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約束を果たすために  作者: 楼霧
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第百三十一話 真夜中の攻防 後編

真剣に話を聞いてくれる様子のアーシアに俺は「アーシアの行動は、俺にとって受け入れることが出来ないものです」と告げる。アーシアはひどく傷付いたように顔を歪めると「私のことがそんなにも嫌い?」と聞いてくる。


「好きか嫌いか問われたら好きですよ。但し、あくまでも友達としてですが」

「それなら・・・」


ベッドに手を付いて身体を前のめりにするアーシアを俺は右手を上げて止める。それから、ゆっくりと首を左右に振って見せた。アーシアは持ち上げたお尻をストンと落とすと、眉尻も一緒に下げた。アーシアのとても悲しげな表情に心が痛むが、俺の話はまだ始まったばかりである。アーシアの様子にめげている場合じゃない。


・・・ここからが肝心だ。アーシアに飲み込んでもらわなければ。


「アーシアがどう頑張ろうと駄目なのです」

「・・・どうして?」

「それを語るにはまず俺の恋愛観から話さないと行けませんね」

「ルートちゃんの、恋愛観?」


悲しげな表情をしていたアーシアは、意外なことを聞いたと言わんばかりに目をパチパチとさせてから首を傾げた。どうやら、アーシアの興味を惹くことは出来たようである。俺は少し唇の端を上げながら、アーシアに頷いて見せる。


「そうです。あ、初めに言っておきますが、これからする話はとても個人的な話です。しかも、お婆様やソフィア姉様にもしたことない類の話です。それをアーシアに聞かせる訳ですが、絶対に他言無用でお願いします」


俺がそう言ってアーシアに注意を促すとアーシアは目を丸くしてからクスクスと笑う。悲しげな顔をしていたアーシアに、笑顔が戻ったことに俺はそっと息を吐く。


・・・うんうん。アーシアはやっぱりそういう顔をしてなくちゃ。


「分かったわルートちゃん。誰にも言わない。ルートちゃんの信頼を裏切るような真似は絶対にしないわ」

「絶対ですよ?もし、誰かに喋ったら絶交ですから」

「ふふふ、ルートちゃんったら。ちょっと子供っぽい」

「・・・どうせ俺は子供ですよ。誠に残念ですが、どうやら話はここまでのようですね」

「あぁ、ごめんなさいごめんなさい。機嫌直してルートちゃん」


アーシアに子供扱いされた俺は、腕組みをしてプイッと顔を逸らす。アーシアは俺に向けて手を伸ばしながら謝った。続けてアーシアが「わざとじゃないの、ね?」と訴えたところで、俺とアーシアは笑い合った。ちょっとした悪ふざけだが、こういうことが出来る関係がやっぱり心地良いなと思う。


・・・それが、壊れてしまう可能性はある。だけど、やめる訳にはいかない。さあ、ここからが本番だ。


「それじゃあ、回りくどい話をするのは嫌なので率直に話しますね。俺の恋愛観、俺の理想は父様と母様の様にちゃんと愛し合って結婚をして、それで子供に恵まれることなのです」

「ルートちゃんのご両親ということは、アレックス様とリーゼ様ね」

「そうです。親の背中を見て子は育つ、というのもあると思いますが、父様と母様の仲睦まじい姿を見ていると自分も同じ様にありたいと思うのです。本当に俺の父様と母様は仲が良いのですよ。・・・まあ、惚気話をするのはほどほどにして欲しいですけど」


アーシアが俺の話を聞いて、頬に手を当てながら「惚気話はほどほどにって話、私も分かるわぁ」と賛同してくれる。どうやら、アーシアもうんざりするほど、親の惚気話を聞かされているらしい。俺は同士だと思って小さく笑う。


俺の父であるアレックスは騎士団時代に、同じく騎士であった母のリーゼに一目惚れをした。アーシアの父であるコードネルはエルグステアに訪れた際、アーシアの母となるアイフィンと出会い一目惚れをしている。両親の馴れ初めを考えると、とてもよく似ていると言える。俺は「確かにアーシアのところも仲良いですよね」と頷き返しながら話を続ける。


「アイフィンさんに一目惚れしたコードネルさんが積極的にアイフィンさんにアプローチを掛けて、それで、コードネルさんが見事、アイフィンさんの心を射止めて結婚したのですよね?そういうのって素敵だと思いませんか?」

「ルートちゃんって随分とロマンチストなのね。でも、私も素敵だと思うわ」

「アーシアが賛同してくれて良かったです。それを踏まえて、今回のアーシアの行動を考えて見てください。俺の理想から最も外れた行動だということを分かってもらえますか?」


俺の質問にアーシアはゆっくりと目を伏せると、口を真一文字に結ぶ。必死に答えを出そうと考え込んでいる様子のアーシアが口を開くのを俺はジッと待つ。アーシアには今の話をしっかりと飲み込んでもらわなければならないのだ。


「・・・確かに。今日の私の行動は自分の、いいえ、国のために行ったことで、愛のあるものじゃなかったわ。それはただ利を得るための行動だった。でも、ルートちゃんがきちんと愛し合って、身体を重ね合うことに問題がないと言うのなら、私は、私はルートちゃんに私を選んで欲しい」


アーシアは胸元に手を当ててギュッと握り拳を作りながら口を開いた。今話してくれたアーシアの言葉は、間違いなくアーシアの本心から出た言葉なのだろう。アーシアが俺への真っ直ぐな好意を口にしてくれたことに、俺はそれが嬉しくもあり、後ろめたくもある気分になる。


「アーシアのような美人にそう言ってもらえるのは、とても光栄なことです。でも、アーシアの望みに俺は応えてあげることが出来ません」


俺が首を振って見せるとアーシアは「ルートちゃんはご家族が居るエルグステアから離れられないから?」と言って悲しげな目になる。俺は「それも確かにありますが、もっともっと個人的なことです」と答えるとアーシアは表情を一変させてハッとした顔になる。


「もしかして、ルートちゃん。他に好きな娘が居るのね?エリーゼ?それともエスタさんかしら?同じ冒険者仲間のアンジェかティアという線も・・・あ、クアンちゃんという可能性もあるわね。ラフィさんも綺麗な方だったし・・・」


・・・違うそうじゃない!というか、アーシアはどうして俺の知人である女性の名前を列挙していくんだろうか全く。・・・それにしても、さっきまで悲しそうにしていたのにどうしてこうも楽しそうに話すのか。女の子って本当に恋愛話好きなんだな。


「一人盛り上がってるところ悪いですが、そうではありませんアーシア。もっと根本的な話なのです」

「根本的な話?・・・まさかルートちゃん。女性じゃなくて男・・・」

「アーシア?」


俺はにっこりと笑みを浮かべながら、アーシアの言葉を遮るように名前を呼ぶ。それ以上言ってはいけない、という俺の意思は伝わったようで、アーシアはビクッと身体を震わせると目を泳がせてから「続きをお願いします」と項垂れた。


「はぁ、全く。ここからが肝要だというのに・・・」

「ごめんなさい」

「反省しているのなら宜しい。さて、アーシアに一つ聞きたいことがあります。アーシアは呪いというもの知っていますか?」

「呪い?耳にしたことがあるように思うわぁ。・・・そう、確か曰く付きの装飾品を持つと悪い影響を受けることがあるとか。それを呪いと言ったように思うわ。私が知ってるのはそれぐらいね」

「ふむ、なるほど」


闇属性の禁忌の魔法と言われる呪いは一般的に知られているようなものじゃない。それでも、呪われてしまった装飾品の話を聞いたことがあるというアーシア。さすが商業国家と呼ばれるだけはあって、色々な品物を仕入れているようである。


「その呪いがどうしたの?」

「呪いとは闇属性で禁忌とされている魔法のことです。その効果は、人知れずに相手の能力を減少、消失、吸収することが出来ます」

「そんな魔法があるの?授業では習わなかったけれど、禁忌ということは・・・。人知れず・・・。もしかして、呪いを使われた相手は、呪いを使われたことが分からないのね。だから、禁忌?」


少し視線を落として考え込んでいたアーシアは、すぐに呪いがどういうものか理解してくれたようである。俺はそれに満足しながら頷いた。


「そうです。さすがはアーシア。話が早くて助かりますね。そして、そんな呪いが実は俺に掛かっています」

「・・・え!?」


アーシアは俺が言ったことをすぐに飲み込めなかったのか、間を置いてから目を見開いた。さっきからアーシアの表情がコロコロとよく変わる。でも、それは決して悪いことじゃない。表情を取り繕っていないからこそのものなので、アーシアの素直な気持ちが伝わってくる。


・・・驚きの表情から心配してるって感じの表情になったな。


俺が自分に呪いが掛かっていることに気が付いたのは、俺が十歳を迎えて程なくしてのことだ。俺が十歳となり、片足を大人に踏み入れたからだろうか。それとも二年生になったからだろうか。学園で俺は女生徒から愛の告白を受ける機会が急に増えた。


所謂、モテ期到来というやつだろう。すぐに俺はそう思った。だが、一つ問題があったのだ。俺はどれだけ愛の告白を受けても、一つもピンと来るものがなく、沸き立つ感情がなかったのだ。だから、全て断った。


俺が恋愛に一つも興味を抱けないのは、俺自身がまだまだ子供だからと、基本的に相手が年上のお姉様方だから気後れしているのだと、何より二年前の事件が尾を引いているだと、初めはそう思っていた。でも、そうじゃなかった。色々な原因を考えていく中で、俺はあることに気が付いてしまった。


俺がこの世界に、ルートに呼ばれることになった事件で亡くなった女の子。ルート・エルスタードという少年が初恋をし、守ることが出来ずに死なせてしまった女の子。その女の子の名前が、姿が、声が思い出せなくなっていたのだ。


ルートの辛い気持ちがそのまま流れ込んでくるので、あまり思い返すことがなかった記憶であることは確かだ。でも、それだけで忘れるようなことじゃない。少なくとも俺がルートとして生き始めた頃は、鮮明に覚えていたという事実は覚えている。


ルミールの町、実家の近くにある丘の上に建てられた、その女の子のお墓の前で、俺はルートとして生きることを誓ったのだから忘れるはずがない。それなのにも係わらずに、俺は女の子のことを思い出せなくなっていた。


それに気が付いた俺は当然、どういうことだ?と、女の子のことを必死に思い出そうとした。だが、相手のことを強く思い出そうとするとその瞬間に、決まってズキリと頭が痛くなった。しかも、痛みと同時に、丸で頭の中に霧が出たかのようにますます記憶が不鮮明になった。そこで俺はようやく気が付いた。自分に呪いが掛かっていることに。


「一体、誰が何のために俺に呪いを掛けたのか分かりませんが、その者は俺に思い出されたくないことでもあるのかもしれません。俺に掛かっている呪いは記憶に作用しています。しかも、俺にとって一番大切で何より鮮烈だった思い出を失ったことで、どうやら俺は愛するという感情を失っているようなのです」

「・・・でも、ルートちゃんは今、ご両親のようになりたいって」

「アーシアの言いことは分かります。愛するということが分かっているなら、感情を失っている訳ではないのではないか、ということですよね。でも、駄目なのです。誰かの愛し合う姿を見て羨ましく思えても、いざ自分の身に置き換えた時に、何の感情も湧いてこないのですよ」


アーシアは俺の話を吟味するかのようにそっと目を閉じた。魔法のせいで記憶を、感情を失っているといきなり聞かされても、すぐに信じることは難しいだろう。だが、それでもアーシアには信じてもらうしかない。今の話を目に見える形で証明することはとても難しいのだ。


・・・決して手段がない訳ではないのだが、男の沽券に係わるものなので、正直なところその手段はやりたくない。


「・・・ルートちゃんがその呪いの魔法のせいで、記憶と感情を失っているとして、治す方法はないの?」

「呪いを解く方法がない訳ではないですね」


目をパチッと開いたアーシアは真剣な眼差しで質問をしてくる。俺は方法がない訳ではないことを告げるとアーシアは「それじゃあ・・・」と一瞬、明るい声を出すが、すぐにふるふると首を左右に振って「方法があっても出来ないのね」と視線を落とす。本当に物分かりが良くて助かる。


「その通りです。呪いを解く方法は二つあります。一つは呪いを掛けた本人に解いてもらう。ですが、いつ誰が俺に呪いを掛けたのか分かりません。相手が分からない以上は、もはやどうしようもありませんし、分かったところで、呪いを解いてくれるとは限りません」

「そんな・・・。それじゃあ、もう一つの方法は?」

「もう一つは、掛かっている呪いをさらに強い呪いで上書きして、呪いの魔法を乗っ取ることです。乗っ取ってしまえば、呪いの魔法の発動者が乗っ取った者になります。つまりは、一つ目の方法に戻るという訳です」

「その条件なら、ルートちゃんには出来そうなのに・・・。だって、その口ぶりだとルートちゃんは呪いを判別する方法を持っているのでしょう?」


アーシアはそう言って口をすぼめると、俺が答えるのをジッと待つ。アーシアの言う通り、俺は呪いを可視することが出来るカスグゥエンの眼を持ち、呪いの内容を見極めて解くだけの知識も得ている。実際にすでに幾つかの呪いを解くことにも成功している。だが、今回はその呪いの内容が悪すぎる。残念ながら、おいそれと手を出すことが出来ない類のものだ。


「確かに今の方法は俺に出来ますし、実際にやったこともあります。ただ、今回の場合、大きな問題があるのですよ」

「大きな問題?」

「呪いを乗っ取ると言いましたが、それは掛かった呪いをより強い呪いにすることで可能になるのです。それが今回の場合に意味するところが分かりますか?」


俺の問い掛けにアーシアは青ざめた顔をしながら「記憶をより失う・・・」とかすれるような小さな声で答えた。大正解だ。


「そうです。呪いを乗っ取り解呪すれば、記憶や感情を取り戻せるかもしれません。ですが、呪いを乗っ取る過程で、どれだけの記憶や感情を失うか分かりません。場合によっては、自分が呪いを解こうとしている記憶を失う可能性もないとは言い切れません。もし、そんなことになったら、目も当てられないことになるでしょうね」

「だから、方法があっても出来ないのね」

「そういうことです。・・・ただ、いつかはどうにかしなければならないことだとは思っています」

「それはどういうことなの?」


まだ何かあるの?と言いたげに首を傾げるアーシアに、俺は現在進行形で呪いによって記憶を失って続けていることを説明する。それは決して劇的なものではないが、それでも緩やかに俺のことを侵食していることを。それはルートとしての記憶だけではなく、俺の前世の記憶にも影響を及ぼしていることで明らかだ。


「そんな。今のまま放っておいても駄目だなんて」

「・・・話をまとめると、俺の恋愛観、理想は父様と母様の様に愛し合うこと。でも、そんな俺は愛するという感情を失ってしまっています。あ、ちなみにその反動なのか家族愛や友達愛には溢れているんですけどね・・・。だから、アーシアがいくら俺を望んでくれても、俺はアーシアに応えることが出来ません。もっと言えば、今の俺では誰ともそういった関係を築くことは出来ないでしょう」


全てを話終えた俺はアーシアの反応を待つ。俺に執着することは、ロクアートにとって、アーシアにとってためにならないということは、頭の良いアーシアなら理解してくれたことだろう。あとはその事実をしっかりとアーシアに飲み込んでもらうしかない。


俺はアーシアが納得するのをジッと待つが、明らかに元気をなくしている様子のアーシアを見ているのが少し辛い。勝手なことを言うがアーシアには、俺の部屋に訪れた時のような、元気で楽しげな雰囲気で居て欲しいと思う。


「まあ、これでアーシアは俺の秘密を握ることになりました。しかも、家族にすら話していない物凄く個人的な秘密を、です。初めに言った通り、他言無用でお願いしますが、本人以外には誰も知らないことを知ることが出来て、ちょっと得をしたぐらいに思って頂けると幸いです」


俺は場を明るくするために、今までの話をちょっと茶化してアーシアに語りかける。自分で自分のことを茶化すのは、さすがにちょっと恥ずかしいので頬をポリポリと掻きながら。すると、アーシアは今にも泣きそうな顔をしながら、ベッドから滑り下りると俺のことを優しく抱き締めてくる。


「アーシア?」

「ごめんなさいルートちゃん。本当にごめんなさい。ルートちゃんがそんなことになっているだなんて何も知らずに私は・・・」


アーシアは俺を抱き締めると俺に謝り始める。抱き締められて顔は見えないが、俺の首筋に何か冷たいものが伝う感触があるので、アーシアは涙を流しているのだろう。アーシアは涙を流しながらひたすらに謝ってくれる。俺はアーシアを宥めるために、アーシアの背中に手を回してポンポンと優しく背中を叩く。


「謝らなくても良いのですよアーシア。誰が悪いという話ではないのです」

「でも、でも・・・」

「・・・まあそうですね。本来であればこの話は、旅の終わりに話そうと思っていたのですよ。それを今日、アーシアが押し掛けてきて話さざるを得なくなったのです。まだ、ノクトゥアに着いて初日ですよ?・・・だから、そのことについては、大いに反省してくれて良いですよ」


俺はいつまで経っても謝り続けそうなアーシアの様子に、敢えて自業自得であることをアーシアに告げる。すると、アーシアはぐすっと鼻を鳴らしてから「うん、反省します」と謝るのをやめて返事をしてくれる。それでも、涙は流している様子だったので、俺はアーシアが落ち着くまでの間、アーシアの背中を優しく叩き続けた。



「・・・もう泣き止んだでしょう?そろそろ放してくれませんか?」

「えぇ?もうちょっと。もうちょっとこのまま。・・・何と言ったらいいのかしら。この抱き心地の良さ。ずっとこうしていたいような・・・」

「ソフィア姉様と似たようなことを言わないで下さい」


しばらくの間、小刻みに身体を震わせていたアーシアの動きが止まる。アーシアが落ち着いたようなので、俺は放して欲しいとお願いした。だが、アーシアは放そうとしてくれない。この状況、俺はソフィアのせいで嫌というほどよく知っている。放っておいたら本当にずっと抱き締められっぱなしになるやつだ。


すでに冗談が言えるほどにアーシアは落ち着きを取り戻している。俺はアーシアのわき腹をくすぐって、抱き締める力が緩んだところで、スルリとアーシアの腕から脱出した。


「あん、ルートちゃんの意地悪」

「意地悪ではありません」


手をわきわきと動かしながら残念がるアーシアの様子に俺はホッと息を吐く。完全に元気が戻ったという訳ではないし、目の周りが赤くなってしまっているが、いつもの調子のアーシアに近い姿だ。俺はアーシアの様子に安心したことで、疲れがどっと押し寄せてくるのを感じてとても眠たくなってきた。


・・・さすがに色々とあり過ぎて疲れたな。


俺はアーシアに退室するように促すことにする。


「ほら、結構な時間が経ちましたし、ずっと泣いていたからアーシアも疲れたでしょう?そろそろ自室に戻って休んでください。俺も色々と話して正直なところ疲れました」

「・・・うん、分かったわ。・・・でも、最後に一つだけ」


アーシアは俺の肩に手を置くと身を屈めながら俺のおでこにキスをしてくる。それからアーシアは一歩後ろに下がるとふふっと笑みをこぼしてから、クルリと踵を返してドアへと向かう。


「ルートちゃんが大変なことになっているのはよく分かったし、それが国のためにならないのもよく分かったわ。でも、何が起こるか分からないのがルートちゃんだもの。今は引いてあげるけど、決して諦めた訳じゃないからね」


そんな捨て台詞を吐きながらアーシアが部屋の鍵を開けて、部屋の外へと出て行った。俺はキスされたおでこに手を伸ばしながら「やっぱりアーシアはアーシアだなぁ」と呟く。これからも、アーシアには色々と困らされそうだと思いながら俺は小さく笑った。

という訳で無事?回避。

ちなみに、アーシアと寝てもバッドエンド。

このまま呪いを放置してもバッドエンドです。

次回はアイフィン視点、アーシア視点、ラフィ視点の順番で閑話の予定です。

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