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精霊契約

お待たせいたしました。&予告詐欺すいません。

(という訳で教会で歌うことになった)

 

(という訳でって……いろいろすっ飛ばすわね)

 

 ルークはいつも通り畑に来て精霊たちと話していた。精霊達といっても、主に自称大精霊とだ。それ以外は近くでふわふわ飛びながら遊んでる精霊が殆どで、頭の上で寝てる精霊が一人という感じだ。

 

(ふわぁ……)

 

 ……相変わらずこの子はいつも眠そうで気だるげだ。やる気の()の文字もない。常に寝ている。ルークは密かにニー子と呼んでいた。

 

 

(それにしてもやっぱり一人死んだのね)

 

(気付いていたのか?)

 

(まあ私ほどの大精霊になればね。命精の量がおおよそ一人の量ではなかったし、それに二回目ってのもね……)

 

(二回目……死んだ時ってことか?)

 

(そういうことよ)

 

 ルークが丁度家に入った時に見た精霊のことだ。二回目の命精たち。一度目に生を運び、二度目に死を運ぶのだ。

 

(で、どんな歌を歌うのよ?聞かせて!)

 

(別にいいが後で俺の質問に答えてもらうからな!)

 

(なんの質問かによるけどいいわよ)

 

 ルークはずっと気になっていたことを聞けるチャンスをゲットして「よしっ!」と意気込むと、目を閉じて気持ちを落ち着かせた。

 歌う時はいつもこうだ。目を閉じて集中し、歌うことと聞くことのみに全てを捧げる。それが響揮時代からの歌い方だ。

 

 

 

(さすが吟遊詩人ね……)

 

 歌い終わると精霊がそんな感想を述べた。周りを見るとさっきまで騒いでいた他の精霊たちも聞き惚れているようで、静かにうっとりとしていた。

 約一名は相変わらず寝ているが、吐息が聞こえなくなったことから今まで以上に熟睡しているのだろう。

 

(まあこんなところだ)

 

(これなら命精が誉めるのも納得ね……)

 

(命精が誉めるってそんなに凄いのか?)

 

(凄いなんてものじゃないわ。あいつらは風精よりも動き回らないといけないから、歌はあまり聞かないようにしてるのよ。その命精達を虜にしたんだからあなたの歌は本物よ!他の吟遊詩人でもこうはいかないわね)

 

(お、おう)

 

 よく分からないが誉めちぎられたことだけはわかった。常に命精は移動してるから歌を聞く暇がないということだろうか?誉められた側としてはあまり実感がわかない。 

 まあ大精霊の太鼓判もいただけたことだし、よしとしよう。

 

(満足したならこっちの質問に答えてもらうぞ?)

 

(今なら何でも答えて上げるわよ?)

 

 言質は取った。一年間共に過ごして知ったが、精霊は嘘をつけないのだ。なんでも悪いことをしたら精霊ではいられなくなるらしい。不便なことこの上ない。遠慮はしないけども。

 

(じゃあ大精霊ってどういう意味だ?精霊にもランクとかあるのか?)

 

 ルークが気になっていたのはこの事だ。自称大精霊を名乗るのだ。それなりの理由があるに決まっている。

 

(そうね、明確にランクという物はないわ。ただ大精霊かどうかは自我が目覚めるかどうかによって変わるわね)

 

(自我が目覚める?それってもともとは自我が無いような言い方だが)

 

(その通り。もともと精霊に自我なんて無いのよ。精霊は長く生きることによって自我が生まれるの。自我のない子は、そうね……あなたの周りを飛んでいる元気な子達よ?)

 

 ルークは視線を外して周りを見た。

 常にハイテンションで疲れないのかな?と心配になるくらい元気な精霊たちが飛び回っている。確かに皆同じような事ばかり言っている。

 これが自我がないということなのだろうか?

 

(でも精霊に寿命とかあるのか?)

 

(寿命とは違うわね。精霊は季節や環境によって数が変わるのよ。冬なら火精が減るし、水が減れば水精も減るわ。減るということは精霊が消えるということ。それを生き残ってきた精霊を大精霊と私は呼んでるわ)

 

 精霊にも生存競争みたいなのがあるのだろうか?いやその時は自我がないから競争にならないのか。

 

(以外と苦労してるんだな)

 

(まあね。まあ大精霊にまでなれば消えることは殆どないわ)

 

 自我があれば競争に負けることはないと。つまりそういうことだろう。生き残りたいという意思があるのとないのとでは雲泥の差だからな。

 

(ちなみに、あなたの頭の上で寝てるその子も大精霊よ?)

 

(え!?ニー子が!?)

 

 確かに言われてみれば元気に遊ばず寝てばっかりいる。自我が芽生えてやる気がなくなったとか、そんな感じだろうか?

 

(ニー子って……ふふふ)

 

(何かおかしかったか?)

 

(いやね、精霊に名前つけてる人って初めて見たもんだから面白くて……ふふふ)

 

 名前をつけるのはそんなおかしい事なのだろうか?精霊なんて一杯いるのだから名前をつけないとわからないではないか。まあ全部考えるのは骨が折れるから特徴的な子だけだけど。

 つまりニー子しか付けてない。

 

(私にも名前があるのかしら?)

 

 ずっと話してるし、この大精霊にも名前をつけた方がいいよな。かと言ってすぐに名前が思い浮かぶ物でもないのだ。ニー子はニートみたいだったから思い浮かんだだけで……

 とりあえず考えるだけでも考えてみるか。

 

 ルークは自分の持てるセンスをフル活用して名前を考えるのだった。だがそんなすぐに思い付く分けもなくこの手のプロの手を借りる事にした。

 

(歌お、オリヴィエ。今いいか?)

 

(はい!)

 

 ルークはオリヴィエに事情を説明して名前を考えてもらうことにした。

 オリヴィエは、この場合歌織はと言った方が正しいだろうか。神話やアニメなどが好きでいろんな本を読み漁ったりしていたのだ。

 響揮も一緒になって見ていたのだが知識の量は非にならない。

 

(その大精霊さんは何の精霊ですか?)

 

(赤色だから多分火だと思う)

 

 ルークはちらっと大精霊の方を見て答えた。

 

(では火の精霊で有名なイフリートから取ってイフとかどうですか?)

 

(おおそれっぽいな!ありがとう!)

 

(いえ、御兄様の頼みですから!)

 

 ルークは再度お礼を言ったあと、大精霊の方に向き直った。

 

(それで決まった?)

 

(ああ!イフでどうだ?)

 

(イフね……いい名前ね、気に入ったわ!)

 

 イフの興奮ぎみな声が聞こえた。すると魔力がごっそり抜かれていく感覚がした。

 MPを確認すると1800が800になっていた。何故か1000も減っている。半分以上も一気に減ると疲労感が凄い襲ってくる。今も肩で息をしている状態だ。

 

 こんなことになった原因と言えばやはり一つしか思いつかない。イフに名前をつけたことだろう。

 

 イフの方を体が光に包まれていた。もともと光だったのだが、さらに眩しくなっていると言った方がいいだろうか?

 

 光が収まるとイフの姿が見えるようになった。

 

「なっ……!?」

 

 イフは手のひらサイズの背中に羽の生えた女の子になっていた。

 火の精霊であることがわかるように赤色の髪、赤色の眼をしている。スタイルは……言わないでおこう。本人は気にしてないと思うが可哀想だ。

 壁なんて口が避けても言えない。

 

「これは一体?」

 

 本人も何が起きたのか気づいていない。

 

「というか普通に話せているけど、どういうことだ?」

 

「私もこんなこと初めてだからわからないわ。」

 

 お互いわからないことだらけだが、ルークは1つだけ安心している事があった。

 イフが服を着ていることだ。服はドレスのようなものに、ニーソックスを着用して、肘位まである手袋?のような物を着ている。首にはチョーカーもある。そこそこお洒落だ。

 その手の人が見たら興奮しそうな服装である。

 

 格好はどうであれ、裸でないことは嬉しかった。

 例え精霊であったとしても見た目が女の子の裸を見るのはあまりよろしくない気がするのだ。

 というかオリヴィエに申し訳ない。その辺イフは着ていたのでありがたかったが、服はどこから持ってきたのだろうか?

 

 

「多分名付けが原因でしょうね……」

 

「お、おう。そうだな」

 

 ルークが考え事をしていると急にイフが話しかけてきた。服のことを考えてもどうせ分からなさそうなので考えるのをやめた。必殺思考放棄である。

 

「名前をつけた時、魔力がごっそり抜かれたからその時であるのは間違いないと思う」

 

「でもあなた私以外にも名前つけてたわね?」

 

「だよな……そこがわからない」

 

 ニー子にも名前をつけているのだ。大精霊というのが条件であったとしても、当てはまるのだ。となると他の条件があることになるが……

 

「もしかして名前を受け入れたかどうか、とかか?」

 

 他の要因があるとしたらこれくらいしか思い浮かばなかった。イフは話してたから受け入れてくれたけど、ニー子はずっと寝てるから受け入れてくれてないのだ。

 

「そうね、今度試しましょう」

 

「そうだな。今は魔力的に無理だがこれは要検証案件だな」

 

 時間的にもそろそろ午後なのでオリヴィエに会いに行きたかったというのもある。

 

「それと、この体になってわかったんだけど……」

 

「なんだ?」

 

「精霊とは別物になったのか、大地から魔力をもらう必要がなくなったのよ」

 

 精霊は存在するために魔力を大地からもらって生きているのだ。季節によって各精霊に分配される量が変わるから季節が変わると精霊が消えるということがあるらしい。

 これは叡智の権能の知識だ。

 

「それってつまりどういうことだ?」

 

 大地からもらう必要が無くなるというのが凄いことなのは何となくわかるのだが、それで何が変わるのかは分からなかった。

 

「土地に縛られない。自由に動き回れるってことよ!」

 

「え?お前ら結構自由な気がするんだけど……」

 

 飛び回っている精霊達を見たらそんな感想しか浮かんでこない。

 

「それは季節や自然があるからよ。火の精霊である私は寒い地域に行けなかったの。けど今は」

 

「行けるってことか。なるほどな」

 

 でもさすがに何のデメリットもなくそんな事が可能なのだろうか?今活動するのに使っている魔力はどこから来ているのか、という話になる。

 まあ大体どこから来ているのは予想が付く。

 

「でも俺の側からあまり遠くに離れられないんじゃないか?」

 

「……やっぱりそう思う?」

 

「だってその魔力俺のだろ、どう考えても」

 

 名を付けることによって大地の魔力をルークが肩代わりしているのだ。

 

 そういえば契約欄というのがあった気がする。

 ルークは叡智の権能で確認する。

 

 契約

 ・火の精霊〝イフ〟

 

 

 予想通りイフの名前があった。

 魔力を供給する代わりに何かお手伝いでもしてもらうのだろうか?吟遊詩人だから演奏中の演出とか、精霊魔法のことだろうと予想する。

 

「まあそれでも消えることに怯える必要がなくなったのは嬉しいわ!」

 

「そりゃよかったよ」

 

「これからよろしく!」

 

「こちらこそ!」

 

 きっかけは思いがけないことだったが、ルークは仲間を一人ゲットしたのだった。

最初はルークの描写のみの予定でしたがまさかこうなるとは自分でも思ってませんでした。

擬人化?はする予定でしたが。


次回こそ永訣の儀を行いたいです

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