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破壊神の息子  作者: 江川 凛
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食事

 途中までお読みいただいた方には大変申し訳ありませんが、活動報告にも書きましたとおり、3話より再構成させていただきます。

 何卒宜しくお願いいたします。

 するとガスパルは「怒らないのか?」と聞いてきた。

 俺は確かに腹がたったが、その対象は目の前の男ではなく、見ず知らずの者が出してきた食事という恩恵を何の疑いもなく食べた自分に対してだ。

 バスティアに恰好良いことを言っておきながら何の様だ。


 俺の反応を見て、ガスパルは続ける。

 「聞いていると思うが俺の名はガスパル。さすがはバスティア様が特別に手を貸せと言っておられただけのことはある」


 そして、続けて「これからすぐ訓練にはいる。剣は使ったことがあるか?」と聞かれた。

 奴隷だった俺は、主人に歯向かえないように、武器の練習など間違ってもさせてもらえなかった。

 しかし、何も俺が元奴隷だということを言う必要はないので、「ない」とだけぶっきら棒に答えた。


 「まじか・・・今どき武器の一つも使えないとは、農民か何かだったのか?」

 「ま、そんなところだ・・・・」とお茶をにごす。


 「ま、いい。とりあえず、剣を握ってみろ」と言われ、ガスパルから渡された剣を持つ。

 正直結構重い。「振れるか?」と聞かれたので、意地を張って、「振れる」と応えるが、とても様になっているとは言い難い。


 「本当に持ったことがないのだな・・・」と言いながら持ち方から指導される。

 小指、薬指、中指の順に力を入れ、親指と人差し指は添えるだけと教わる。しかし、とても重たくて全くできない。


 「最初は難しいかもしれないが、それが基本だ。剣の握りを確かめ、上から下に振る。できるまでやってみろ」と言って小屋の中に入っていく。どうやらこれ以上教える気はないようだ。

 一人で練習しながら、これで手を貸しているつもりかとも思ったが、今更行く場所もないし、何より強くなりたかったから、ひたすら剣をもって振るということを繰り返した。


 手の豆が痛い。しかし、他にやることもない。

 暗くなった頃にガスパルがやってきて、「飯だ」という。「毒入りか?」と聞くと、「むろん」と返ってくる。


 前回のことを思い浮かべて躊躇していると、「すでに毒耐性レベル1を身に着けているだろうから、前回ほどひどくはならないはずだ。それに、レベルがあがると、何の問題もなくなる」と言われた。


 飢え死にするよりはましだと思ったので、小屋の中にはいって用意されている食事を食べると案の定、トイレから出ることができなくなってしまった。


 しかし、確かに前回よりはマシだ。そんなことを考えていると、ガスパルが、「外では毒とわかっていても食べざるを得ない時もあれば、毒と知らず食べてしまうこともある。毒耐性があるとそれだけで生き残る可能性が高くなる」とトイレ越しに声をかけてきた。


 俺はいきなりでびっくりすると同時に、こんな時にという恥ずかさから、「そんなことはわかっている。さっさとあっちに行け!変態!」と怒鳴っていた。


 次の日、俺が村長に就任したというコボルトの村を見に行く。コボルトは何度か見たことがあるが、一言で言ってしまえば、「小人」だ。

 案内された村にはお世辞にも可愛いと言えない、むしろ醜悪と言った方が適切な緑色をした小人が30匹程いた。


 彼らははっきりって弱い。とても戦闘には向いていないので、俺の知っているコボルトは人間の手伝いをしたりしてわずかばかりの報酬を得て生きているものもいた位だ。

 ただ、ここがどこだがわからないが、バスティアと関係のある土地で間違いないだろう。

 

 だったら、大勢の人間がいるとは思えないので、人間の手伝いはまず無理だろう。

 となると、狩りで生計を維持しているのかと思ったが、その時気づいたのがコボルトが皆明らかに栄養状況がよくないことだった。


 そのため、普段どうやって狩りをしているのか見せてもらうことし、狩りに同行する。

 知能は明らかに低い。まともに話ができるのが2匹しかいない。

 とりあえず案内されたところに向かうと、どうやらスライムを狩ろうとしているようだった。


 スライムは、あまり強い個体ではない。

 ただ、ドロドロした液体の体を持ち、物理攻撃が通りにくい。倒すには、体の中にある核を壊せばよいのだが、コボルトたちが滅多やたらと棒を振り回して核をつぶそうとしている。


 連携も何もあったものではない。

 かろうじて(運よく核にあたり)スライムを倒すと、スライムが崩れ、体液がこぼれだす。

 するとコボルトたちは、そのドロドロした体液を回収し始めた。

 村に帰ると、それなりの数の木の実を採ってきたものもいる。ただ30人分にしては明らかに少ない。


 どうやら彼らが食べることができるのは、このスライムの体液と木の実だけらしかった。

 それを30人で分け合って食べているわけだから、確かに奴隷だった俺と同じで、栄養状態は良いとは言えないのは当然と思った。

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