第百八十七話 ルア平原 ①
王都を馬車で出発してから四日目、季節は水の季節へと移り変わっていた。グッと気温が下がり、雪がちらついて、辺りを白く染め始めた頃、俺たちはルア平原に展開するエルグステア陣営にたどり着いた。馬車を降りると俺たちの到着を聞き付けたアレックスとリーゼの二人が出迎えてくれる。最前線ではあるが未だ闘争は起こってない様で、二人ともとても元気そうだ。
・・・馬車の移動で結構時間が掛かったから、ちょっと気を揉んでいたけど。父様と母様に何事もなくて良かった。
「父様!母様!」
「元気そうだなルート」
「ルート、無事で良かったわ」
俺の姿を見て二人とも安心した様に微笑んでくれる。俺が二人に近付くとアレックスは俺の頭をガシガシと撫でてくれて、リーゼはそっと俺のことを抱き留めてくれる。何事もなく、こうして久しぶりに両親の温もりを感じれたことを嬉しく思う。が、そんな和やかな雰囲気は長続きしなかった。俺に続いて馬車を降りたリリの姿を二人が目の当たりにすると、アレックスは虚空を仰ぎ、リーゼは頬に手を添えて困った様に首を傾げた。
「やはり、来てしまったのか」
「予想はしてましたが・・・。来てしまったものは仕方ありませんね」
「事前に分かっていたのであれば、その時に止めておいてくださいよ父様、母様」
アレックスとリーゼの反応に俺は口を尖らせながら文句を言うが、二人は互いに顔を見合わせてから肩を竦めて見せるだけだ。その上、アレックスから「元はと言えば、ルートが悪い」と小声で耳打ちされてしまった。俺が居なくても自分の身は自分で守れる様に、と思って俺は魔法のことをリリに色々と手解きをしていた。それがこの場所に来ることを拒むことが出来なかった一番の原因だと言われてしまっては、それ以上俺は何も言えなかった。
・・・可愛いリリが悪漢に狙われる可能性が極めて高いと思うのは当然のことだろう?そんな時、俺が必ずリリの傍にいてあげられるとは限らなかったんだ。だからこそ、リリに自分の身を守る術を教えることは必要なことだった。それには間違いない。間違いないんだけど・・・。メルギアのせいもあるとはいえ、幼いリリが冒険者になるなんて誰が思っただろうか?誰も想像だにしなかったことだろう。それに、そんな前例そうそうあるわ、け、が・・・俺か!?
結局、回り回って自分のせいという結論を導き出して、俺が頭を抱えていると、リリが「ルゥ兄様そんなに私と一緒に居るのが嫌ですか?」と後ろから尋ねてくる。俺はすぐに後ろに振り返って、首を横に振って見せた。
「嫌な訳がないだろう?でも、何度も言ってる通り、こんな危険な場所にリリが居ることには反対だ。例え魔法が使えるリリが、その辺りの冒険者よりも腕が立つとしてもだ。その気持ちは変わらない」
「ふふ、それは何度も聞きました。ルゥ兄様が私のことを心配してくれているのはすごく嬉しいです。でも、私も私の意思でここに居ます。ルゥ兄様と同じ様に私の気持ちも変わりません」
リリは真っ直ぐに俺の目を見てそう言い切った。その凛々しい眼差しは、カジィリアやソフィアに通ずるものがあり、家族だなぁと思ってしまう。ちなみに、リリの話もここにたどり着くまでの間に何度も聞いた話だ。こんな感じに俺とリリの意見はずっと平行線である。リリの固い意思に俺が眉間に皺を寄せているとアレックスが俺の肩にポンと手を置いた。
「全く似た者兄妹だな。ところで、難しい顔をしているところ悪いがルート。これから対策会議があるのだが参加するか?」
アレックスにそう話し掛けられて、俺はアレックスが居る方にバッと振り向いた。対策会議ということは、魔人族たちを相手にして、どうやって闘うのかを議論する場ということだろう。俺が参加してもいいというのであれば、俺は参加しておかなければならない。ここに来るまでの間に、牢獄で考えた魔法陣をノクトシアーズの涙に付与し、魔術具として使用出来る様に準備が終わっている。大規模な範囲で効果が現れるので、間違ってもその影響に巻き込まれない様に事前通知は必須だ。
「もちろん、参加します父様。この闘いで俺がやりたいことを皆に話しておく必要がありますから」
「ルートがやりたいこと?」
「はい、詳しくはその対策会議で話しますね」
リリのことはリーゼに任せて、俺はアレックスとソフィアと共に対策会議の行われる幕舎へと向かう。道中、辺りに休息を取るためのテントが多く張られている光景が目に入った。優に百、いや、千は軽く超えているのではないだろうか。それだけ多くの人が、このルア平原に集結しているということであり、魔人族との決戦が迫っていることを嫌でも感じて、俺は思わず息を飲んだ。
多くの人が集結していることもあって、行き交う人は騎士団員だけではない。通常は町を守っている警備兵や冒険者らしき出で立ちの人たち、それに見覚えのあるエルグステア学園の教師の姿もある。まさに総力戦と言って過言ではない状況だ。誰も彼もが真剣な表情をしており、少し殺伐とした雰囲気なのは仕方のないことだろう。
・・・ちょっと緊張し過ぎにも見えるけど、これから魔人族たちとの戦争が起こると思ったら仕方ないよな。
会議には、騎士団から騎士団長であるカルスタンを筆頭に、騎士と魔法使いの各総隊長クラスが、エルグステア学園からは魔法使いコースの教師統率者であるグリフと騎士コースの教師統率者であるクレスが出席している。二人とも俺と顔見知りなだけはあって、俺の姿を見るや否やグニュッと眉をひそめた顔になる。
・・・あぁ、あれは間違いなくお説教する時の顔だな。二人には近付かないでおこうっと。
それ以外に幕舎には、冒険者ギルドから傭兵として雇われた冒険者で、各分隊のまとめ役をする上級冒険者が数名、それにエリオットといったメンバーが出席している。当たり前だが幕舎の中は大人ばかりだ。そんな中に、子供の俺が混ざるのは違和感しかないが問題はない。何てことはない。いつものことである。
ちなみに総指揮官はカルスタンだそうだ。身分的に王族であるエリオットが相応しいのでは?と思ったが、自身が冒険者でもあるエリオットは冒険者全体のまとめ役をして、アレックスが元騎士団長として騎士団員のまとめ役をするそうだ。そして、現騎士団長であり冒険者ギルド長でもあるカルスタンが、全てのまとめ役すると聞かされたら納得の人選だった。
長方形の縦長の机に、上座となる短辺にカルスタンと補佐役が陣取り、その他の出席者は身分が上の者順に長机を取り囲んでいる。俺はアレックスとソフィアと一緒なので、上座側に移動だ。移動中、俺のことを知らない上級冒険者から、なぜこんなに場所に子供が?といった感じの忌避の目を向けられてしまった。
その気持ちはよく分かるし、そういう目で見られることに俺は慣れているので、特に気にすることなく無視をしていたが、エリオットが「この子があの有名なルート君だ」と俺のことを紹介すると、上級冒険者にすんなりと受け入れられてしまった。
エリオットの言った「あの有名な」というところに物凄く引っ掛かるものがあり、しかも上級冒険者の一人がぼそりと「あれが滅殺の?」と言ったのが聞こえてきたので、碌な噂じゃないのは確かだ。敢えて自分から踏み込む様な内容ではないので、ここはスルーしておくのが正解だろう。というか、大事な会議が始まる前から頭が少し痛い。
・・・そりゃあ、やったことを考えたら間違ってはないんだけど。もうちょっと他に何か言い方はなかったのだろうか?それじゃあ丸で、殺意の波動に目覚めた人みたいじゃないか。嫌、ある意味間違ってはいないんだけど。むぅ。
いつの間にか新たに増えたであろう俺の二つ名で悩んでいると対策会議が始まった。
「皆集まった様なので対策会議を始める。まずは現在までの状況だが」
カルスタンは対策会議の出席者を見渡しながら、そう言うと隣に佇む補佐役のことを一瞥した。補佐役はカルスタンにコクリと頷くと、長机に一歩近付いて机上にある地図を指差しながら説明をしてくれる。地図はルア平原のもので、エルグステアと魔人族の両陣営が展開している様子が書き加えられているそうだ。
「三週間ほど前にルア平原に魔族が集結しつつあるという一報を受け、約五百名の先遣隊を派遣しました。先遣隊がルア平原に着いたところ、数匹の魔獣と交戦になった様ですが、特にこちらに損害が出ることなく討伐し、陣地の設営に取り掛かりました」
補佐役はそう言いながら、地図に書き加えられた一筋の線をなぞる。
「このラインに沿って結界の魔術具を等間隔に配置しています。遠距離攻撃をされた場合や強襲をされた場合は、即座に発動して防御する手筈です」
・・・結界の魔術具が設置済みか。丁度ルア平原の中間辺りだな。俺の魔術具とちょっと被ってしまうかもしれないけど、まあ、最悪弁償すれば許してもらえるかな?それにしても、魔族が集結しつつあると言う一報を受けたのに、先遣隊が着いた時には魔獣しかいなかったというのはどういうことだろう?
「先遣隊とその後に到着した約千人が数日を掛けて陣営の防備を固めつつある内に、魔人族の手の者と思われる獣人族とドワーフ、それにゴブリンの姿が見られる様になりました。ですが、戦闘になることはなく、敵側も陣地の設営に入ったそうです」
「ゴブリンだって?」
ちょっと気になるワードが出てきて、思わず俺の心の声が漏れてしまった。牢屋の中でぶつぶつと独り言をしていた頃の名残というか、弊害だ。俺の不用意な発言で補佐役の説明が止まってしまい、皆の視線が俺に集まる。完全にやらかしてしまった。
とても気まずい沈黙が訪れて、冷や汗が止まらない俺に、カルスタンが「ゴブリンが何か気になるのか?」と尋ねてくれる。俺は助け船だと思いながら、カルスタンの質問に答えた。
「口を挟んで申し訳ありません。フラウガーデンでは見かけなかった種族だな、と思いまして」
「ゴブリンは弱小故に、長い物には巻かれる種族だ。こちらに避難するよりは、魔人族の軍門に下った方が良かったのであろうな」
「なるほど、教えて頂いてありがとうございますカルスタン卿。大事なお話を遮って申し訳ありませんでした」
俺はさも今知ったかのようにカルスタンにお礼を言って皆に謝って見せた。それを見た補佐役が何事もなかった様に話を再開したので、俺は自分の失態を流すことに成功した様だ。ちなみにゴブリンの存在は、図書室の書籍で知っていた。この世界のゴブリンは魔物ではなく人族の一種である。
性格は極めて穏やかなのだそうで、スレイヤーされる様な残虐性はない。ルミールの町で女性を弄んで殺した魔人族の方が余程鬼畜である。ゴブリンの特徴としては、全身が緑色をした小柄な身体をしており、手先が器用なのだそうだ。
鍛冶や工芸技能が高いドワーフと一緒に手先の器用なゴブリンが現れたというのは、補佐役が話していた通り、先行して陣地の設営をさせるためにルア平原に投入されたと見るのが自然なことだろう。獣人族は、その護衛役と言ったところだろうか。
・・・でも、やっぱり解せないな。なぜわざわざ陣地を構築する必要があるんだろうか?魔人族はもっと力押しをする奴らだと思っていたけど違うのか?あれだけ大量の魔獣をけしかけて来たって言うのに・・・。それに最も魔力が秀でた種族なのであれば、魔法で大規模な攻撃をすればいいはずじゃないか?その方が手っ取り早いだろうし、俺だったらそうする。それとも、前回の被害を考慮して、慎重になっているということだろうか?うーん。
エルグステア陣営、魔人族陣営ともに一週間ほど掛けてしっかりとした陣営を構築し、そこからさらに一週間が経って現在まで、お互いに睨み合いが続いていると補佐役が説明をしてくれる。その間にこちらは、騎士団だけでなく警備兵、冒険者が集い、約二千名ほどが居るそうだ。
当たり前だが、その間に魔人族陣営側も魔族が集まっており、その数は約千名。但し、例の如く魔人族が使役する魔獣が大量に投入されている様で、数だけで言えば魔人族陣営の方が多いらしい。時折、様子見の様に災害級の魔獣をけしかけられたそうだが、それは難なく討伐することが出来たそうだ。
・・・小出しならそれほど苦労することはないだろうな。ただやっぱり相手の出方が不可解だ。大量にけしかけるなら分かるけど、小出しの様子見に何の意味があるというんだろうか?それで相手の実力を推し量れると本気で思っている?・・・いや、さすがにそこまで頭の悪い連中だとは思わないけど。
「そう言う訳で、現在、膠着状態となっている訳だが・・・」
俺が考え事をしている内に補佐役の説明が終わったらしく、話し手がカルスタンに交替していた。カルスタンは分かりやすいぐらいに俺のことを見ながら「今日、我が陣営の最大の戦力がやってきた」と言葉を続ける。それは暗に、俺の魔法で魔人族陣営に攻撃を仕掛ける、と言われていることがすぐに分かり、俺はすぐに挙手をして、今度は発言する許可を求めた。
「申し訳ありませんカルスタン卿。発言をしても良いでしょうか?」
「あぁ、構わぬ。情報共有がこの場の目的だからな」
「ありがとうございます。まず俺がここで求められているのは、ルミールの町やフラウガーデンで見せた様に、相手を屠ることだと思います。王様からもここで功績を上げる様に、との手紙を受け取っていますし。ですが、俺はここで大規模な攻撃魔法を使うつもりはありません」
俺の発言に、俺のことを良く知る者ほど目を丸くしながら驚いた表情をし、関わりの薄い上級冒険者は不可解そうに眉をひそめる。事情を一番よく知っているソフィアだけは澄まし顔だ。それを見たアレックスが俺のことを見下ろしながら「今度は何をするつもりなんだ?」と聞いてくる。
「私も聞きたい。今回のことは魔族たちとの抗争に決着を出来るかも知れない千載一遇の機会なのだ。ここで全てを叩き潰せば、エルグステア国民の憂いを取り払うことが出来るのだぞ?」
「カルスタン卿、それは難しいと判断します」
「なぜだ?」
「このルア平原に居る魔人族と思しき反応が圧倒的に少ないからです」
索敵魔法で感じ取れた強い魔力反応の持ち主は僅かに数十人。その全員を叩き潰したところで、魔人族の脅威を取り払うことは出来ないのは明白だ。
「少数であるというであれば、余計に殲滅するいい機会ではないか?」
「それはまあ、確かにそうかもしれません。俺の故郷を襲った魔人族を殲滅することに、俺は何の躊躇いもありません。俺の身体の半分にその血が流れていることを疎ましく思うほどに、魔人族に対しては悪感情しかありませんから。でも、それ以外の魔族は別です」
このルア平原に集まって居る魔族は、中には進んで魔人族に恭順している種族も居るのは間違いないが、その大半は無理矢理従わされている。それは本来であればこちらに向けられるはずの敵意が、別に向けられていることからも明らかだ。
敵意がこちらに向けられていないとはいえ、これから始まろうとしているのは戦争だ。ひと度戦いが始まってしまえば、甘いことなど言ってはいられなくなるだろう。それでも、自分たちの意に沿わず戦いに駆り出された者を無差別に殺していいと思えるほど、俺はまだ修羅の道には落ちていない。
「俺はただの殺戮者になるつもりはありません」
「・・・ルートは戦いたくないと申すのだな。では、君はここに何をしに来た?」
俺の言葉を聞いたカルスタンは、スッと目を細めると感情をなくしたかの様な顔をしながら俺のこと睨む。こんなにも怖い顔をするカルスタンを見るのは初めてだ。返事を間違えると、問答無用で叩き斬られそうだと思えるほどに冷たい目をしている。
・・・カルスタン卿にここまで敵対心を剥き出しにされるとは思わなかった。総指揮官としての誇りか、戦わない者への侮蔑か。ただ、この感じはそれだけが理由じゃない気がする。・・・もしかして、カルスタン卿は魔族と何か因縁があるのだろうか?
幕舎の中がビリビリとした緊張感に包まれる。今にも俺のことを射殺しそうな目を向けるカルスタン。ソフィアが俺のことを庇う様に立ち位置を変えて、ソフィアがカルスタンの視線を遮った。ソフィアの気持ちは嬉しいが、ここで姉に庇われている様では、俺がこれからやりたいことを押し通すことは出来ないだろう。
・・・ありがとうソフィア姉様。でも、これは俺がやらないと意味がないから。
俺はソフィアの袖を軽く引き、俺のことを見下ろすソフィアに、大丈夫だという意味を込めて頷いて見せた。ソフィアは少し不満そうな顔を見せるが、仕方なさそうに一つ息を吐いてから一歩後ろに下がってくれる。再び俺はカルスタンの鋭い視線に晒されることになったが、俺はカルスタンの目を見返しながら口を開く。
「一度大規模な戦いが起こってしまったら、双方に甚大な被害が出来ることは間違いないでしょう。それは俺の望むところではありません。だから、俺は戦いが起こらない様にするための準備をここに来るまでに進めてきました」
「戦いが起こらない準備だと?どういう意味だ?」
カルスタンは眉間に皺を寄せて、より一層恐い表情をしながら俺に問い質す。俺はここにやって来るまでに準備した魔術具の話を丁寧にした。戦争を起こすことなく収めるための手立て。双方が干渉しあえない様にするための魔術具の効果。そして、その効果はこのルア平原を隔てることが出来るだけの範囲で発動することを。
「以上が、魔術具の効果です」
「一切の干渉を受けつけぬとは、本当にそんなことが出来るのか?」
「出来ると思ってますよ。魔法で大事なことはイメージすることですからね」
恐い顔をしていたカルスタンは、少し嫌そうな顔をしてから額に手を当てた。俺の失敗をイメージして魔法は使わないという意図がしっかりとカルスタンに伝わった様だ。もちろん、厳密には魔法と魔術具では発動するまでの過程は全然違う。それでも、どちらも失敗を前提としては使わないので俺の言い分は間違ってない。
「はぁ、君がそう言うのであれば、そうなるのであろうな」
「必ずそうなるかどうかは使用してみなければ分かりませんが、それでも自信はありますよ。ここで失敗する訳には目も当てられないことになりますからね」
「一応聞いておくが、失敗した場合はどうするつもりなのだ?」
「失敗をしたら大人しく戦いますよ。ここには父様に母様、ソフィア姉様にリリも居ますから。家族を守るためなら、進んでこの手を血に染めましょう」
「ふむ、覚悟はある様だな。・・・分かった。魔術具の使用を認めようルート。但し、その言葉忘れるでないぞルート」
こうして俺は対策会議で話をする時間をもらい、自分のやりたいこと、魔術具を用いた戦わないための戦いを提案して、カルスタンから許可をもぎ取った。一時はカルスタンの魔族への強硬な態度に冷や冷やする場面はあったが、何とか受け入れてもらうことが出来た。
対策会議は補佐役の説明の後は、ほとんど俺とカルスタンの会話で終わってしまった。ノクトシアーズの涙を使った魔術具を発動させる決行日は明日。大戦が始まってしまってからでは遅いので、今すぐにでも決行したい、という俺の願いは却下された。
すでに日が落ちて辺りは真っ暗であり、見通しがきかないこと。俺がやろうとしていることは大規模な影響が出るため、エルグステア陣営内で周知させる時間が必要なことが理由だ。俺の魔術具で味方に被害が出ては目も当てられないので仕方がない。
俺は翌朝、俺のお目付け役となる一小隊を率いて最前線に立つという話をして、対策会議は解散となった。
四話構成ぐらいになりそうなので
前後半ではなく、その①です。




