経験
次のスライムを探している間、ガスパルに経験値について聞く。
すると、そんなことを知らないのかという感じで、「経験値を獲得するとレベルがあがり、それに伴い強くなる」とぶっきらぼうに教えてくれた。
ま、その程度のことは知っていたが、俺が聞きたかったのは複数で相手を倒した時のことだ。
実際、今回はコボルト3匹と一緒に倒したわけだが、その場合経験値はどうなるのかと聞くと、有効打を与えた者には皆同じに分け与えられると教えてくれた。
そんなことを話していると、次の獲物を見つけた。
今回も前回同様に、3匹と一緒に四方から攻撃を加える。
考えようによってはスライムに4人(匹)がかりで攻撃をしているわけで、あまり恰好の良いものではないが、恰好をつけている場合ではない。
2回目なので、連携を少しうまくなったようで、さっきより短い時間で倒すことができたような気がする。
すると、≪経験値3を獲得しました。経験値が一定に達しました。Lv1からLv2になりました》という声が頭に響く。
俺が怪訝そうにしているのを見て、ガスパルが「おまえもしかしてレベルアップしたのか?」と聞いてくる。
「そうらしい」俺が自信なく答える。
「スライム2匹でレベルアップは早すぎる。普通は3匹だ」
そんなことを言ってきたが、俺に言われても知らないとしか言いようがない。
何だかんだ言って、その日は4匹のスライムを倒すことができた。
椀を取りにいかせたコボルトにもかろうじてメンツがたった数字だ。実際コボルトたちもかなり喜んでいる。
一日でこれだけの数のスライムを狩れたことはないのだろう。
4匹を倒し終え、あたりも暗くなろうとする頃、≪『剣術基礎 握りLv1』を習得しました≫という声が頭に響いた。
以前も「毒耐性」という声が頭に響いたことがあるが、今の声はなんだ。
俺がそんなことを考えながら呆けていると、ガスパルが脇で「ようやくか・・・」とつぶやく。
全く理解できていない俺の顔をみて、「今お前が獲得したのが、スキルというものだ。これがあると能力に大きな補正がかかり、今までできなかったことができるようになる。」と説明してくれた。
「毒耐性のレベルがあがれば、それだけ毒に強くなる。お前がトイレに入っている時説明したと思うが」
それを聞いて確かにそんなことを言っていたような気がするが、俺はあの時はそれどころではなかった。そんな時に説明されてもわかるかとあきれ返ってしまった。
こういう奴だったなと思いながら「『剣術基礎』とは何だ?」と聞く。
「本来剣術はかなり修行してやっと剣術Lv1を習得する。数ケ月から、下手をすれば年単位になることもある。しかし、そこまで面倒を見るのは大変だ。そこで、バスティア様が考案されたシステムで、この森の中では、剣術を『握り』『振り』『足さばき』と分解して習得できるようになっている。それぞれがLv1になると、剣術Lv1を獲得できるというわけだ」
それを聞いて俺は何と合理的なシステムだと、本当に感心した。
ただ、問題はこのガスパルだ。俺に対する「指導」を見てもよくわかるが、どうしてそういうことを最初に説明してくれないのだろう。
それもなしに、最初少し教えてあとは自分で勝手にというのは不親切すぎるような気がする。
システムがすばらしくてもそれを運用する人間がダメだと全く機能しないという典型的な例だと勝手に思ったりした。
ついでにスキルはどうやって見るのかと聞いてみる。
すると「『ステータス』と唱えてみろ」とこれまたぶっきらぼうに言われた。言われた通りにすると、目の前に以下の表示が現れた。
【Lv】 2
【HP】 10/10
【MP】 8/8
【スキル】打撃耐性Lv1 毒耐性Lv1 (剣術基礎 握りLv1)
【称号】 コボルトの村長1
【加護】(破壊神の息子)
打撃耐性については、全く記憶がない。「父親」に殴られた時にでもついたのかと思ったが、頭内アナウンスはなかった。
そこで、はたと思いついたのが、伯爵夫人に絡んだときだ。
あの時は全く記憶をなくしていたが、体中アザだらけだった。おそらくあの時に身に着けたのだろうと思いあたった。