1話目
真っ白な世界に沢山の人で溢れている。
この世界に居る人を二つに分けると、白い人と白くない人が居た。
この場所には、至る所に大型のディスプレイがありPVが流れていた。
ディスプレイからは雄大な大自然が映し出され動物達の営み、幸せそうな人々、手から炎を出して獣を追い払っている人などが写し出されていた。
白い人は近くに居る人に話しかけ誘導している、話し掛けられた人は少し話した後人が並んでいる場所に向かって行った。
白い人は、また近くに立っていた人に話し掛けた。
「初めまして調停者と申します。不躾で申し訳ありませんが現状把握していますか?」
白い人改め調停者はボケッと突っ立っていた男に話し掛けていた。
「登山に出かけて、スズメバチに刺された事までは覚えています。以前刺された事が有りましたので、死んだ事は分かりますが………ここはあの世ですか?」
男は不思議そうに調停者に聞いた。
「ええ、ご理解が早くて助かります。貴方はこの度は永眠いたしました。そして亡くなった方には新しい人生を歩んで頂く為にこちらで世界を紹介させて頂いております」
「へ~そうなんですか」
「はい、個々には様々な世界が有りまして47万個程バリエーションが御座ます。きっと貴方が望む世界があると思います。大まかに分けて『超文明』『魔法世界』『新世界』に分かれています」
調停者は誇らしげに胸を張った。それもそのはず調停者とは、すべての世界を管理している責任があるからだ。
「『超文明』『魔法世界』『新世界』?それはどういったものですか?」
男は右手で自分の顎を掴みながら質問した。
「『超文明』とは科学技術が発展しており惑星間航行が出来る世界です。『魔法世界』は魔法技術のみが発達している世界になります。そして『新世界』は、科学技術が惑星間航行以下魔法技術未発達である世界になります。また出来たての星も含まれますので文明が無い事も有ります」
「僕はいずれかの星に転生するのですか?」
「えぇ、そうです。一応希望などは伺っておりますが………ご希望通りの世界に行けるとは限りません。特に戦争や内紛の起こっていない世界や豊かな世界などは抽選になっております」
調停者は申し訳なさそうに身を縮めた。
「いえ、気にしていませんよ。一番人気な世界は何処なんですか?」
男は、苦笑しながら聞いた。
「一番人気の世界は『クーバン』となっております。ここでは衣食住が保証されており働く必要がない世界です」
「おぉ、正に天国のような世界ですね。では一番人気のない世界は何処ですか?」
「そうですね……『フミール』ですね。この世界は抽選無しで転生出来ます。詳しくお聞きになりますか?」
「お願いします」
「『フミール』はとても大きな星で、貴方の出身の星『地球』の179.850倍位の大きさになります。
知的生命体も多く居まして有名なのが『人族』『ドワーフ族』『エルフ族』『ドラゴニュート族』『獣人族』『天上族』『魔族』です。
魔法と科学が有りまして、場所によっては中世~近代位発達しています。地球の179.850倍でありながら、一年間は365日、一日24時間、季節は春夏秋冬となっております。
このサイズの惑星ですと時間や季節などがおかしいのですが、魔力にて無理やり調整しているからです。
こんな大規模な調整をしているので、魔力は何時も枯渇気味です。
『フミール』に住む者たちは魔法を使用します。己の精製した魔力なら問題ないのですが大半は大地や空気に含まれる魔力を吸収して発動します。その為さらに少ない魔力が減っているのです」
男は目を閉じ何かを考えているようだ。
「近い将来、世界が滅びるので人が少ないのですか?」
「いえ、そうではありません。それをさせない為の調停者です。魔法がない世界の人々は全て魔力を精製する事が出来ます。その人達に『フミール』に行ってもらえるようにお願いしているのです」
「しかし、魔力を精製したところで使ってしまっては意味がないのでは?」
「いえ、どんなに一流の魔法使いでも魔法を発動すると何%の魔力が空気中に拡散してしまうのです。また魔力を使わない時でも、上限以上の魔力は拡散してしまいます」
男は感心しながら頷いていた。
「良く出来ていますね。でも人数制限無しとは………よっぽど人数がたりていないんですか?」
調停者は肩を落としながら答えた。
「今のところはギリギリです。多く人を呼び込む為に特典など用意しているんですが……」
「特典?」
男の目が一瞬怪しく光った。
「えぇ、転生の際色々特典を付ける事で気を引いているんですよ。よけれはご覧になりますか?」
「えぇ、お願いします」
調停者は薄いパンフレットを取り出し男に渡した。
「どれどれ」
男はそう呟くと食い入るようにパンフレットを見だした。
内容は、「惑星について」「種族について」「魔物について」「転生特典について」この4つに分かれている。惑星について」と「種族について」は先ほど聞いたものと変わらないようだ。「魔物について」と「転生特典について」は初めて見る。
「転生特典について」
転生の際、下記のジョブを取得出来る。
ランクはS~Eの六段階
1 勇者 すべてのステータスに恩恵あり、
体力 B 魔力 C 筋力 A 魔度 B 素早さ B 防御力 A
属性
火 B 水 B 風 B 土 B 光 B 闇 B 無 B
本人の資質より変動
ポイント
魔法と物理攻撃のバランスのとれたジョブ。ずば抜けて高いランクが無いので、器用貧乏になりやすい。
2 賢者 魔法に恩恵あり
体力 E 魔力 S 筋力 E 魔度 S 素早さ E 防御力 E
属性
火 S 水 S 風 S 土 S 光 S 闇 S 無 S
本人の資質より変動
ポイント
魔法関係以外はとても低いが、魔法のみならば、圧倒的である。
3 武芸者 体力などに恩恵あり
体力 S 魔力 E 筋力 S 魔度 E 素早さ A 防御力 A
属性
火 E 風 E 土 E 光 E 闇 E 無 E
本人の資質より変動
ポイント
魔法関連は低いが、体力などのステータスは高い。
4 調教師 魔物の融和性上昇
体力 D 魔力 C 筋力 D 魔度 C 素早さ C 防御力 D
属性
火 C 水 C 風 C 土 C 光 C 闇 C 無 C
本人の資質より変動
ポイント
魔物を仲間にする事が出来る。
スキル「魔物との親近感」取得済み(魔物との親近感上昇、捕縛率上昇、)
5 魔導士 魔道具を作成する際の恩恵あり
体力 D 魔力 C 筋力 C 魔度 C 素早さ D 防御力 C
属性
火 C 水 D 風 C 土 C 光 D 闇 D 無 C
本人の資質より変動
ポイント
スキル「魔道具とは?」習得済み(魔道具の基礎、魔道具作成時品質向上、魔道具作りの才能)
6 作り出す者 物作りの際品質向上
体力 B 魔力 D 筋力 B 魔度 D 素早さ C 防御力 D
属性
火 E 水 E 風 E 土 E 光 E 闇 E 無 E
本人の資質より変動
ポイント
農場や職人などに恩恵あり。
スキル「品質向上」取得済み(物作りの際品質が良くなる)
7 交換する者 魔力と物を交換する事が出来る
体力 E 魔力 D 筋力 E 魔度 E 素早さ E 防御力 E
属性
火 E 水 E 風 E 土 E 光 E 闇 E 無 E
本人の資質より変動無し
ポイント
スキル「魔力交換」取得済み(魔力と物品を交換出来る)
担当調停者が初期設定をミスした為、ステータスが圧倒的に低く魔法は使用不可能。
基本スキル
すべての職業が持っているスキル
1 アイテムボックス 制限あり
2 鑑定眼 制限あり
3 絶対保護 5歳までは衣食住が保証されている。
4 記憶維持 転生の際前世の記憶を残すか選択出来る。
ランク
レベルアップ時の上昇率 体力 魔力
S 18~16
A 15~13
B 12~10
C 9~7
D 6~4
E 3~1
レベルアップ時の上昇率 筋力 魔度 素早さ 防御力
S 12~11
A 10~9
B 8~7
C 6~5
D 4~3
E 2~1
「魔物について」
「フミール」には魔物と呼ばれるモンスターが居ます。この魔物は空気中や大地の魔力を吸収して成長しています。討伐すると魔力が解放されますので、見つけたら討伐する事をお勧めします。
また、討伐する事により経験値や討伐ポイントを獲得する事が出来ます。
討伐ポイントとは、モンスターを討伐すると手に入るポイントです。一定数以上でスキルや物と交換出来ます。
「パンフレットはコレしか無いのですか?」
男は眉間にシワをよせながら質問した。
「えぇ、申し訳ありません。詳しくご説明致しましょうか?」
「いえ、質問しても良いですか?」
「構いません」
「まず、『フミール』ではレベル制なんですか?その場合は上限は有りますか?」
「レベル制については『はい』です。上限などはございません」
「戦闘ジョブと比べて、生産職とのステータスの差が激しいのは何故ですか?」
「それは戦闘職はモンスターを倒し魔法を使う事が多い為です。どの職業も長所と短所が御座います」
「『交換する者』のステータスが低すぎると思うんですが?」
「はい、『交換する者』は最弱のステータスになっております。普通の人のステータスの半分ぐらいです。
『交換する者』は魔力と物を交換する事が出来、47万の世界に有る物すべて可能です。
ただし交換の際膨大な魔力が必要になりますし、惑星が遠くなる事でさらに必要魔力が多くなります。例外は『フミール』の物と自分が住んでいた星に有る物です。これらの物は距離に関係なく一定量になります」
「凄すぎる効果ですね!多くの人がこの職業を選んでいるんですか?」
「いえ、この職業は膨大な魔力を必要としています。その為、お米ですと1kgで436の魔力が必要になります。また、最低数が決まっていますので非常に使いづらいです。
多くの方は『勇者』『賢者』『武術家』を選んでいます」
「ちなみに、初期の魔力はどのくらいですか?」
「だいたい1~100の間です。『賢者』や『勇者』が高く『武術家』や『交換する者』は低い傾向があります」
「全く使えない職業なんですか?」
「いえいえ、優れている点は水の交換ですね。魔力1で10Lと交換できますので、砂漠などでは便利です。また、魔力量の少ない物であれば交換できますので全く使えない訳ではないです」
「なるほど、交換できるリストなど有りますか?……あぁ、それと魔力はレベルアップ時にしか増えませんか?」
「あぁ、そうですね。魔力と体力はレベルアップ以外で二つの方法が有ります。
一つ目は、魔力、体力を100万消費することで1づつ増えます。
二つ目は、レベルアップの際ボーナスポイントが出ますのでそれを振り分ける事で増えます。ポイント1で1増加します。
現在はこの方法でのみ増加を確認しています。………交換物のリストはこちらになります」
調停者は胸ポケットから、ポケットより大きなサイズのクリップボードを取り出した。
「見させていただきます」
男はパラパラと紙をめくりあるページでめくるのを止めた。そして満面の笑みを浮かべながら調停者に話しかけた。
「『フミール』に転生したいんですが。どうすれば良いでしょうか?」
「それなら、あちらにある3番の受付に行ってください」
「調停者さん、説明有難うございました」
「いえ、こちらこそ良い人生を」
調停者は微笑むと近くに立っている人に話しかけ始めた。そして、男は3番受付に足を進めた。
男は待たされることなく3番受付に来ていた。
「すみません『フミール』に転生したいんですが。どうすれば良いですか?」
「では、こちらの用紙にチェックマークをお願いします」
受付の調停者は一枚の紙とペンを出し微笑みながら渡してきた。
「分かりました」
男は、用紙を受け取るとチェックマークを付け始めた。
転生時の際、記憶の受け継ぎを行いますか?
はい ● いいえ ○
性別を選択して下さい。
男 ● 女 ○
職業を選択して下さい。
1 勇者 ○ 2 賢者 ○
3 武芸者 ○ 4 調教師 ○
5 魔導士 ○ 6 作り出す者 ○
7 交換する者 ●
以上
「これで良いですか?」
チェックマークをつけ終えた男は受付の調停者に渡した。
「はい、こちらで大丈夫です。すぐに転生されますか?」
「はい、お願いします」
「では、こちらで横になって下さい」
受付のすぐ隣にカプセル型のポットが置いてある。
「はい、こちらに横になって下さい。すぐに済みますので………横になりましたね。では目を閉じて下さい。それでは良い人生を」
男がポットに横たわり目を閉じると蓋が閉じていく、そして再び開いた時には男の姿は無かった。