表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
約束を果たすために  作者: 楼霧
7/309

第七話 魔法講座 後編

前後半とか分けて投稿するなら、タイトルに話数入れない方がよかったかな

と思いつつ、まあ、そもそもが見切り発車なので現状維持の方向で。

「さて、属性の話はここまでにして、次は魔法の種類と特性について話をしよう」と言いながら、エリオットはカバンから薄汚れた布切れを取り出し、黒板を拭った。


「まず、魔法の種類は大きく分けて攻撃魔法、補助魔法、治癒魔法の三種類だ。攻撃魔法は単純に使用した属性による攻撃だから説明は省くね。補助魔法は、身体能力を引き上げることが出来る魔法で属性ごとにその効果が違うんだ」

エリオットは、縦にした黒板に、上から箇条書きに「風は素早さ、火は筋力、土は防御力、水は魔法耐性、光は体力、闇は魔法力」と書いていく。

「そしてこれらは、自分だけでなく、味方にも使用することが出来る。また、その効果を反転させることで敵の能力を下げることも出来るんだ。あと、さっき属性で話した魔法障壁はこの補助魔法になるね」

・・・なるほど。補助魔法はいわゆる、バフ、デバフということか。


「次に、治癒魔法だけど、実は治癒魔法は全属性で扱うことが出来る。ただし、その回復力は属性によって異なるんだ」

エリオットは、黒板の書いた文字を消して、上から「光、水、風、土、火、闇」と書き、その横に上向きの矢印を引いた。

「光属性の治癒魔法が最も回復力が高く、それから順番に効果が落ちていくんだ。そして、一番悪いのは闇属性になる。二ヶ月前、君が負ったような瀕死の傷を治すのは光属性でしか無理だったろうね。あの場に光属性の治癒魔法を使えるソフィアがいて良かったよ」

「なるほど。ソフィア姉様が光属性を使えたから俺は助かったんですね。ソフィア姉様、改めてありがとうございました」

「うふふ、どういたしまして」


「さてと、魔法の種類と特性で、何か質問はあるかな?」

「質問は特にないのですが、今のお話を聞いて一つ疑問に思っていたことが解決しました」

「疑問に思っていたこと?」

「はい、実は、修行で何回か光属性の治癒魔法を使用していて気が付いたのですが、回復する前と回復した後では、回復した後の方が、元気にというか体力があり余る感じがするというか。とにかく、回復する前よりもたくさん動けるようになっていたので、なぜかな?と思っていたんです」


俺の話を聞いたエリオットは、眉間にシワを寄せながらソフィアを見る。


「ソフィア?もしかして君、魔力消費について、きちんとルートに教えてない?」と聞かれたソフィアは気まずそうに視線をそらす。顔にまずいって書いてある気がする。


「はぁ、ダメだよ、ソフィア。きちんと魔力消費の説明はしないと」

「あれ?でも、ソフィア姉様から、魔力を使いすぎると体調が悪くなったり、気絶するという話は聞きましたよ?」

「それも、大切なんだけどね。その魔力を使いすぎないための魔力消費のコントロールが必要という話さ。さっき、治癒魔法を使用して体力が上がったという話だったけど、普通は、治癒魔法を使って補助魔法が掛かることはないんだ」

エリオットの説明によると俺は、治癒魔法を使うたびに全開で魔力を垂れ流しにしていたということらしい。治癒魔法で消費しきれなかった過剰な魔力の分、体力上昇の補助魔法が掛かってしまっているそうだ。

・・・なんというだ。それは確かに重要な話だ。ソフィアさんあきらかに説明が足りてないよ。


「まったく・・・」

「うぅ、すみません」とソフィアは小さくなっている。あまり見たことのない光景だ。いつも元気で明るい感じだからとても新鮮である。そんな、ソフィアを見ていたら「あまりジロジロ見ないで」と小突かれてしまった。・・・はい、すみません。


「まあ、今、怒っても仕方ないか。それじゃあ、最後に魔法の使用と魔力消費の話をしよう。といっても、魔法の使用はそんなに難しい話ではないんだ。魔法の使用で一番大事なのはイメージすること。何をどうしたいのかということをハッキリとイメージして魔力をマナに捧げる。そうして、魔法を使うことが出来るんだ」

「確かに、難しい話ではなさそうですが・・・。けど、マナに愛されていることが条件であることを除けば、それだと誰でも魔法を使えるようになりませんか?」

「そう、それだけなら誰でも魔法を使えただろうね。けれど、そういうわけにいかないのは、魔力をマナに捧げる、つまり、魔力を消費するということが出来るか出来ないかなんだ。実は、誰もがみんな、多少なりとも魔力を持って生まれてくる。けど、多くの人は、自分の魔力を動かすことが出来ない。それは、魔力を動かす才能を生まれ持っていないためだ」

魔法使いになれる条件、それは、魔力を動かすことが出来る才能を生まれ持っていること。そして、マナに愛されていることだそうだ。どちらかの条件をクリア出来ていても、もう片方をクリア出来ていなければ魔法は使えない。だから、魔法使いはそれほど多くないと話してくれた。


「じゃあ、ちょっと魔力の動きを感じてもらおうかな?」と言いながら、エリオットは椅子から立ち上がって俺の背中へと移動し、俺の両肩に手を置いた。


「目を閉じて、リラックスして。今から私の魔力をルートへ流すからそれを感じ取るんだ」

俺は目を閉じて、両肩に意識を集中する。すると、両肩から何かが入り込んでくる感覚がする。


「両肩から何かが入りこんでくる感覚があります」

「よし、じゃあ、その感覚をそのまま、自分の全身に行き渡らせるように動かしてみるんだ」

俺は、両肩から入ってきた感覚を心臓から左腕、左わき腹、左足、右足、右わき腹、右腕と順に動かし最後は心臓あたりへと戻ってきたところで「動かせました」と声を出した。


「それじゃあ、最後だ、それを私に戻すように動かしてみてほしい」

俺は、心臓あたりへと持ってきた感覚を両肩へ、そして、両肩に置かれている手にその感覚を返すことをイメージしながら、自分の身体から追いやった。

「なるほど、たったの一回で治癒魔法を使ったと聞いたことだけはある。正直、驚いたよ」と言いながら、エリオットは両肩に置いていた右手を上げて、俺の頭を撫でてくれる。


「それほど、凄いことなのでしょうか?」

「そうだね。今、返してもらった魔力だけど、きっちりと私が流した魔力と同じ量だけ返ってきたからね。普通の魔法使いでもここまで正確に返すことは出来ない。それだけしっかりと、魔力を感じ取れているということだよ」

「ふふっ、さすが私の弟ね」

・・・おっと、ソフィアがまた誇らしげだ。何がさすがなのかは問うまい。


「今なら、自分の中にある魔力を感じることが出来るはずだ」

「はい」と俺は返事をして、再度、目を閉じて意識を集中する。なるほど、確かに自分の中にある魔力を感じることが出来た。


「日頃から、自分の魔力を動かす訓練をするのをおすすめするよ。うまく魔力を動かせるということは、魔法を使う上でとても大切なことだからね。そして、魔法を使うときは、消費する魔力を意識して使ってみるといいよ」

「分かりました。しっかりと訓練して精度を上げようと思います」

「うんうん、その意気だ」


「では、話が長くなってしまったけど四属性が使えるか試してみようか?」

「話はとても面白かったので長かっただなんて思ってませんよ」

「そうかい?それならよかった」

・・・ちょっと、ソフィアは疲れた顔をしているが。


俺、ソフィア、エリオットは、家の庭へ向かった。四属性を使うには、家の中では危険だからという話になったからだ。一瞬、補助魔法や治癒魔法を使えばいいのでは?とも思ったのだが、まだ、攻撃魔法を見たことがない。だから、あえて口出しはせず、攻撃魔法を見せてもらうことにした。凄く楽しみだ。


「それじゃあ、まずは風から」と言って、エリオットは、的として置いた割ってない薪へ向かって風属性の魔法を使用する。すると、風の刃が薪の表面を切り刻んだ。

「わぁ、凄いです」今、俺の目は、キラキラとしているに違いない。


「軽く攻撃しただけなんだけどね。そこまで、喜んでくれるとなんか恥ずかしいな。それじゃあ、今度はルートがやってみようか?」

エリオットは俺の手を取って風のマナに働きかける。すると、エリオットの手が緑色の光につつまれていく。


「何か感じるかい?」

「・・・手の周りにだけ風が吹き荒れている感じがします」

「・・・そうか。それじゃあ、私がさっきしたように、あの薪を風の刃で攻撃するイメージをして魔法を放ってみるんだ」

俺は、薪を睨んで風の刃で切り刻むイメージをしながら、手に感じる吹き荒れる風に魔力を流す。

「ハッ!」と声を出して、薪の方へ手を向ける。すると、手から風の刃が飛び出して薪を切り刻んだ。


「お見事!成功だね」とエリオットは拍手をしてくれる。でも、ソフィアはちょっと複雑そうな顔していた。あれは、きっと俺の使用出来る属性が光だけではなくなったので、お揃いじゃなくなったとでも思っているのに違いない。

ソフィアには悪いけど俺は、他の魔法も使ってみたかったのだから何の問題もない。


拍手をしていたエリオットは「これはもしかすると。いや、でも・・・」とブツブツ何か言った後、続いて、火、土、水を同じ要領で俺が使うことが出来るか試してみた。


「これは・・・。本当に驚いたなぁ。もしかしてとはちょっと思ったけど、まさか本当に四属性全てを使えるとは・・・」

「うんうん、さすがは私の弟だわ」

エリオットはちょっと困惑しているのに対し、ソフィアは相変わらずの反応だ。なんだろう、ちょっと慣れてきたや。


「ルート。ちょっと真面目な話をするよ?そこまで、複数の属性が使える魔法使いはそうそういない。出来れば将来、魔法使いを目指してほしいと思う。でも、私が教えてあげられることはこれぐらいなんだ。だから、ちょっと先の話になるけど、王都にある学園に行って魔法を学んで欲しい」

「ちょっと、エリオットさん。ルゥの未来を勝手に決めないで!」

「あはは、強制ではないよ。選ぶのはルート自身さ」

「・・・俺は、まだ将来のことは分かりません。けど、せっかく使えるようになったのですから、魔法の訓練はしっかりと行うつもりです」

「そうか。まあ、その気になったら言って欲しい。私はちょっと学園に顔が利くんだ。君を入学させることは難しくないと思うよ」

「はい、その時が来たら、宜しくお願いします」

そんな様子を見ていたソフィアは「むぅ」と言って、しかめっ面だ。


俺とソフィアはエリオットにお礼を言った後、エリオットと別れて、家に戻った。


「それにしても、さすがにちょっと疲れました」

「あれだけ、魔法を使ったのですもの。疲れるのも当然よ」


あれだけと言われたが実は、魔力に関しては全然が問題なかった。魔力を全開で垂れ流しというわけではなくなったからであろう。それよりも頭が疲れた。イメージをして魔法を使う。一見、簡単そうに思えたが、イメージが甘いとどうやら、きちんと魔法を使うことが出来なかった。これでは使い物にならないだろう。

イメージした魔法がスムーズに使えるよう、これは反復の訓練が必要だと心に刻む。


「まあ、魔法を使うのに詠唱とかなかったのは助かったかな?覚えるの大変そうだし」と俺はボソッと呟いた。


「ところでルゥ。将来、魔法使いになるために学園に行くの?」

「え?先ほども言った通り、今のところは分かりません。けど、色々な魔法を学ぶというのも、ちょっとおもしろそうだなとは思いました」

「そう・・・。まあ、すぐに決めることでもないわよね」


ソフィアの顔が少し暗かったのが印象的であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ