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蒼歴前夜  作者: 深月 涼
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第9話:始まりは人それぞれ 後篇



大地だけで1話。

……こばな、し……?



◆そして結城大地の場合


 俺の家が、他の家と違うということを初めて知ったのは、1年くらい前の事だった。

 昔っから田舎のじいちゃんに不思議な話ばっかり聞かされてきた俺は、この科学全盛の時代にしては、ずいぶんと『めるへん』な思考の持ち主だったと思う。

 けどさ、さすがに10歳にもなって『魔法』とか言われても、なあ?

 

 その日、『本家』だとかいう大きな家に集められたのは、老若男女、様々な人達だった。

 基準が何だったのかまでは分からない。

 けど、一応とーちゃんとかーちゃんも一緒に参加したし、そう厳しい基準とかは無かったんだと思う。

 つか、それどころじゃ無かっただろうしな。


 『異世界』が侵略して来た、なんて頭のオカシな話を世界中が信じるようになったのは、やっぱりその前の、ロボット達の反乱事件があったせいだと思う。

 それまでは、電脳仮想空間とかネットワークとかで、世界中のどこのだれとでもすぐに繋がる事が出来たのに、それ以来、単純な回線でしか繋がらなくなってしまったらしいし。

 まあこの辺は俺の生まれる前の話だからさ、あんまり詳しくないんだけど、気が付いたら世界はこんなになってて、昔に比べたら治安とかも年々悪くなっていっているらしい。……ってこの間ニュースでやってた。


 だから、そんな風になってしまった世界を救えるのは君しかいない!なんて言われても、あんまピンと来なかったんだよな。うお、なにそれすげーかっけえ、とはちょっと思ったけど。

 『召喚器』ビジョンアームは、オレにとっての機械の相棒で生命線。

 俺を勇者だって言った魔導商家とかいう家の人―――まあ、うちの遠い親せきらしいけど?―――に言わせれば、これって本物……の様子が書いてある本とかから情報拾って、見よう見まねで再現したレプリカらしい。

 本物の方は、もうずいぶん昔にどっか行っちゃったんだって。ちゃんと管理しとけよなー、もー。

 で、さっき言ってた集められた人達っていうのは、扱えるかどうかの選考会みたいなもんだったらしい。


 すっごーく昔、この世界に異世界から人が来てたんだと。

 その辺は、じいちゃんからミミタコになるくらい聞かされてたから、詳しいっちゃ詳しいんだけど、長くなるからカット。

 んで、色々あって気が付いたら、その人達の才能とかはもうすっかり薄くなって使えなくなっていたらしい。

 そりゃそうだよな。ずっと長い間、ごく普通の一般人と結婚してたら、そりゃあさ。

 時々、すっごーく遠い親せき同士で結婚とかあったらしいけど、そんなのよっぽどの偶然か、狙ってやらなきゃ出来ないくらい広がってたらしい。何がって、ええっと、血縁?

 だから今回みたいに『召喚器』が使える人を探すのにこれだけ大掛かりになったりする訳で。

 「まるでシンデレラの様だ」って言ったのは誰だろう―――?


 ともかく、俺は『勇者』に選ばれた。で、『異世界の巫女』とやらに会わされた。

 外国の女の子みたいなふわっふわした女の子。それが、オレが『巫女』―――クルルに抱いた第一印象だった。


 ふわっふわとかいう印象は、あっけなく砕け散ったけどな。

 最初っからいきなり無茶振りされたせいでさ!!

 何だよ、いきなり敵の本拠地に行って魔物と契約して来いとか、お前ら頭おかしいんじゃねーの!?


 結果的に俺は相方の黒竜エンドラゴンと契約した訳だけど、あれだって偶然でもなければなあっ!!

 しっかもその次の指令が、またもや異世界に飛んで『対の勇者』を探して来いと来たもんだ。

 さすがに何の情報も無しにそれは無謀だから、ってんで『巫女』が付いて来た訳だけどさ。


 『巫女』ってのは、占いとかで何か当てたり探し出したりするのが得意らしい。

 女の指示に一々従わなきゃなんないのはシャクだったけどさ、何かあったら困るのは俺だし、しぶしぶ従ってた訳。

 エンドラに囮頼んで、『巫女様』は近くの神殿(ただし廃墟もいいとこ)で待機して貰って、俺は独りで敵の本拠地に潜入する羽目になった。


 『対の勇者』なんてものについては、当の『巫女様』も知らなかったらしく、目をまん丸にしてたっけ。

 この辺は、うちの『魔導商家』が調べてたらしいな。

 いわく、「こっちの世界だけに勇者がいるのはおかしい」って事らしいけど、その他にも理由があるらしい。

 ……俺、そんな一気にぽんぽん言われてもわかんねーよ?魔法に関してはドしろうとなんだからさ。

 とにかく、いる!って事になったんだから探さなきゃ、って事になって、巫女が……クルルが占ったら、結果その通りになんか出たらしい。

 なんだかんだあって本拠地の奥までは無事に来れたんだけど、さすがにこの時はすげー不安だったな。

 目立たない様に潜入とか、10歳の子供にやらせんなよなー、大人共。

 一応武器は持たせてもらえたけど、それってホントはお前のじゃないから、みたいに言われて安心なんかできるかっつの!

 親にはひどく反対されたけど、魔導商家が全面的にサポートするからって言われたらしくて。

 ……もしかして何か丸めこまれた?……今の魔導商家、あんまり力無いんじゃなかったっけ?

 商家のおにーさんに姿隠しの能力?魔法?とか使っってもらったらしいけど、俺には効果が分からないのもあって、恐る恐る物音を立てない様に進む。


 その部屋には、何故か鍵が無かった。

 必要無かったのかもしれないな。相手に出る意思がなければ、鍵は必要なかったんだろう。

 手順に沿って侵入した最奥の部屋。そこには俺と同い年くらいのキレイな顔した少年が独り、ぼんやりと座り込んでいた。


 生まれた時から一生幽閉とか、そういうヒドイ事平気でやる様なヤツらだって、改めて思い知った。

 この時かな、俺が本気で勇者のお仕事ちゃんとしようって思い始めたのは。

 エンドラに迎えに来てもらって、何とか無事に脱出出来た。

 その後すぐに幽閉されてた少年―――名前なんて無かったから、俺が『名無し(ロスト)』って付けてやった―――が俺が持ってた武器『魔剣』を介して守護獣ユニペガサスと契約する事になって。

 そんでエンドラとペガサスが時間稼ぎしている間に、3人で地球に戻って来た。

 最後だいぶドタバタしてたけど、無事に戻れてホントほっとしたよ。


 『魔剣』は武器としてだけじゃなくて『召喚器』としての役割もあるらしい。

 元々『召喚器』ってのは武器と召喚と両方の役割があるもんらしかったけど。

 向こうの世界は、そういう魔物を従えたりする為の道具が結構ゴロゴロしてた……ってクルルが言ってた。今はもう多分全部壊されちゃってるだろうけど、とも。


 そうこうしてるうちに、地球の方でも被害が出始めていた。

 出始めるっていうか、拡大?

 あっちこっちで、異世界から来た敵がわいて出るようになって来たんだ。

 俺達は魔導商家とクルルの指示の下、あちこちを駆けずり回る羽目になった。

 そのおかげで、ただでさえ一緒に遊ぶ時間が減ってぎくしゃくし始めてた俺と友達の関係がさらに悪化した、なんて事もあったけどな。

 いいんだ、全部終わったら思う存分くっちゃべってやる。向こうがどう思うかはその時次第だ。クルルとロストが大事なのも本当だし。

 ……なんて、開き直れる様になったのは、氷魚ねーちゃんのおかげかもな。


 地球は広すぎて、世界の全てを救うには俺一人の力じゃ足りないから、この辺の事については魔導商家が全面的にバックアップしてくれてるらしい。

 具体的な事は機密だそうで教えてはくれなかったけど、力が無くなった魔導商家でも、まだ“出現地域を特定する事”と“出現を食い止める事、というか無理やり頭押さえて追い返す事”くらいは出来るらしい。

 ある程度は、だけど。

 そのおかげなのか、今のところ俺たちの活動は自分達の住んでいる町の周辺や、遠くてもなんとか国内で済んでる。

 海外とかどうしてんだろ?って魔導商家のねーちゃんに聞いてみたら、向こうはやっぱり軍とかが頑張ってるらしい。

 それに、国同士の取り決めとかがあるから、そうそう簡単に勇者(俺)を送りこめないんだって。

 ……ま、その分楽だからいいんだけど。


 地球での戦いも激しくなって来て、そのうち敵の幹部っぽいのが出てきたりとかして、俺とロストだけじゃキツくなってきた頃、その幹部の中に、クルルのとーちゃんがいる事が分かった。

 クルルのとーちゃん……グリフィリオスさんは完全に洗脳されていて、俺達の力ではどうする事も出来なかった。……もちろん、魔導商家の力でも。

 でも、奇跡ってあるんだなって初めて実感するような出来事が起こった。

 誰にもどうにも出来なかったグリフィリオスさんに、諦める事無くずっと呼びかけ続けたクルルもすごいけど、その声に応えたのは肝心のグリフィリオスさんでは無くて、朱い燃える炎と激しい雷をまき散らしながら現れた、1羽の大きな鳥。

 その鳥―――サンダーフレアフェニックスは、クルルの『乙女の祈りに応えて』現れたと、そういう事らしいよ?

 後でクルルが自分一人で向こうの世界に行って、わざわざ聞いて来たんだって。あっぶねー事すんなあ。

 正式な契約もその時行われたらしい。気が付いたらクルルの守護獣はフェニックスだって事になってたし。


 結果的に、その時のフェニックスの浄化の炎に焼かれて、グリフィリオスさんは自分を取り戻す事が出来た。

 その分ホントにヤケドしたりとかしたんだけど、結果オーライってやつ?

 だってさ、そのおかげでクルルは自分のとーちゃんとずっと一緒にいられるようになったんだもんな。


 気が付けば仲間も家族もいっぱい増えて、俺んちは一気ににぎやかになった。

 こっちの世界になれる為、とかいう理由で、クルルもロストも、そしてあのグリフィリオスさんも一緒に暮らす事になったからだ。――――――ちなみに生活費は魔導商家の負担。俺が交渉した。

 とはいえ、そんな広くない普通の家だからさ、そのうちどっか引っ越すのかなって何となく思ってたんだけど、結局、出て行く話は1回も出て来なかった。

 『ここが一番安全だから』って魔導商家のおにーさんに言われたけど、あれって何でなんだろう。



 俺がその理由を知るのは、もう少しだけ先の事だ。



 そうして皆、今もここに―――俺の家にいる。

 クルルとロストは、ここにある何もかもが珍しいらしく、一緒にいても退屈なんてしない。

 むしろ、見慣れているはずの俺でさえ、毎日の様に新しい発見があったりしてさ。

 何だか毎日がキラキラしてるみたいだ。


 ……戦闘の無い日に限るけど。



 不安が無い訳じゃない。

 怖くない訳じゃない。

 けど、それでも俺は、この生活を、この世界を守るために、精一杯頑張ろうと思うんだ。


 と、いう訳で、おらっ、クルルとロスト!今日も遊び行くぞー!!

 行き先?決まってんだろ、氷魚ねーちゃんちだっ!!

 









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