表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/12

第3話_邂逅編2話・異世界の美少女

サキを追いかける。

そうサキの墓に望んだ俺が踏みしめたディスガイアの大地。

初めの場所は、草原のど真ん中だった。

何もない草原の真ん中。


『で、ここがディスガイアとかいう世界か。

なんだかすんなり受け入れられちまうんだよな。』


"説明させていただきます。"


『うぉう!!』


いきなり頭に、声が響いた。

いきなりは、辞めてくれ。


"失礼いたしました。"


はっきり言って謎だが、さっきの声と同じだ。

耳(?)をそばだてる。


"ここはディスガイア。

創造と、破壊が繰り返される大地。

あなたの大切な者は、魔王グレニトの元にあります。

魔王を目指しなさい。

さすれば、会える未来が待っています。"


いきなりのネタバレである。

そして、魔王を倒す(?)理由が出来てしまった。


"あなたに、力を授けましょう。

あなたは勇者。

その力をもって、先へとお進みなさい。"


その声とともに、頭に知識が流れ込んでくる。

チートキター。

であるが、当たり前であるかのように俺は冷静だった。

いや、当たり前だったと認識された。


その他のこの世界の知識も流入してきた。

群雄割拠の国家群、魔物の情報、魔王の情報まで。

便利機能である。

ついでに、この国の言葉と、文字も理解した。

うん、なんとか行けそうだ。


"これで、私が出来ることはすべてです。

この世界をお願いします。

また、会えることもあるでしょう。

あなたの検討をお祈りしています。


頑張るんだよ、ケイト。"

そして、声は遠くなっていった。


ん?

あれ?

あの声、母さん?


今頃気づいた。

あの声は、母さんだった。


死んだ母さんが導いてくれるみたいだな。

よし、もう一度人生、頑張ってみるか。


俺はそう心に決め、一番近い村へと歩き始めたのだった。



それから、3時間ほど走っただろうか。

この世界に来てから、体が驚くほど軽い。

途中で何度か、スライムを見つけ、アイテムボックスに入っていた剣で切ったら一撃だった。


剣の名は、"どうのつるぎ"。

うん、ひらがなでそう書かれている。

何にって?

意識すると見えるんだよ。

ステータスを書いた吹き出しが。


これ、すごく便利です。


さっきのスライムも、

"スライム"と表示されていた。


間も無く森に差し掛かる。

そういうタイミングで、天気が変わり、雨が降り始めたのだった。



それから更に、1時間ほど、

森の中をひた進む。


雨以外の音が聞こえない。

平穏なはずの、男一匹、水も滴る何とやら(自称)。

早い話が濡れ鼠だ。


俺は、雨宿り出来る予定の、洞穴に向かっていた。

村までは、2~3時間で着けるが、

雨に濡れて、うっとおしさが限界だった。

そこで、火でも焚こうかと考えている。


辺りを雨音だけが包み込み、走り続けるおれの足音だけが響く。

そして、そのまま洞穴へ無事辿り着ける、、、そのはずだった。


洞穴まであと少し、そう思った瞬間に、驚くほど異質な音と声が響き渡ったのだった。



女性のつん裂く叫び声、それに続いて金属がぶつかり合う音が聞こえる。

重い金属同士のはじけあう音、それに続いて男のうめき声。

鈍い音が聞こえた後、その呻き声も聞こえなくなった。


俺は、出来る限り気配を消し、だが、精一杯の大急ぎで、近づいて行き、木の陰から、気配を殺してそっと覗き込んだ。


そこには、目的の洞穴があった。

貰った知識の通りだ。


洞穴の前には馬車があった。

それなりにしっかりしており、幌もある。

それらを背にして、囲まれる集団がいた。

2人で男女だ。

そして、それを囲む集団がいた。

それが、10名、盗賊だ。


先ほどの音の主たちだ。


地面に何体かの遺体も転がっている。

どうやら、2人と馬車が襲われているようだ。


2つの集団の間には、緊迫した空気が張りつめていた。


囲まれているのは、ローブ姿の2名。

一人は、ローブの下に鎧を着こみ、長剣を手に持ち構え、もう一人は、後ろで怯えている。

顔は、、、見えないな。

吹き出しには、商人と奴隷と書かれている。


囲んでいるのは、髭むじゃらの男たちの集団で、装備はバラバラ、手には包丁程度の刃物を持っているのやら長剣を持っているのやらが見える。飛び道具はなさそうだ。

こちらの吹き出しは、すべて盗賊となっている。


この吹き出し機能、名前が出るわけではないようだ。

わかるのは、名称だな。

人ではなく、アイテム類なら、効能や効果もわかる。


俺は、襲われている二人に加勢することを考える。

だが、身体能力が上がっているとはいえ、ほんの数時間前、日本の高校生だった自分に何かできるかは怪しい。

切られるのが関の山かと考えていた。


刹那、商人が踏み出し、手荷物剣で、盗賊を切りつける。

受けた剣が弾き飛ばされ、僕の目の前の地面に刺さった。

弾き飛ばした方の剣はというと、盗賊の首を飛ばし、そこから血が噴き出す。

一瞬の出来事だ。

人だった物が、肉塊へと変わる。


盗賊たちが、後ずさった。

「あいつ、出来るぞ。」


「お頭、どうしやす?

サルトガがやられた。」


ざわめき立つ盗賊たち。

それを一言で止める声が走る。



「ウルセェてめえら。

待ってろ。目にもの見せてやる。」


比較的立派な剣を持った男が前に出る。

その直後、二本の剣が交錯した。

甲高い音を立て、一瞬の硬直。

その隙に、他の盗賊が、商人に石を投げつけた。


それを腕で弾く商人。

手で弾くということは、そこに隙も生まれる。

次の瞬間、商人の喉元に、盗賊の剣が突き刺さり、

商人の首が飛んだ。

吹き出しも表示されなくなった。


「さすがお頭。」

一人が声をかける。

石を投げたやつだ。


そして、そのお頭と呼ばれた人物が、じりじりともう一つのローブの人影へ寄って行った。

ナイフを両手に握りしめて、後ずさりしている。


だが、すぐに壁が待っていた。


そして、お頭と呼ばれた男が剣を一振り、

ナイフを弾き飛ばした。

そのまま、もう一歩踏み込み、ローブをつかみ、奪い取った。

その拍子に、ローブの人影が、雨でぬかるんだ泥の上に倒れこんだ。


そこには、年は13~14だろうか。朱色の髪の美少女と言える女の子が居た。

「へへへ、いい女じゃねぇか。

高く売れそうだ」


下衆な声が響く。


「その前に・・・」

「おめえら、壊すなよ

売れなくなる。」

等と、やはり下衆なヒネタ笑いを浮かべながら、

お頭と呼ばれた男がにじり寄って行った。


「いや、、、、ご主人様、、、、いや、、、、」




怒りに、熱くなっていく自分がいた。

ロリコンでは無いのだが、目の前の、少女が襲われているのに我慢ができず、完全に冷静さを失いつつあった。

サキに似た面影を見たからだろうか。

なんとかしたい。


勝てる見込みは薄い。

後ろから行けば、一人は切れるだろう。

なんとか、親玉を切れば、状況は変わるのだろうか。

俺は、何もできず、殺されるだけなのだろうか。

その時の自分の中では、葛藤があった。



だが、下衆な笑いを浮かべた盗賊の親玉。

その男が、剣を少女に突きつけ、

ビリっ!!

服を切り裂くのを目の当たりにした俺は、熱くなった。


次の瞬間には、剣を引き抜き盗賊へと向かっていく自分が居た。



まず目の前の、邪魔になった手近な一人を切り飛ばし、親玉向けて突撃する。

奇襲に面喰った他の奴らは、突然の事に、動くことはなく、親玉の場所に俺は滑り込んだ。


身体能力に任せ、切りつける。

技術やらなんやら、高校生に求めるな。


しかし、親玉はそれなりに経験を積んでいるようで、

俺の初撃を受け止め、弾き飛ばし、返しざま切りつけてくる。

遅くてあくびが出る、、、と言うことはないが、剣筋が見える。

勇者補正、スゲぇ。


俺は剣が届かないところまで飛び退き、剣を投げつける。

投げた剣を、奴は自分の剣で弾き飛ばした。

あいつもスゲぇ。

あの剣見えたのかよ。

だが、隙は十分だ。

俺は懐に入り、拳を握りしめ、右腕で奴に切りつけた。


そして、これが決着となった。


その直後、

親玉の体が力を失い、崩れ落ちた。

地面には、血だまりができ、

その血を噴き出した亀裂が、奴の胸に生まれている。

俺が、俺のスキルで生んだ魔法剣"オーラソード"で切った跡だ。


俺の右手から、刃渡50センチほどの金色の刃が生えている。


「おい

あいつやばいぞ。」

「ああ、お頭が、、、」


「逃げろ!!」


奴らは、慌てて踵を返し、森の中へと逃げてく。

追いかける必要はない。

追いかけることもできない。


実は、ちょっと腰が抜けている。

なんか締まらんな、俺。



奴らが去った後思わず、

『助かったぁ、、、

向かってこられなくて良かったぁ。』

と本音も漏れてしまった。


初めて人を切った。

人のためではあるが、この衝撃は凄まじい。

今頃恐怖がよみがえり、足が震えていた。


それから、5分はかかっただろうか。

自分の恐怖を中に押し込め、

先ほどの女の子に話しかけられるまで、回復した


ちょっと、声が震えているのはご愛嬌だ。


『俺は、ケイトという。

君は・・・・・』

「ぐすっ、、、

シャリアです。」


彼女は、まだ震えて泣いている。

俺はとりあえず、洞穴に彼女を連れ込んだ。


いや、さすがに無いですよ?

ロリコンじゃ有りませんから。

ちょっと、ぱっと見人攫いみたいなだけですよ?


それからしばらくの時間が経ち、辺りは完全に闇の中。

俺は、その辺りにあった、乾いた木を探し、火魔法で火をつけ、暖をとった。

さっきの馬車に、新品と思しき服が積まれており、何とか着れそうなので、拝借している。

彼女も着替えさせないと冷えてしまうから、他にあった服を渡して着替えさせた。

その間、俺は、外の木と睨めっこして勝ってきました。

流石に、直視する勇気はまだ有りませぬ。

本人はいて欲しかったらしいですが。


落ち着いた彼女は第一声、

「、、主人を失いました。」

そう、弱々しく告げた。


そして、なんとか絞り出した声で、

「、、ご主人様になっていただけませんか?

何だってしますから。」

と。


俺は、真剣に考える。

これは美味しいシチュだが、この後のことを考えるとわからない。


悩む俺に対して、

「他の誰かに捕まれば、私はその人の奴隷にならなければならないんです。

そんなの嫌です。

助けてくれたあなたの奴隷にしてください。」

真剣で、意思のこもった目で頼まれた。


そうなると俺は断れない。

俺は了承することにした。


『わかった、主になる。

どうすれば良いんだい?』


お、おれちょっち優しくできたかな?


「魔力で契約を。

私の奴隷紋に、あなたの力を流してください。

主が亡くなった今、新たな力を流せば、契約が可能です。」


『そうか、やってみようか。

奴隷紋というのは、どこにあるんだい?』


そう聞くと、彼女は恥ずかしそうに着衣のボタンをはずし、可愛い胸をさらけ出した。

いや、せっかく俺、睨めっこしてたのに。


そして、そこには、黒い魔法陣が見えるのだった。


彼女が俺の手をそこに導く。

「触れて、力を送り込んでください。」


先ほどの剣を出した時とは違う、柔らかいものをイメージしながら、彼女に送り込んだ。

そこにあったものも柔らかかったですけどね。

「うっ、、、、」

一瞬うめき声を上げた後、その魔法陣が輝き始め、収まった時、その印が、俺の右手に有る紋章に似た紋章へと変わったのであった。


「え、これは、、、、精霊の紋章、、、」

『どうやら、俺の右肩と同じような紋章のようだな。ちょっと違うが。

ほら。』

俺は、自分の紋章を彼女に見せた。


「勇者様・・・・」


そういった彼女の声が耳に響いたのだった。


俺の右肩には紋章がある。

母さんから力を与えられた時についたものだ。


この世界では勇者の紋章として広く知られているようだ。

母さんは、何も言ってなかったしな。

詳細は知識にあるが、どう認識されてるかまでは無い。

あ、でも勇者とは言われたっけ??


まあいい。

俺が力を流したことによって、彼女の吹き出しに出る文字が変わった。

"シャリア:種族 獣人 ♀

職業 勇者(炎)

祝福(精霊勇者)

勇者7星"


うん、意味がわからない。

まず、職業は奴隷ではなくなって、謎の"勇者"それも炎属性らしい。

髪の色かな?


仲間にすると、これくらいの情報が見えるようになるようだ。


それから、彼女の身の上話も聞いた。

ひどい話だ。


彼女の村は、魔物の襲撃で滅び、その後人間による奴隷狩りがあった。

村が滅ぼされたりすると、そこに行って、奴隷狩りをするものが現れるそうだ。

金のためとはいえ、何ともひどい話だ。

彼女は、奴隷狩りの際につかまり、奴隷に落とされた。

その時に犯されなかったのは、金のためだろう。

美人は、処女かどうかで、値段が大きく違うらしい。

ブサイクはその時点でお慰み、うーむ。


買い取った奴隷商の手により、

街で、読み書き計算を覚えさせられた後、今日亡くなった主人に買われた。

商人は、彼女を買い取り、商売のスタッフとして考えていたらしい。

どう見ても賢そうだからな。

この子。

自分の商売のコツなどを、旅すがら教えていたとのことだ。


亡くなった商人は、

この国の首都に居を構える商人で、今回は、この近くの村に商売に来た。

シャリアにとって一度目の旅で、雨から退避したところで襲われて、結果がこの状況らしい。

亡くなった主人は、いい人だったようだ。

いい人を失うのは惜しい話だ。


お陰様でシャリアが手に入ったが。


そして、続けてこの情報はいるのかは知らないが、彼女は恥ずかしそうに、生娘だと言っていた。

それで、奴隷の値段が変わるようだから、重要なんだろう。

俺にも重要か。




それから、しばらく休んでいると、雨がやんだ。

俺の足もさすがにしっかりしてきた。

空に陽も差してきた。

火も消えているから、寝ていたようだ。

何かに襲われなくて良かった、、、、。


立ち上がって、埃を払った俺は、シャリアに声をかけた。


『俺、墓、作るわ。』

「私も、お手伝いします。」

それから俺たちは、馬車に積まれていたショベルで、穴を掘り始めた。

半日ほど掘っただろうか?


俺たちは、掘った穴に自分が切った盗賊やら、切られた男やら、その他の遺体を埋葬した。

盗賊はまとめて一つの穴に放り込んで土をかけ、それ以外はひとつづつ穴を掘った。

最後に、切られた男を埋めた穴の上に、商人が持っていた剣を刺した。

銅より一つ上の、"てつのけん"だが、歯こぼれしているし良いだろう。

墓標の代わりだ。


それ以外の使えそうなものと、金は集めておいた。


結構な長時間かかっていたので、

盗賊が戻ってくる可能性もあったが、そうはならなかった。

恐れてくれたのだろうか。

彼女が近くに咲いていた花を手向けたのを確認し、声をかけた。


『近くの村に、一度行ってみようと思っている。』


「亡くなったご主人様も向かっていました。

そちらにお売りする予定の品も積んでいます。」


『じゃあ、それも届けるか。

悪いが、これからよろしくな。』


「はい。

精一杯御使え致します。」


この子、あらやだ、賢すぎる。



「マスターとお呼びしてもよろしいですか?」

『ああ、かまわないが、、、、。』

「ありがとうございます。

では、マスター、ここにある馬車と積荷をお納めください。

マスターに権利があるものです。

準備ができましたら、これに乗り、村を目指しましょう」

そういって、彼女は、準備を始めた。

もう、前の主人に未練もないようだ。

この世界は命が安いから仕方がないのだろう。


洞窟の中に多少の物品と、あたりに散乱した装備品等使えそうなものを集めていった。

もちろん、俺も手伝う。


奴隷に物を所有する権利はなく、彼女には権利が無かった。

俺は奴隷ではないから、俺には権利がある。

そういうことらしい。

まぁ、彼女はすでに奴隷ではないのだが。

それは後で伝えよう。

街に行った後は、シャリアの好きにすればいい。

金も多少は渡せるしな。


それらの作業が終わってから、彼女が馬の手綱を持って、出発した。


俺?

日本の高校生って、馬車に乗れるの?

って感じだ。


こうして、俺は、

馬車、馬車に積まれた装備品・交易品、少々のお金を手に入れ、

シャリアを、初めてのパーティーメンバーとして加えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ