第一話 交わされた約束(強制)
とりあえず、勢いだけで書いてみた。後悔はしてない(多分)
「ルート!」
「良かったわルート」
「ルゥ」
「ルゥ兄様」
朝、目覚めたらルートと呼ばれる少年になっていた。
(なぜ、こんなことに?いや、多分死んだんだな俺・・・)
俺の名前は河瀬哲也。年は、23歳。会社帰りにいつも立ち寄るコンビニに寄って晩飯を買い、さあ、帰宅しようとコンビニを出た矢先、トラックに突っ込まれた。猛スピードのノーブレーキ、いったい何がと思いながら意識が薄れていった記憶がある。
(ということは、あれは夢ではなかったのかな?)
意識が薄れていった後、夢を見ているときの感覚の中、一人の少年と出会っていた。
「僕は結局、守ることが出来なかった」
「いったい何を言ってるんだ?」
「僕は弱かったから守れなかったんだ」
「・・・」
少年は何かを必死に、俺に伝えようとしているのを感じる。
「僕はもう、ダメだけど。でも、大切な人達はまだいる。だから・・・」
「だから、おじさんが代わりに守ってよ!」
「誰がおじさんだ!?まだ、そんな年じゃないよ!」と突っ込もうとしたが口に出来なかった。
少年の気持ちが俺の中に入ってくる感じ、何とも切ない、悔しい気持ちになったためである。
「きっと、おじさんなら大丈夫。僕の大切な人達を宜しく。約束だからね!」
そう言って少年は姿を消した。
俺は、だからといって何をしろと?と考えているうちに目が覚めて、現状に至る。
(夢に出てきた少年がルートだったんだな)
「ルート?ぼうっとして大丈夫?まだ、具合が悪い?」
「大丈夫です、母様。まだちょっと体がダルい感じかするだけです」
「無理もない。あれだけ瀕死の状態だったんだから」
「父様もご心配お掛けしました」
「本当に大丈夫?」
「ソフィア姉様もすみません」
「ルゥ兄様大丈夫?もう、痛くない?」
「痛みは無いから平気だよリリ、心配掛けたね」
「とにかくまだ、安静にしておいた方が良い。休みなさいルート」
「そう・・・させて頂きます父様」
ルートの家族が部屋を出ていくのを横目に安堵の溜め息を吐く。
とりあえず、ルートと呼ばれた少年の記憶は、俺に引き継がれていた。
誰が誰だか分からないといった状態に陥らずに済んだのである。
「さてと、まずは記憶の整理をするか」
ベッドに寝たまま目を閉じてルートの記憶を探る。
家族は、父のアレックス、母のリーゼ、姉のソフィア、妹のリリの五人家族のようだ。
アレックスは、少し赤みのかかった茶色の髪で、歳は38歳。見た目は、細く見えるが身体はしっかりと鍛えられている。いわゆる細マッチョというやつだろう。どうやら、元王国騎士団長で凄腕の剣士だったそうだが、任務中に受けた怪我のせいで利き手が不自由となったため、騎士団を辞め、今は町の警備兵の隊長をしているらしい。
リーゼは、少し淡い金色の長髪で、歳は30代。詳しい年齢が分からないのは、教えてもらえないからだそうだ。一度、聞いたことがあるみたいだが無言の拳骨を頂いたようだ。普段は、おっとりした優しい母親みたいなのだが。女性に年齢を聞くのがタブーなのはどこの世界も同じなようだ。そんなリーゼも、昔は騎士団に勤めていたようで、剣の腕は高くないが少し治癒魔法を使うことが出来るらしい。
(おお、魔法が存在する世界なのか。ちょっとわくわくするな)
ソフィアは、茶色の長髪で、歳は16歳。冒険者ギルドに所属して、冒険者をしている。父親譲りの剣の腕に、母親よりも高度な治癒魔法が使える凄腕の冒険者らしい。ただ、強すぎるせいか常々、「私より強い人としか結婚はしません!」と言っているようで、両親からは「結婚出来るのか?」と少し心配しているそうだ。
(少なくともこの町の男性で勝てる人がいなさそうだが。どれだけ強いんだお姉さん。見た目はとても美人であるのに・・・残念美人?)
リリは、母親譲りの金色の長髪で、歳は4歳。天真爛漫を体現したような弾けた笑顔がかわいいのが特徴的で、「ルゥ兄様ぁ」と言いながらよく抱きついてくる人懐っこい子のようだ。
ただ、たまに一人しかいないはずなのに誰かと話していることがあるらしいのだがどういうことだろう。
(これは、あれだ。シックスセンス的なやつか)
最後にこの身体の元の持ち主であったルートは、少し長めの黒髪で、歳は8歳。姉と妹からは「ルゥ」の愛称で呼ばれている。あまり運動が好きではなかったようで剣の訓練をよくサボっていたようだ。頭は悪くなかったが何も特徴的なところはない。普通の子だ。
(ふぅ、とりあえずこんなところにしておくか。さっきから頭痛がする。記憶を整理したせいかな?それに、身体も怠さが増してきているしな。まあ、身体が怠いのは、あんな目にあったみたいだから仕方がないだろうけど。それにしてもこれって異世界転生だよなぁ?)
ルートは、「これ、何てラノベ?」と呟きながら、深い眠りにつくのであった。