク達はいつもの日常に戻っていた。
ルークの日常と言えば畑、オリヴィエ、家のサイクルである。
最近は種まきの時期なのか、ゴーレムがいっぱい動いていて見ているだけでも暇潰しになる。
大精霊のイフは契約して普通の精霊より上位の存在になったのか、下位の存在に命令できる権利を得たと言って喜んでいた。火精霊の女王的存在になったらしい。その女王に命令できる自分は一体何なのだろうか?
イフと言えば火精だが、火とは別の力を扱えるようになったと言っていた。
何でも生命活動の促進させる事ができるようになったらしい。効果は身体強化的な物から、成長を早めるものまで、他にも複数ある。イフには今後沢山お世話になるだろう。
特に成長を早めるというのは農家にとっては夢のまた夢みたいな能力なのだから。
「ルーク!そろそろお昼よ!」
「はーい!」
家の方からレスティアの声が聞こえたので、返事をして畑から戻った。
レスティアは仕事をサボ……お昼を造るために大分前に家に戻ったので、きっとご飯ができたのだろう。
「父さん、ご飯できたって!」
「一段落着いたら行くから、ルークは先に行っててくれ」
「はーい!」
ルークはお言葉に甘えて先に家に戻った。別にお父さん大好きっ子というわけではないので不自然なことではないが、若干気落ちしている父の後ろ姿をルークは見たのだった。
待ってほしいならそう行ってくれればいいのに。まあ待ってって言われても待たないけど。
別に好き好んで待つほど、父のことは好きではない。というかルークにファザコン趣味はないのだ。
もし待ってと言うのががオリヴィエだったら話は別だが……やはりルークはシスコンなのだった。
「じゃ、行ってきまーす!」
「またアイリスさんのところ?」
「うん!」
ルークはお昼を手早く済ませて、いつも通りオリヴィエに会いに行こうとしていた。
「最近毎日行ってるけど何かあったの?」
「別に~」
はっきり言って理由というほどの理由はない。オリヴィエと過ごす時間はルークにとって人生そのものと言っても過言ではない。
つまり理由なんて小さな物ではないのだ!
再び「行ってきます」と言うとルークは身体強化を使った全力でアルドーナ家までの道を走っていた。
「イフ、少し頼みがあるんだけど」
(ん?)
「一度精霊魔法の方の身体強化を試してみたいと思って」
(ええ、わかったわ)
丁度いい機会なので精霊魔法の身体強化を使ってみることにした。
普通の身体強化と重ね掛けできるなら上々だし、できないならできないで性能テストってことにすればいい。
(わかったわ)
イフからの了承をもらったため、ルークはイフに魔力を渡した。精霊魔法を行使するのに、存在の維持とは別で魔力を譲渡しなくてはならない。
譲渡の方法は様々でその時によって別れる。
まず体液を飲ませる。体液は血が一番効率的らしい。
次に繋がっているパスを通して魔力を渡す。パスは契約した時に繋がれるらしく、感覚的には糸のような物で繋がっている感じるだ。どこでも可能だが、血よりも譲渡の効率は落ちる。
他には体を触れあうという方法があるが、これの効率は血以下、パス以上だ。触れあう余裕があるのなら、血を飲ませる方が早いという話だ。
ただ、今回みたいに走りながらという時はこれが一番良さげである。血を渡す余裕はないが、体を触れあう余裕はあるからだ。
ルークは肩にイフを乗せると魔力を譲渡した。
(うっん……)
「変な声を出すな!」
魔力の譲渡を始めるとイフが色っぽい声を漏らした。
(仕方ないじゃない!我慢しても出るのよ!)
「毎日やってるんだからそろそろ慣れるだろ……」
色っぽい声の原因は渡される魔力量のせいだ。
契約前は魔法など使わなかったため、大地から存在に必要な分だけの魔力を貰っていた。
契約した今は魔力行使のために、存在に必要な分を越える量が供給されるのだ。
そして莫大な量の魔力を供給される瞬間変な声が出てしまうということだ。
本人いわく何かが別の物が入ってくる感覚がして気持ちいいらしい……如何わしいったらありゃしないな。
「そんなことよりも、身体強化頼む」
(わかったわ!)
イフの体が虹色の光に包まれる。これは精霊が魔法を行使するときに出る光だ。
(身体強化!)
イフが呪文を唱えると、虹色の光はルークの体をも包み込んだ。
「サンキュー……おっ!?」
ルークはお礼を行ってから足に力を込めると先程とは比べ物にもならないほどの速さで走り出した。自分でも驚きの声が出るくらいだ。
ただこのままではコントロール出来そうにないので、自分で掛けている身体強化LV.1を解いた。
「これくらいなら大丈夫そうだ」
自分の身体強化より強い程度の強化になった。
(どう?)
「考えるから少し待って」
ルークは走りながら思考した。
精霊魔法の身体強化は、使ってみた感覚的に、身体強化LV.5と同等くらいであろうと予想される。つまり先程は身体強化LV.5と身体強化LV.1が同時に掛かっていたということだ。
さて問題はここからだが、効果は和なのか積なのかというところである。もし和だった場合1.2倍と2倍なので効果は2.2倍ということになる。積の場合は2.4倍になる。二つの差は0.2倍と数字だけ見れば殆ど変換がないように見える。
これが全てのステータスにかかると話は別になってくるのだ。前にも述べた通り、速さはQUIだけではなく|ATK(筋力)も関係してくる。
そのため実際は0.2倍の差どころではないのだ。
そして二つ同時掛けした時、明らかに2.2倍より早く動けていただろう。つまり、精霊魔法と通常の魔法は掛け算方式であると予想される。
ルークは考えがまとまと、一人ほくそ笑む。
「ククク……凄いぞ、イフ」
(そ、そう……)
ルークはドラマに出てくる悪役みたいな悪い表情をしていたため、若干引くイフなのであった。
「それに自分でやるより楽なんだ」
(そうなの?)
「ああ」
身体強化は維持するのが難しいため、ルークは未だにLV.1しか使えないのだが、精霊魔法の場合維持するのはイフなためルークは楽をすることができるのだ。
(私は特に辛いとか思わないけど?)
「……そうなのか?」
ルークは精霊だから魔法に長けているのだと思い納得した。これは後々分かることなのだが、実際はルークの魔法の才能が乏しいだけなのであった。どれ程運が良かろうと、あくまでも吟遊詩人なのだ。仕方ないと言えるだろう。
ルークは精霊魔法を使うことで、いつもより早くアルドーナ家に着くことに成功した。
そして今後ともお世話になろうと決意した。
(……何か一瞬寒気がしたんだけど)
イフの予感は正しいのであった。
次回こそはオリヴィエちゃんのステータスです。
1話書き溜めにして予告入れようか……悩む