模擬戦闘
初めての戦闘描写です。頑張りました
……とうとう僕の番がやってきた。
学園内での戦闘にはある物の着用が義務付けられている。
模擬戦闘用身代
首からかけるネックレスのようなものだが闘技場内に限りこれを付けている者に一定以上のダメージ。
もしくは意識不明に陥った場合過剰なダメージを代わりに受けてくれる。
これがあるため、生徒たちは何の心配もなく戦闘を行えるのだ。
相手の生徒は平均的な成績で、火属性を得意としている。
「魔盲相手かよ。つまんね。」
「よろしくお願いします。
「両方とも準備はいいな?始め!!」
その合図とともに全速力で相手へと走る。
距離をとってひたすら魔法を避けていてもこちらの攻撃手段は剣のみ。
攻撃は届かない。だからまずは相手との距離をどれだけ早く詰めることができるか。
この剣が届く距離に相手を仕留めれば。勝機はある。
「またそれかよ。いい加減学べよなぁ!!焔よ 敵を穿て!フレアバウンド!」
魔法の強さは基本的に四段階に分かれている。
序階魔法。
汎階魔法。
終階魔法。
越階魔法。
―――フレアバウンド。
炎でできた球を指定方向へと打ち出す序階魔法。
その直線的な軌道はわかりやすいが、全力で走っていた僕にとってはとてつもない速さに感じる。
だが、それは百も承知。いまの状況の想定は今までに幾度となくしてきた。
左足を軸として右回りに体を180度回転させ、今度は右足を軸として回転させ前を向く。
走っている勢いをなるべく殺さないように進行方向をずらす。
そうしてなんとかフレアバウンドを回避しつつ敵への間合いを詰めることができたが、それでもまだ剣が届く範囲には届かない。
「魔盲が勝てるわけないんだからさぁ!さっさとやられろよっ!劫火の獣よ 吠え轟かせ フレアハウル!」
っ!!来た。僕にとって最大の難関が。
―――フレアハウル
扇状に炎の放つ汎階魔法。
範囲攻撃系の魔法といえばまず最初にこれが上がるだろう。
この魔法を避ける方法が僕にはない。かといって防ぐ方法もあるわけがない。
故に、僕が取れる手段はたった一つ。自身の体を顧みず、たった一つの勝機を。
たった一本の糸をこの手でつかみ取るために。自らその炎の中へと飛び込む。
それしか僕には残されていない。
炎が近づくにつれて空気が熱くなりそれを吸いこんだ喉が焼けていく。
熱気によって肌も焼け酷く痛む。だが止まれない。止まってはならない。
止まったら。止まってしまったら。きっと僕は自分を誇りには思えないから!!
そして僕はその身を炎の海へと投げ出した。もはや呼吸すらも許されない。
痛みで意識が飛びそうな中、必死に足を動かす。
――――――届けっ!!!!
そしてとうとうフレアハウルの炎を抜け出した僕が目にしたのは、1メートル程先にある一発の火球だった。
(あっ……)
そこで僕の意識は途絶えた。
* * * * * * * * * * * * * *
意識が戻るとまず最初に気づいたのは薬品の匂いだった。
どうやら本日二度目の目覚めは学園内の治療室のようである。
「…負けちゃったかぁ。」
フレアハウルを抜けた先にあったのはおそらくフレアバウンドだろう。
僕が強行突破してくるのを見て抜けてくる先に撃たれたのだ。
「おや。目が覚めたか。」
体を起こし声がした方向へ顔を向けると。
そこには一人の男性がいた。
治療室の主であるアルバ先生である。
こんな戦い方をしているせいでアルバ先生には何度もお世話になっている。
彼は僕を魔盲扱いしない。というよりも生徒全員に粗暴な扱いをしているように思える。
それを本人に聞いてみたところ。
「私にとっては魔盲も他の生徒も対して変わらないさ。赤ん坊がナイフを持ったとしてそれは所詮赤ん坊だろう?むしろ持っているほうが自分にとっての危険もあがるというものさ」
ということらしい。
壁に立てかけてある時計を見ると下校時間をとうに過ぎていた。
「にしても今回は酷かったな。お前一体何をしたんだ?」
聞くところによると全身火傷に気管までやられていたらしい。
「フレアハウルに突っ込みました。」
「アホか?」
話をしながら服装を整えて治療室を出る。
「ありがとうございました。」
「はいよ。おだいじにー。」
本人は一切そんなことを思ってないような労りの言葉を背に僕は教室へと向かった。
教科書類や鞄はまだ教室に置いてあるはずなのでそれを取りに行くためだ。
悲しいことに治療室から教室までの道のりはもう何回も通っているのでいくら広いこの学園だとしても迷うことはなく教室へとたどり着いた。
ドアを開け僕の机のほうを見るとその上に座っている人物とそれを取り囲むように立つ数人の生徒がいた。いわずもがな朝僕に声をかけた生徒とその取り巻きだ。
「おいアストラルおせぇよ。」
彼が座っていた机を降りその机を蹴り飛ばした。
ガンッとした音が教室へと鳴り響いた。
「着いてこい。」
そういうと彼はいつも僕をリンチする場所へと歩いていく。
せめてもの反抗をと思い、そのまま止まっていると彼の取り巻きに背中を思いっきり押され、怒鳴られる。
「さっさとしろよ魔盲風情がぁ!」
観念して僕は彼の後ろを追うようにに歩を進めると、取り巻きたちは僕を挟み込み逃げられないように歩く。