第百四十話 交渉
レオンドルに緊急連絡をした翌日、予定通りにドラゴンの下へと俺たちはやってきた。同行者はソフィアとアーシアの二人である。アーシアは昨日と同じく俺がお姫様抱っこで運んで来たのだが、今日のアーシアはちょっと機嫌が悪い。実はノクトゥア出発前に一悶着あった。
「どうして私を置いて行こうとするのルートちゃん!?」
「危ないからに決まっているではないですか」
ソフィアが一緒に行くと言い出すのは端から分かっていたので、最初から止める気はなかった。だが、アーシアは別だ。俺はアーシアにはノクトゥアに残って居て欲しかった。
「ソフィア様も行かれるのでしょう?だったら私も行きます」
「ソフィア姉様とアーシアでは、危険の度合いが違います。場合によっては、命の危険があるかもしれません」
アーシアの魔法使いとしての実力を軽んじている訳ではない。それでもドラゴンとの戦闘に巻き込まれるようなことがあったらかなり危険だ。冒険者として戦闘経験が豊富なソフィアと比べたら余計に、である。そう思った俺が、アーシアを置いて行こうとしたら、アーシアはどうしても一緒に行くと言って譲らなかった。
「ルートちゃんだってソフィア様ほど戦闘経験はないのでしょう?」
「確かにソフィア姉様ほど回数はこなしていませんが、俺は鍛練で鍛えてますし、これでもいくつか修羅場は潜り抜けてきました。残念ですがアーシアと俺では比較になりませんよ」
俺が突き放すようにそう言うと、アーシアは目にいっぱいの涙を浮かべながら詰め寄ってくる。泣かれそうになることは全く想定していなかった俺は、うぐっと息に詰まって対応に困っていると、その様子をなぜか微笑ましいものを見るような眼差しで見守っていたコードネルとアイフィンの二人が口を開く。
「どうだろうかルート君。アーシアを連れて行ってはくれまいか?」
「コードネルさん!?」
「アーシアが危険なことは百も承知のことです。他国の使者であるルート君が、そんな危険な場所へ向かうというのに、ロクアートの者が誰一人立ち会わないのは、筋が通らないでしょう?私からもお願い致します。娘を連れ行って頂けませんか?」
「アイフィンさんまで・・・」
結局、出発前の出来事で、アーシアと問答をしている時間がもったいなかったこと、アーシアが俺に詰め寄りながら目にいっぱいの涙を浮かべて泣かれそうになったこと、何よりアーシアの親であるコードネルとアイフィンの二人からの後押しがあったことで、俺は仕方なく一緒についてくる許可を出さざるを得なかった、という出来事があった。
・・・大事な闘いの前なのに、まさかの完全敗北だったよ。
そんな感じに朝っぱらから勝負に負けた俺は、グッと握り拳を握って気を取り直してから、独りドラゴンに歩み寄る。ドラゴンは昨日と状態は変わらず、気持ちよさそうにロクヴァリー滝に打たれていた。滝の水はどこへ消えてしまったのか、ドラゴンの身体に当たると霧散してしまう。改めてその光景を間近で見て、俺はつくづく不思議な現象だと感嘆する。
「ふむ、また来たのか?我に一体何用だ?よもや愚かにも我にここを退けと言いに来たのではな・・・む?むむ?どういうことだ?なぜ、貴様のような小僧から、我が同朋の気配がする?小僧、貴様一体何者だ?」
ドラゴンは俺が近付くと、目を見開くこともなく話し掛けてくる。その不愉快であることを全く隠すことのない物言いに俺は少し警戒するが、話の途中で俺が持っているメルギアたちのうろこに気が付いたらしく、ドラゴンはピクリと身体を浮き上がらせると驚いたような声を上げた。
ドラゴンがメルギアたちのことを全くの知らぬ存ぜぬだった場合は、強硬手段も止む無しとも考えていた。でも、良い方での想定通りの反応に俺は心の中で「よし!」とガッツポーズをしながら口の端を上げる。
ちなみにソフィアとアーシアの二人には少し離れた木々の間で待機をしてもらっている。少し遠いかもしれないが、こちらの様子は窺えるはずだ。突然、何の理由もなくドラゴンが襲ってくることはないと思うが、それでもドラゴンから攻撃を受けた場合に、即座に避難、対応出来るだけの距離を取ってもらってのことだ。
・・・まあ、理由はそれだけじゃないんけどね。
ドラゴンは出会ってから初めてしっかりと目を見開らくと、大きな目をギラリと光らせながら俺のことを見据えた。大きな目の鋭い眼光に、威圧された気分になる。それだけで丸で周りの空気が重たくなったかのように俺の身体に纏わりついてくる感じがして、鉛のように身体が重い。
俺が持つメルギアたちのうろこの気配を探っていたドラゴンは「この気配は火か?」と呟いた。俺は身体に纏わりつく重い空気を脱ぎ捨てるように打ち払ってから右手を上着の内側に入れて、すかさず気配の正体をドラゴンに明かす。
「俺の名はルート。あなたが言っている同朋の気配というのはこれのことでしょう?」
俺は上着の内ポケットからメルギアの燃えるように赤いうろこを取り出して、ドラゴンに見せつけるように掲げる。気分的には、この紋所が目に入らぬか、といった感じだ。
・・・まあ、その紋所の本人はここには居ないけど。しかも、どちらかと言えば、虎の威を借る狐かなこれ。
「このうろこは、レッドドラゴンのメルギアから頂いたものです」
「んん~?確かにそのうろこからはメルギアの気配がする。それは間違いなくメルギアのうろこであろう。だが、やはり分からん。なぜ貴様のような小僧がメルギアのうろこを持っておるのだ?頂いたとはどういうことだ?詳しく説明せよ小僧」
「分かりました。少し長くなりますが、お付き合いください。俺の故郷はここから遠く西の地にあるエルグステアという国です。俺の実家があるのはルミールの町と言うのですが、その町の近くにメルギアの森という名の森があるのですが、その森の奥地で俺はメルギアと出会いました」
「ブハァッ、あやつの名が、地名などになっておるのか?クックックッ、里を出てから全く里に戻って来んと思ったが、そのような面白いことになっておるのか?」
人が真面目に説明しているというのに、ドラゴンがいきなり吹き出した。ぶわっと強い風が俺に吹きかかる。面白いことを言った覚えは全くないのだが、ドラゴンにとっては面白いことのようである。ドラゴンの口ぶりからするとメルギアとは単なる知り合いという訳ではなさそうだ。顔見知り以上の関係にはあるように思える。
ドラゴンは何が面白いのかはよく分からないが、笑いを堪えるのに必死な様子はとても楽しげだ。俺は乱れた服を整えてから、眉をひそめながら話し掛ける。
「あの話の続きをしても宜しいですか?」
「ん?あぁ、すまぬな。我のことは気にしなくても良い。話を続けてくれ」
「では、遠慮なく。そのメルギアの森で初めてメルギアと出会ったのですが、出会った矢先のことです。寝ぼけたメルギアに羽虫か何かと間違われた俺は、いきなりメルギアに燃やされそうになったのですが、それを俺が防いだことがきっかけで、メルギアとは仲良くなりました」
「寝ぼけて燃やされそうにだと?ククッ、未だに寝起きが悪いと見える。我の記憶では、あやつが寝ぼけて山を一つ丸ごと焼き払ったことがあったはずだ。全くどれだけ時が経っても変わらぬな。あやつらしい」
・・・え?何それ恐い。俺、本当によく生き残ったな。
寝ぼけて山一つ丸ごと燃やした何て話をメルギアから聞いた覚えはない。驚愕の事実だが、メルギアならやりそうだと納得出来る辺り、俺はメルギアに毒されていると言って良いかもしれない。
「しかし、メルギアの炎を人の子如きが防いだとは、にわかには信じがたいが・・・ふぅむ。これは一体どういうことか?寝ぼけておったからと言って手加減をしたとは思えぬが・・・」
「俺は、こんなところで死んでたまるかと思いながら、魔法障壁を必死に頑張って張りましたけどね」
ドラゴンはそう言って、大きな顔を近付けながらさらに俺のこと凝視する。訝しがるように一度目を細めるが、突然何かに気が付いた可能性がようにパッと目を見開くと、スッと俺から顔を離した。ドラゴンはボソリと「ふむ、なるほど」と一言呟いてから、うんうんといった感じに頷いている。何かに納得したご様子だ。
・・・なるほどって何が?自分だけで納得してないで俺にも教えてよ。・・・そう言えば、メルギアと初めて会った時も何か勝手に納得されたような気がする。何が何だかよく分からないけど、ちょっと懐かしいかも。
「えっと、メルギアにはそのあとも目を掛けてもらって、面白い魔法を見せてもらったり、修行を付けてもらったりしたことを通じてさらに仲良くなりました。ただ、俺がルミールの町から王都へ住まいを移してしまったため、メルギアとはおいそれと会えなくなってしまったのです。それでメルギアが餞別代わりとして俺にうろこをくれました」
「ほぅ?随分とあやつに気に入られているようだな。あやつが人の子にうろこをやるとは。稀有なこともあるものだ」
「えぇ、随分と可愛がってもらってると思います。それはもう本当に・・・」
ドラゴンのメルギアに気に入れているという話を聞いて、俺は少しげんなりした気分で頷く。
・・・今でもメルギアがうろこをくれたのは、シアン先生とノクター先生を俺にけしかけるためだったって思ってるけどね。
「メルギアのうろこを持っている理由は分かった。だが小僧から感じる同朋の気配はそれだけはない。まだ持っているであろう?隠し立てをして無駄だぞ?そう、この気配は水・・・」
・・・おっと、いけない。ここからの会話をソフィア姉様とアーシアに聞かせる訳にはいかないな。
俺は軽く手を振って音のマナに働きかける。離れた場所でこちらを見守るソフィアとアーシアの二人との間に、こちらの会話が聞き取れないように消音壁を作り出す。エルグステア学園で、人として教師をしているブルードラゴンのシアンとノクターの正体を、ソフィアとアーシアに知られる訳にはいかない。
ソフィアとアーシアの二人の口が軽いとは思わない。だが、万が一、俺以外の者に正体が知れてしまえば、シアンとノクターは学園から姿を消してしまう可能性が高い。二人は自分たちの正体を隠して学園で教師をしているのだ。俺はシアンとノクターの二人から学びたいことがまだまだたくさんあるので、そうなってしまっては困る。
会話が聞こえないようにした俺は、掲げていたメルギアのうろこを内ポケットに仕舞って、替わりにシアンのうろこを取り出す。俺が説明しようと口を開きかけたその瞬間、ドラゴンから「ちょっと待て」と言われて俺は口を噤む。
・・・なぜ止める?隠し立てするなと言ったのはそっちなのに。
「そのうろこ。我の知る者のようだな。我が誰のうろこか当ててやろう。・・・ふーむ。この気配、最近、会ったばかりの者だな。・・・これはノクターの若僧か?いやシアンの小娘のものとも考えられる。あやつらの魔力は実に似通っておるからなぁ」
ドラゴンは俺が掲げた青いうろこをまじまじと見ながら、随分と楽しそうな様子だ。ついさっき出会った時の不機嫌そうな態度だったことが嘘のようである。そう考えれば、とても良い傾向と言えるだろう。この調子で話を優位に持っていきたいものである。
ドラゴンは青いうろこが誰のうろこか、もうほとんど答えを言い当てていると言える。だが、俺が掲げる青いうろこがシアンとノクターの二人のどちらか逡巡して、答えを出せないでいた。
・・・確かに二人は双子の姉弟なだけあってよく似ていると思う。そう言われると俺も索敵魔法で先生たちをはっきりと区別出来ないかも。
「ムムム。そのうろこはノクターのものだな?うむ、間違いない」
「ファイナルアンサー?」
「ふぁ、ふぁい、なる?あんさ?何だと?」
ドラゴンがあまりにも迷って答えを出すものだから、俺は思わずそう聞き返してしまっていた。完全に不慮の事故である。ドラゴンは俺の言葉の意味が分からないと言った感じに首を傾げてしまうのを見て、俺は慌てて咳払いをする。
「ゴホンゴホン。いえ、失礼しました。失言です。気にしないでください。それと、残念ですがこれはシアン先生から頂いたうろこです。ノクター先生のものではありません」
「なんと!?シアンものであったか。それは惜しいことした。それで、なぜシアンの小娘のうろこを持っておる?ノクターの若造も知ってるようだし、先生と言うのは?」
二分の一の確率を外したドラゴンは、不正解と分かると露骨に不機嫌そうな口調になる。俺は分かりやすいドラゴンの反応に苦笑しながら、シアンのうろこを持っている理由を話す。
「先程、話した俺の故郷、エルグステアにある学園で、シアン先生とノクター先生が教師をしていることはご存知ですか?」
「場所までは知らぬが、人の子を相手に物事を教えているという話は聞いたことがある。我らドラゴンの中でも面妖なことをする奴らなのだが、なるほど、つまり小僧は二人の教え子という訳か。だが、あやつらは決して自分たちの正体は明かさぬはずだが?それをなぜ知っている?」
「発端はメルギアのうろこを持っていたことです。いきなり二人から、喧嘩を吹っ掛けられたのですよ。お前はメルギアの眷属か?って。それがきっかけで、シアン先生とノクター先生の二人がドラゴンであることに気が付いたのです」
シアンとノクターの二人の正体を知った時のことを話すとドラゴンは面白がるように「ククッ、そうかそうか」と身体を揺らしながら楽しげに笑う。
「そう言えばシアンとノクターの二人をメルギアは随分と可愛がっておったな」
「本当の意味で可愛がっていたのなら、あんなにもメルギアに対して敵意を剥き出しにしないと思いますけど?」
「ククッ、つまりはそう言うことだ。自身の属性より優位となるシアンとノクターの二人を、自分の相手をさせるために鍛えておったからな。それにしても小僧。貴様、メルギアに担がれたのではないか?」
「あ、あなたもやっぱりそう思いますか?実は俺もそう思って王都に尋ねてきたメルギアに確かめたことがあります。明確な答えはもらえませんでしたけど、それがもう答えみたいなものですよね」
「本当にメルギアと仲が良いのだな小僧」
ドラゴンは感心したような声を出すと深々と息を吐いてから、急にハッとしたような声で「ん?そう言えば」と口にした。
「先の水の季節、あやつらが里に帰ってきた折に、何やら騒いでおったな。確かあれは、メルギアの居場所が分かっただの、面白い人の子が居ただのと、ほざいておったのであったか。・・・もしや、それが小僧のことか?」
「それは俺のことでしょうね。風の季節にお二人からそう言う話を聞きましたので」
「ふむ、そうであったか。人の子と進んで係わろうとする我らの中でも変わり者である二人が、ついに気でも触れてしまったかと思って里の皆で馬鹿にしたものだが、本当のことであったか」
ドラゴンは自分が誤っていたことをシアンとノクターの二人に悪びれもせず、人と係わるシアンとノクターがドラゴンとしてどれだけ異質な存在であるかを語る。だが、それを聞かされたところで、俺が共感出来る訳がない。俺にはただただ言い訳しているようにしか聞こえなかった。
・・・へぇ、つまりは俺がシアン先生から魔力供給を受ける羽目になって、死ぬほど痛い思いをしたのはこのドラゴンのせいでもあるってことか。ふーん、へぇ。
俺は教師としてのシアンとノクターの二人を尊敬している。ちょっと無茶苦茶な部分はあるし、ひどい扱いを受けたことはあるし、口よりも先に拳が飛んでくることもあるが、そんな二人を馬鹿にするようなドラゴンの言い草に俺は少し苛立ちを覚えた。俺はドラゴンの話を聞き入るふりをしつつ、ギリッと奥歯を強く噛み締める。
「ん?なんだその目は?どうかしたか?」
「いえ、何でもありませんよ。話の続きをどうぞ」
「まあ、シアンとノクターの二人の話はもうよいな。同じメルギアに可愛がられている同士、通ずるものがあったのであろう。それよりも小僧、貴様からはまだ同朋の気配がする。だが、それが誰のものかが分からん。隠し立てするとためにならぬぞ?」
「別に隠している訳ではありませんが・・・」
俺はムッと思いながら、内ポケットに手を伸ばして、シアンのうろことクリューのうろこを持ち替える。愛娘からもらった漆黒のうろこを俺はドラゴンに突き付けた。
「あなたが知らないのは無理もありません。このうろこはブラックドラゴンのもので、二年程前に産まれたばかりの子です。名をクリューと言って、俺が名付けました」
「ブラックドラゴンのクリュー?しかも、二年前に産まれたばかりだと?いや、それよりも名付けたとはどういうことだ?」
「話は少し端折りますが、とある遺跡の奥で俺と冒険者見習い仲間でクリューの卵を発見しました。一旦は俺の手元を離れたのですが、それが手元に戻ってきて。その折に、クリューの卵を俺が手に持った瞬間、クリューが俺の魔力を根こそぎ吸い取って孵化したのです。あ、一応、名付けに関してはメルギアに確認を取りましたからね?メルギアには、クリューが俺のことを親代わりに思っているから問題ないと言われています」
「ふむ、本人が許しているのであれば確かに問題はないが、信じ難い話ではある。だが、うろこが有る以上は、本当のことなのであろうな。それよりも小僧、少し動くなよ?」
ドラゴンはそう言うと身体を起こして立ち上がり、鼻先を俺が突き出したうろこに触れさせて、集中するように目を閉じた。しばらくの間、俺は大人しくドラゴンの様子を見守る。すると何かを確認することが出来たようで、ドラゴンは「そうかこれは」と呟きながら目を開くと空を仰ぎ見た。
「・・・微かにしか感じ取れんがこれはグスエンの。そうか、生きておったのだな」
「グスエン?もしかして、それはクリューの本当の親の・・・」
「黙れ小僧!そもそもは貴様らのせいであろう!・・・人の子が知る必要のないことだ」
ドラゴンの気になる発言に質問をしようとしたら、最後まで話す前にドラゴンが怒声を上げた。魔力を乗せながら威圧気味に発せられた言葉に、俺は吹き飛ばされそうになるのをグッと堪える。クリューに係わる何かを知っていそうなので、正直なところ非常に気になる。だが、余程触れて欲しくないことらしい。今は聞いても教えてくれないだろうな、と思いながら、俺はその場に踏み留まった。
ドラゴンは耐えきった俺の様子に目を張ると「なるほど、これは確かに興味深い」と満足げに頷いて見せた。何となくだが、不意にキレたことを誤魔化すための照れ隠しのように思えるが、言及するのはやめておこうと思う。自ら逆鱗に触れに行くのは、命がいくつあっても足らなさそうだ。
「今のを耐えるだけでなく、人の子の身でありながら我が同朋を孵化させるだけの魔力。小僧、貴様は本当に人の子か?」
「残念ながらメルギアたちみたいに自身の身体を変化させる魔法は覚えてません。人であることは間違いないと思いますよ」
・・・人族かどうかと問われたら、ちょっと怪しいんだけどね。・・・はぁ、今は関係のないことだな。
「クックッ、他人事のように言うではないか」
「そんなことを言われても仕方ないでしょう?人かどうかと問われて、それを証明することは難しいと思います。メルギアに、シアン先生とノクター先生、それにクリューもそうですが、人に化けた時の姿は本当に人の姿にしか見えませんから。身体の作りも人の身体になっているそうですし、見分けは出来ないですよ。だとすれば、逆も場合であっても然り、でしょう?」
「ふむ。まあ、姿形を別の種族に変えるなど、我らドラゴンにしか出来ぬ芸当であろうな。そう考えれば、小僧がドラゴンであれば良かったと思える」
「なぜですか?」
「詮無きことだ気にするな」
・・・ええ?そんな意味深なことを言われて気にするなと言われても・・・。気になるよ。




