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アンコール

昨日は疲れすぎて寝落ちしてまして更新できませんでした。すいません


 ルークが泣き止んでから少しして、教会から二人が帰って来た。

 扉の開く音がした瞬間飛び出した人が一名。それは勿論妹依存性である響揮改めてルークである。

 思考共有のおかげで声?のようなものは聞こえていたのだが、しっかりと元気な姿を見ないと完全に安心はできない!

 ルークは歌織に対してのみ凄く過保護なのであった。

 

「ルーク君、ごめんなさい。レスティアさんを呼んでもらえますか?」

 

 何となくアイリスの気持ちを察してか、珍しく歌織以外のことをルークは優先した。様子を見るくらいこれからいつでもできるというのもある。

 

 ルークは走って三人の子供が眠る子供部屋へと行った。三人が寝ているのは泣き疲れだ。

 

「アイリスさんが読んでる」

 

「……」

 

 レスティアは何も言わずにルークに言われた通り玄関に行った。

 

「レスティアさん、すみません」

 

「いいえ……」

 

 アイリスは赤子をレスティアに渡すと自分の部屋に入って行った。アイリスが何をしているのかはだいたい察しがつく。

 

 もう一人の子供の死について泣いているのだろう。死なせてしまってごめんねと。

 でも子供の前で親が泣くわけにはいかないから、歌織をレスティアに渡して自室に行ったというわけだ。

 それをルークの言葉だけで悟った母さんは何も言わずにただただ歌織を抱いていた。

 

 

 ○

 

 

「ありがとうございます」

 

 アイリスはレスティアから歌織を受けとって軽く頭を下げた。

 

「これくらい別に……それにルークもその子と一緒にいれて嬉しそうだったし」

 

 レスティアはこちらを見てニヤッと笑った。否定する気などこれっぽっちもないので、堂々と笑い返した。

 好きな女の子と一緒にいて嬉しくない男子がいるだろうか!いいやいない!

 例え外見が違っても中身は歌織その人なのだ。それだけで愛する理由には十分だと思う。

 

 転生したことにより兄妹ではなくなったが、その程度二人からすれば些細な違いだった。

 もともと関係性も兄妹というよりかは恋人に近い。というか恋人のそれだったのだ。別に兄妹であろうとなかろうと関係ないのである。

 

(御兄様……私も御兄様のことお慕いしております!)

 

 歌織が照れているのが伝わった。歌織の言葉だと照れくさくなってしまうのは何故だろうか?

 好きな女の子補正というものは怖い。

 

「それでその子の名前は決まってるの?」

 

「はい。この子の名前はオリヴィエにしようと思っています」

 

「いい名前ね」

 

 オリヴィエという名前は、神代にいた人を安息に導く天使の名前から取ってきたそうだ。戦争で死に行く人々に安らぎを与えたと叡智の権能が教えてくれた。

 共に生まれ、死んでいった男の子のことを思って付けられた名前なんだと思う。

 

 ルークが一人で納得していると、アイリスはこちらの方を向いて、

 

「ルーク君も歌ってくれてありがとうございます。あの歌を聞いたおかげか今は心がスッキリとしています」

 

「大したことはしてません」

 

 ルークは謙虚に答えたその時、不自然な点に気づいた。子供が謙虚に答えるというところが不自然な訳ではないぞ!それはそれで不自然だけど。

 

「教会まで離れていたのに聞こえたんですか?」

 

 ここから協会まで身体強化を使っても30分はかかるであろう場所に教会は存在している。

 つまりかなり遠い距離なのにも関わらずルークの歌が聞こえたということになる。

 

「ええ。頭の中にルーク君の声が響いてきて、歌に込めた想いが沢山伝わってきました」

 

 ルークは真面目に推理する。頭の中にという段階で念話的な物であることは容易に想像できる。あとは謎そうなったかだが、ルークは歌っている時のことを思い出した。

 確か魔力を使った感覚があった。それではないのか?というのがルークの予想である。

 

 そしてそれは正解でもあった。

 

 吟遊詩人の能力には歌や演奏に魔力を込めることでいろんな事象を引き起こすというものがある。

 それは歌う曲によって効果が変るのだがルークが歌ったのはいわゆる追悼の歌だ。

 

 追悼の歌の効果はいたってシンプル。悲しみの膨張、そして払拭だ。

 何かを失った悲しみというのは簡単に消し去れる物ではない。だからこそ膨張させて、何かしら形にしたあと、払拭するのだ。形としてはやはり涙が多い。

 払拭したことは泣き終わった人の表情を見ればよく分かる。すぐ側で泣いていた四人や今のアイリスのように晴れやかな表情となるのだ。

 

 人の意識を操作してると言えば聞こえは悪いかもしれないが、ずっとくよくよしていても何も始まらない。これは言わば、乗り越えるための時間の削減なのだ。ということにしておこう。

 

 実際のところ、歌を送ったら魔力が込もって、その結果こうなったってだけだ。要は偶々なのである。

 歌織……ではなくオリヴィエのためにも暗い顔してる人ばかりなのは嫌だったって思いもあるので一石二鳥だ。一石二鳥の使い方間違ってるかもしれないがそこは気にするな。

 

 後半は勝手に自己肯定していると、

 

「ルーク君、今度の【永訣の儀】であの歌を歌ってもらえませんか?」

 

 永訣の儀とは日本のお葬式のようなものだ。教会で行われ、死んだ人を灰にする儀式だ。

 そうしないとグールや、ゾンビみたいなアンデットになってしまうそうだ。

 この世界では生まれ変わり、つまり転生というのが信じられているのだが、アンデットになると転生はしなくなるらしい。なんでも魂がなんとかかんとかってスピリチュアルな話だった。

 うむよくわからん。

 

 まあそこで歌を歌うのっていいことなのかがいまいちよく分からない。葬式でのお経のようなもの?さすがにお経に失礼だ。

 

 ルークが答えを渋っていると、

 

(御兄様の歌、私も聞きたいです!先程のは直接聞けなかったので、今度こそ生で御兄様の歌を聞きたいです!)

 

 歌お……オリヴィエからアンコールを貰ってしまった。

 

「やります!」

 

 即決である。驚くべき決断の早さ。まるで世界は妹を中心に回っているとでも言いたげな判断基準。

 実際ルークの頭の中の優先順位は、

オリヴィエ>自分>身内>その他、だった。

 自分よりも順位の上の存在。それは絶対的な判断基準を意味する。オリヴィエがカラスは白と言えば白なのだ。それほど絶対的な存在なのである。

 

「まあ!ありがとう!」

 

「いえいえ!」

 

 オリヴィエの為ですから!とは口に出さないルークであった。一応(・・)空気は読めるのだ。

 

(私の我儘に付き合わせてしまってすみません……)

 

 頭の中に申し訳なさそうに謝る声が響く。

 

(別に気にしなくてもいいよ。俺も歌おうと思ってたから!)

 

 さっきまで悩んでた癖に、呆れて物も言えない。ルークのフォローはきっと人々を白い目にしたことだろう。

 

「儀式は夫が帰って来た日、または次の日に行います」

 

「わかりました!」

 

 後二週間ほどあるということだ。それだけあれば練習するのには充分な時間だ。

 オリヴィエの為になるとルークは本気だった。目が燃えていた。真実を知らない人はやる気に満ちているように見えるのだろう。

 

(私、御兄様の歌、凄く楽しみにしてます!)

 

(任せろ!)

 

 やる気の中身はこんな残念なことなのだが……

次回は永訣の儀です

あと、そろそろ物語を進めないと主人公最強タグが全く意味をなしてない?と思うのでこっからはかなり巻きでいく予定です!予定です

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