第1話_新たなる異世界の日々へ
『ふぅ・・・・なんとか、なったな。』
俺がこの世界に降り立ってから、既に、5年の月日が流れている、、、らしい。
らしいというのは、俺にそれだけの実感が伴わないからだ。
実感があるのは2年程。
残りは俺が眠って(?)いる間に過ぎ去った。
そして、そのことを俺に伝えたのは、
目の前の紺碧の髪に整った顔立ちの美女。
印象は違うが間違えようはない。
"俺の"シャリアだった。
「マスター、お怪我はございませんか?」
『ああ。問題ない。
お前こそ、大丈夫か?』
「はい。問題ありません。」
そう答えた彼女の、その艶艶した表情に、どうも俺は弱い。
俺が弱くなったのか?
元々強くはない。
だが答えは、否である。
俺が"見無い間"に、急成長を遂げた。
少女から、女性へ。
魅力倍増した彼女に、俺もたじたじになっている。
こいつを俺のものとした時、こいつはまだまだ子供だった。
そして、俺の記憶で昨日、現実の時間で3年ほど前、彼女はまだまだ少女だった。
俺にとっての一瞬、この3年という期間は、彼女を変えてしまった。
『少女から大人の女性、、か』
「え?」
『いや、すまん。美人になったと思って。』
「えぇ〜〜〜」
あ、やっちまった。
おれは、イタリア人ではないはずなのだが。
真っ赤になり、うつむいているシャリアが、、、、
かわいいなこいつ。
それはさておき、このままというわけにはいかない。
作業にかかろう。
いつまででも眺めて居たいのはやまやまだが、時間は迫ってきている。
『さて、やるか』
シャリアに声をかけながら、俺は、"それ"に向き合う。
薄暗い空、重い空気、永遠に続くようにも思える荒野、地球にあるサバンナのような光景といえばわかるだろうか。
暗くはないが、太陽はない。
閉塞感はあるが、暑かったり寒かったりもしない。
不思議な空間ではある。
俺が向き合っているのは、魔獣の山、
俺が屠ったものだ。
せっかくの素材だ。
回収しておかなければ勿体無い。
方法はシンプルだ。
俺のアイテムボックスに入れるだけ。
入れる方法は、手を対象に向け、念じるだけ。
ただ、面倒なことに、一定のエリアしか対象にできない。、
視認する必要もある為、手前から順番、上から順番だ。
ボックスに回収して仕舞えば、後は便利機能満載である。
死体のままでも保管できるし、ボックスに"解体"機能も付いている。
もし、素材以外のいわゆるドロップアイテムがあれば、それもリストに並ぶ。
手に持ってなかった剣やアイテムが残ることもあるが、異世界のご都合仕様であると、考えるのは諦めた。
猫くらいの大きさの、小さめの狼が、謎のコートを残したりするわけで、初めての時は、びっくりしたのも、もうかなり昔の話になってしまった。
ってなことは置いておいても、便利なご都合機能バンザイだ。
ナイフで剥いたりする必要はないのだから。
ちなみに、俺のアイテムボックスの容量には上限がない、、、、、というか、今のところ入らなくなったことは無い。
この世界に来た時、精霊に与えられたチート能力で、色々と便利だ。
お陰様で、相当な物が入っている。
食材換算したら、一国を数年養えるのでは無いだろうか。
実際に、一時的に一国の最前線を養った事もあるが、まぁ俺にとっては今更だ。
あの時は、王都で、店の食料を買い占めて持って行ったっけ、、、、、。
1時間程度は掛かっただろうか。
全ての魔物を回収した。
また、ここの主である、ダークデーモンである、魔人ドレアムの遺骸も回収した。
魔人となると、通常の魔物と違い、人に劣らぬ知能を持ち、力も持つ。
そして、特殊能力として、魔物を溜め込んだ、異空間を持っている。
今いるここがそうだ。
この空間は、魔素に満たされている。
だから閉塞感がある。
俺たちは、魔人に挑んだタイミングで、この空間に引きずり込まれた。
多数の魔物を擁し、まそを満ちさせた空間での最終決戦だった。
そして、この魔神は強かった。
死闘だった。
結果、俺が大地を踏みしめているが、実際、かなり危険な戦いだったと思う。
今は、魔法で回復したが、腕はもげそうになるは、立てなくなるわだった。
また、勇者としての力に救われた一戦だった。
回収し終わった為か、俺の体が重い。
だが、主が死に、俺のボックスへと回収した今、この空間が閉じるまで、ほとんんど時間はない。
空間が無に帰るのだ。
『空間が揺らぎだした、脱出しよう。
予定通り、ステラでいいか?』
「はい、お願いします。」
『じゃあ、飛ぶぞ』
彼女が頷いたのを確認して、俺はワープを念じた。
行き先はステラ。
俺の冒険が始まった国。
本来なら帰りたくないが、一応の事情は聞いている。
シャリアが勧めるその街に、俺は数年ぶりに"帰還"するのであった。