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約束を果たすために  作者: 楼霧
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第五十八話 ピンクの悪魔 前編

火の季節の三月目に入ったがまだまだ厳しい暑さが続いている。そんな日差しが強いお昼過ぎに、俺はエルレインの後にくっついて街中を歩いていた。魔法ギルドの近くにあるという魔術具を製作するための道具を販売している道具屋に向かっているところである。


別に俺が今作っている通信機は、研究室にある道具で十分製作することが出来るため、エルレインに付いていく必要は全くなかったのだが、「一度は見ておいた方が良いんじゃないかしら?これからも色々と魔術具を作るのでしょう?」と言われ、それもそうかと思って、付いていくことにした。


・・・付いていくと言った後のエルレインの笑顔が、とても胡散臭いものだったのが少し気に掛かる。けど、魔術具を作るための道具もまた魔術具だから、純粋に興味はある。


魔法ギルドがある地区に入ると魔術具関連のお店がチラホラと見えるようになる。そんな中、店内がやけに煌びやかな感じのお店があることに気が付いた。興味をそそられた俺は、お店の窓に近付いて何のお店か中の様子を窺った。


・・・宝石店?


店内には、色とりどりの宝石が綺麗にカットされた状態でショーケースに入れて展示してあるのが見えた。だが、この地区には魔法に関連するお店しかないはずである。どうしてこんなところに宝石店があるのだろうかと、俺が不思議に思って首を傾げているとエルレインがクスクス笑いながら教えてくれる。


「宝石店があるのが不思議かしら?宝石の中には魔石以上に魔力を込めることが出来るものがあります。このお店はそういう宝石を扱っているお店ですね。二年生で学ぶことですから一年生のルートが知らないのは無理もありません」


エルレインの話を聞いて、そう言えば以前に聞いたことあるなと俺は思い出した。


「思い出しました。昨年、妹の五歳の誕生パーティーの時に、宝石の付いたプレゼントが両親の実家から届いてました。確かどちらも守りの魔術具になっているってエリオット学園長に教えてもらいましたね」

「さすがは名門貴族といったところかしら。すごく高価なものが贈られるのですね」


スケールが違い過ぎると呆然とした表情を見せた後、エルレインは「だから、ルートみたいな規格外の子が出来るのかしら?」とニヤニヤしながら凄く失礼なことを言い出す。俺は頬を膨らませて無言の抗議をした。


「さて、着きましたよ」


古びた感じの建物の前に立ち止まるとエルレインがその建物のドアを開けて中に入る。俺は建物を見上げながら、年季の入った味わいのある古さの建物だなと見とれていたので、慌ててエルレインの後を追って道具屋の中に入った。


お店の中はこぢんまりとしており、それほど広くはない。しかも、商品と思しき物がところ狭しと置いてあり、余計に店内が狭く見えた。どうも、魔術具の道具だけでなく、薬草の類いや調合のための材料、魔石などが置いてあり、雑貨屋みたいだなと俺は思った。


・・・あの棚に置いてある人間のドクロっぽいのは一体、何に使うんだろう?


「頼んでいたものは出来ているかしら?」

「いらっしゃい。嬢ちゃんから依頼を受けたものは出来てるぞい」


エルレインが店内の奥のカウンターで店主と思しき人に話し掛けている。店主は随分とご高齢に見えるお婆さんだ。黒いトンガリ帽子に、黒いローブ姿で、如何にも魔女といった風貌である。気さくに話し合う二人の雰囲気からエルレインはこの道具屋の常連だということがよく分かった。


・・・先生、基本的に人見知りだからなぁ。


「おや、そっちは学園の生徒さんかい?随分と若い子を連れているじゃないか」

「ええ、この辺りでもちょっとは、噂になっているでしょう?とんでもない生徒が学園に入ったと。それがこの子です」

「ああ、聞いたことがあるねぇ。登校初日に今は誰も使えない雷の攻撃魔法を使って、ライトニングという二つ名で呼ばれているんじゃろう?それがこの子とはねぇ。随分と可愛らしい子じゃないか」

「・・・あの、出来ればその話は忘れて頂けると嬉しいです」


・・・まさか学園外でその話を聞くことになるとは思ってもみなかった。今すぐにでも忘れて欲しい。


「ところで嬢ちゃん。まさかこの子に運ぶのを手伝ってもらう気かい?」

「まさにそのつもりですよ」


二人は何か話をしているが、俺はさっきの話のせいで会話の内容が全く頭に入ってこない。店主はエルレインの回答に目を丸くした後、心配そうな顔を俺に向けてきた。なぜ、店主に心配されているのか分からない俺はとりあえず首を傾げるしかない。


「どう考えてもこんな小さな子に持てる訳がないじゃろうに」


呆れた声を出す店主は、俺が一番気にしていることをズバリと言い放つ。「小さい」という言葉が俺の心に容赦なく突き刺さった。


・・・うぐぅ、俺が小さいのは年齢的な問題だし。まだ九歳だし。これからが成長期だし。


俺と付き合いがある人は、基本的に年上の人ばかりである。そのせいで、俺は誰よりも身長が小さいのだ。俺が肩を落としていじけていると、エルレインが「問題ありません」と言いながら俺の両肩に手を置いた。


「先生は俺みたいな小さい子供に何を運ばせようというのですか?」

「随分と卑屈ですね。あなたはこれから成長するのでしょう?」


皮肉っぽくエルレインに尋ねるとエルレインは苦笑しながら、慰めるように頭を撫でてくれる。


「ルートに運んで欲しいのは魔石の精錬器ですね。魔石から不純な魔力を分離したり、複数の魔石を合成したりするに使います」

「そして、これがその精錬器じゃ」


店主はカウンターの下から木箱を一つ取り出して、カウンターの上にドンッと置いた。木箱はそれほど大きくなく、一辺が三十センチぐらいの大きさである。子供の俺からしたら少し大きいが、大人であるエルレインだったら、一人で十分に持てる大きさだ。それなのに俺が手伝う理由が分からない。


「これぐらい先生一人で持てるんじゃないですか?・・・え??」


俺は首を傾げながら木箱を持ち上げようとしたが、木箱は見た目に反して、びっくりするぐらいに重たい。持ち上げるどころか押しても引いても全く動かすことが出来なかった。


・・・何これめっちゃくちゃ重い!


「重たいでしょう?残念ながら先生では持ち上げることすら出来ません」

「いや、先生。そんな胸張って言われても・・・。でも、俺を連れてきた理由ならこれで分かりました」


俺はズボンの腰元に引っさげた道具袋を手に取ってカウンターの上に置いた。


「これに入れるために俺を連れてきたのですね?」

「正解です。道具袋なら重さを気にする必要がないですからね」

「おやまあ、どうしてライトニングがそんなものを持っているんじゃな?」

「あの、出来ればルートと呼んで下さい。お願いします。・・・で、俺が道具袋を持っているのは、俺が冒険者だからです」


名前で呼んで欲しいと念押しした後、胸を張りながら冒険者だと名乗る。店主は目をぱちくりとさせた後、笑みをこぼしながらエルレインに話し掛ける。


「なんともまあ、面白い子が来たもんじゃな」

「ええ、この子には驚かされてばかりです。ですが、とても良い刺激を受けてますよ」


・・・二人して生温かい目で俺を見るのは止めてもらってもいいですか?


「むぅ、とりあえず、道具袋に入れてしまいますよ?」


俺は二人からの視線を避けるように再度、木箱の前に立つ。今度は火属性の補助魔法で力を上げてから持ち上げてみる。


・・・くっそ、生半可な強化じゃ、ビクともしない。


結局、火属性の補助魔法で上げられる限界まで強化することによって、何とか木箱を持ち上げることが出来た。俺は道具袋の中に木箱を入れてから、ふと不思議に思ったことを口にする。


「ご店主はさっき、このめちゃくちゃに重たい精錬器が入った木箱を物ともせずにカウンターの上に置きましたよね?どうやったんですか?」

「ほっほっほ、それは乙女の秘密じゃな」


・・・なるほど。火属性の使い手ということだな。火属性の使い手だということにしておこう。これ以上、深追いしてはいけない。


俺はエルレインを引っ張るようにして、そそくさとお店を後にした。



お店を出ると街中の雰囲気が少しおかしいことに気が付く。あちらこちらで、何かを指示するような叫び声が聞こえ、冒険者と思しき人が慌ただしく目の前を走っていく。


「何かあったのでしょうか?」

「ただ事ではなさそうですね」


エルレインと話しながらお店の前で辺りの様子を窺っていると、見覚えのあるモヒカン頭の冒険者が目の前を通り掛かろうとしていたので、俺は思わず呼び止めた。


「ノースさーん!」

「ん?おう、ルートの坊主じゃねえか。久しぶりだなぁ。こんなところでどうした?って、確かエリオットから学園に入学したって話を聞いたな。ということは、その格好は学園の制服か。似合ってるじゃねえか」

「それはどうもありがとうございます」


冒険者のノースとはアイオーン商会のフリードを王都まで護衛する依頼の際、王都の冒険者ギルドから盗賊役として参加した人だ。相変わらず豪快というか、快活な性格の人である。一度しか会ったことがない人だが、実は個人的に結構、気に入っている。


「しかし、ルートよぉ。すでにあれだけ魔法が使えるってぇのに、学園になんかに行って意味があるのか?」


ノースは俺が学園に入学したことは知っているが、本当は王命により王都に留まっていることは知らない。わざわざ教え広めるようなことではないので、俺は二カッと笑みを浮かべながらノースの疑問に答える。


「無論です。学園に入って学んで、今までに知らなかった色々なことを知りました。これで俺はもっともっと強くなって見せますよ?」

「はっ、こいつめ。抜かしやがる。これは俺らも負けねえようにしねぇといけねえな」


ノースは大口を叩く俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。「本当に兄貴分な人だなぁ」と思いながら、ノースにされるがままに頭を撫でられておく。そんな心地よさを満喫していると、後ろから誰かが俺の制服をグィグィっと引っ張ってくる。


実は、少し前からずっと引っ張られていたがちょっと無視をしていた。だが、ついには力一杯、引っ張られて俺は後ろに倒れ込むようしながら、引っ張ってきた本人に抱き留められる。


「ルート?なぜ無視をするのですか?きちんとこの殿方を私に紹介してもらえるかしら?」


俺は後ろに振り返って、見上げると目の笑っていない笑顔のエルレインがそこにいた。


・・・ちょっと後回しにしていただけなのに怖いです先生。


俺はエルレインに放してもらい、コホンと一つ咳払いしてから二人にそれぞれの紹介をすることにした。


「こちらは、ノースさんです。王都の冒険者ギルドに所属していらっしゃいます。俺からしたら冒険者の先輩ですね」


俺がエルレインにノースの紹介をするとノースが「どうも」と軽く会釈した。


「それで、こちらがエルレイン先生です。エルグステア王立学園の先生で、俺が所属する研究室の担当教員です」


今度は、ノースにエルレインの紹介する。エルレインはノースを見ながら「初めまして」と挨拶した。


「そうだ、ノースさん。随分と慌ただしい様子ですが何かあったのですか?」


二人の紹介を終えた俺は、ノースを呼び止めた一番の目的を聞いた。だが、ノースからの反応は一切返ってこなかった。ノースはエルレインに目を奪われているのか、エルレインを見つめて言葉を探すようにもじもじしている。そんなエルレインもまた、ノースを見ながら何かを言いたそうにしながらも言えないと言った様子だ。


・・・何、この甘酸っぱい雰囲気は。


二人が互いを意識し合っているのは、見ていたらよく分かる。俺としては、二人が仲良くなるのを邪魔するつもりは一切ない。が、今はこの街中が慌ただしい理由を知りたい。


俺は、少し申し訳なく思いながら二人の間に割って入るように身体を入れて「聞いてますか?」と問いかける。しかし、全然耳に入らないのか、相変わらず反応がない。


そして、俺は一つ重大なことに気が付いてしまった。二人の視線の高さからして、俺の身長が圧倒的に足りないということに。二人の間に割って入ったところで、二人の目に俺が留まることはなかったのだ。俺はその事実にしょぼんと肩を落とす。本日、二度目である。


そんな間もノースとエルレインの二人は、完全に自分たちの世界に入り込んでいる様子であった。俺は二人の間をとぼとぼと歩きながら呟いた。


「はぁ、二人が乳繰り合うのは勝手ですが、出来れば俺みたいな子供がいないところでやって下さい」

「ちょっ!馬鹿。ルート、てめえ。何を言ってやがる!?」

「ル、ルート。あなたは一体、何を言ってるのですか!?


エルレインとノースは俺の発言にぎょっと目を剥きながら叫ぶ。


・・・何だよ。聞こえてるじゃん。


「そんなことより、随分と慌ただしい様子ですが何かあったのですか?」


二人が頬を紅潮させているが俺はお構いなしにノースに再度、問いただす。ノースは俺の態度に少し不満そうにするが、「そういえば、そんな場合じゃなかったな」と焦りを含んだ声で呟いた後、俺の質問に答えてくれる。


「実はな、ピンクの悪魔が現れた」

「ピンクの悪魔ですか?」


ピンクの悪魔と言われても一体、何なのか俺には分からなかった。魔獣や魔物の総称みたいなものだろうかと首を傾げていると「何ですって!」と驚いた声をエルレインが上げた。


「先生はご存じなのですか?」

「知ってるも何もあなたって、そうでした。ルートはまだ一年生でしたね。研究室に所属しているから、ついつい、そのことを忘れてしまいます。二年生になったら魔獣や魔物に関する授業があるのですが、そこで学ぶのですよ」

「わざわざ学ぶということは危険なのですね?」


エルレインは俺の問いかけに大きく頷く。すると今度は、その様子を見守っていたノースが口を開いた。


「ピンクの悪魔はギューイルという魔獣の総称だ。あいつらは何でも食べる悪食で性質が悪い」

「何でも食べるですか。どんな魔獣なんですか?」

「ピンクの悪魔と呼ばれるのはその名の通り身体がピンク色をしているからだ。体長はだいたい三十から五十センチぐらいで、丸い身体をしている」


ノースが真剣に語ってくれるのを聞きながら、俺はピンクの悪魔を想像する。


・・・何でも食べる、ピンク色をした、丸いやつ?


「それってもしかして、敵を吸い込むと星を吐き出したりしますか?」

「はぁ?何を言ってるんだお前は?」

「申し訳ありません、ノースさん。ルートがおかしなことを言うのはよくあることなのです」


・・・頭で想像していたことが思わず口から滑り出ていた。失敗、失敗。


「すみませんでした。忘れて下さい。でも、今、聞いた感じだと、そこまで危険なようには思えないのですが?」

「ああ、一匹一匹を相手にするのであれば、多少、手こずると思うが倒せないことはない。だが、ギューイルは集団で行動しやがる。しかも、かなりの大群でだ」

「そうです。今はそんなことありませんが、昔は町一つが襲われて消えたという話が残っています。そこにあった家も人も何もかもがギューイルに食われてしまったのです」


ノースとエルレインの二人は畳み掛けるようにギューイルと呼ばれる魔獣の危険性について語る。


「だから、ピンクの悪魔なんて大層な名前で呼ばれるようになったって訳だ。で、そいつらが、王都の外壁の外に居て、集団でこちらに向かっているのを警備兵が発見した。すでに騎士団が討伐に向かっている」

「あれ?魔獣が外壁の外に居て、騎士団が動いているのであれば、ノースさんたちは一体何をしているんですか?」

「実はな、騎士団が討伐に向かったすぐ後に、王都の中でピンクの悪魔を見たという目撃情報があったんだ」

「すでに王都に侵入を許してしまったと?でも、王都の外壁には結界が張られているのにどうやって?」


王都は結界で覆われており、許可無き者は結界に弾かれると俺は聞いた。その結界のせいで、俺は王都から出られないのだから、聞き間違いということはないはずだ。俺がノースの話に眉をひそめていると、エルレインが首を振りながら俺の疑問に答えてくれる。


「確かに結界を強化していれば、侵入を許すことはなかったでしょう。でも、ギューイルのような魔獣を通さないようにするために結界を常に強化した状態にしてしまうと、人の往来もままならなくなります。しかも、多大な魔力を消費してしまいます。結界はこの王都を守るための大切な礎なので、魔力消費は本当に大事でない限りは極力抑えらているのですよ」

「んー。話は分かりましたが、結局、侵入を許してしまっていたら大事のように思うのですが・・・。まあ、今、気にしても仕方がないことですね。それで、ノースさんたちは侵入を許したギューイルを探しているということですね?」

「ああそうだ。騎士団の大半は外のギューイルを討伐するために出払っちまったからな。そこで、冒険者ギルドに要請があったって訳だ」


やっと街中が慌ただしくなっている理由が分かった。人をも食べてしまうという危険な魔獣が王都の中に居る。しかも、話によれば集団で行動する魔獣のようなので、一匹や二匹といった話ではないのだろう。これは、俺も動かなくてはいけない案件だ。


「先生!俺・・・」

「ええ、分かっています。冒険者としての責務を果たしてきなさい。それにうまくいけば、あなたがずっと欲しがっていた道具袋の素材が手に入るかもしれません」


エルレインは俺が全てを話す前に背中を押してくれた。俺の気持ちを分かってくれていることを嬉しく思いながら、俺は「素材ですか?」と首を傾げた。


「そうです。何でも食べるギューイルの皮が道具袋の素材なのですよ。まあ、そう簡単なことではないでしょうけど、頑張りなさい」


・・・そうか。道具袋の素材なのか。俄然、やる気が湧いてきた!


「おう、ルートも来てくれるのはありがたい。では、先生。ルートを預からせてもらいます。それでは」

「はい、ルートをお願い致しますね、ノースさん。私は念のため、事の状況を報告しに急ぎ学園に戻ります」


ノースはエルレインに別れの挨拶をした後、すぐさま走り出した。エルレインもその様を見届けてすぐに、学園の方を向いて駆け足になった。俺はノースに付いていけるように風属性の補助魔法で素早さを上げて、ノースに後を追いかけた。


「ところでノースさん。これからどうするんですか?」


先に走っていたノースに追いついたところで、走りながらこれからやることをノースに尋ねる。


「今、王都に居る冒険者を総動員して、片っ端から探しているところだ」

「つまりは、地道に探しているということですね」


緊急を要することにも係わらず、まさかのローラー作戦であった。とはいえ、確かに他の手段があるかと言われたら、すぐには思い付かない。ただ、ルミールの町とは比べ物にならないほど、王都は大きい。何の策もなく、ただ足を使って探し回るのでは、時間が掛かって仕方がない。被害が出てからでは遅いじゃないかと俺はノースの回答を聞いて、気が遠くなるような思いになる。


・・・せめて居場所さえ突き止めることが出来れば。


「あ、そうだ」


俺は走るのを止めて、その場でポンと手を打った。ノースは俺が突然、立ち止まったことに怪訝そうな顔をしながら走るのを止めて、歩いて俺に近付いてくる。


「ルートよぉ。急いでるんだが?」

「ノースさん、ノースさん。俺、良いことを思いつきました」

「良いことって何だよ?」


ノースは腕を組みながら、眉をひそめて聞き返してくる。


「ギューイルの魔石ってありませんか?」

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