1-2
「ってテンポ良くしたいところだけど、取り敢えず隠れよう」
「え?」
「隠れる?」
二人の怪訝そうな顔を見て、華奈は肩をすくめて口を開く。
「まぁ、こんな怪しい場所で、しかも見渡しの良い所にいつまでも突っ立てちゃまずいからね」
華奈の言い分に、美桜と麻音はそうか、と頷く。
華奈はぐるりと周囲を見て、硝子張りの温室らしき建物に目を留める。
「あの温室の近くまで行こうか」
温室はそう遠い場所になく、身を隠すにはもってこいだ。
それに、ああいう建物は簡単には立ち入れない筈だ。
(セオリーでは、ね)
「あたしは後ろに付くから、二人は一緒に行って」
「いいの?」
「うん、行って」
「匍匐前進とかやった方がいい?」
「出来るならね」
「すみません普通に行きます」
美桜の言葉を最後に、二人が走って行く。
その背中を見て、華奈は思った。
特別そうな庭だったのは、不幸中の幸いだと考えるべきだ。
これから何があろうとも。
(それにしても……)
―――なんて、
(ああ、いけない。二人を追わなければ)
何処かへ行きそうになる思考を華奈は引き戻した。
そして、最後に一度、周囲に視線を走らせてから、先に行かせた二人を追いかけた。
その直ぐ後、彼女達のいた場所から少し離れた茂みで、二つの影が揺れた。