表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/35

5 【雑談】後輩が遊びに来ています【リュシア】

 夕方。



 配信開始。


 いつもの机。


 けれど今日は、 少しだけ賑やかだった。


『こんばんは』


 里愛の声。


『今日は、その……後輩の子が来ています』


 画面の外から、 ぱっと明るい声。


『こんばんはーっ!』


 コメント欄。


 > 誰!?

 元気

 温度差すごい

 声かわいい




『江那ですっ』


『先輩のお家にお邪魔してます!』


 コメント欄。


 > 先輩呼びだ

 後輩ちゃんだ

 人増えると空気変わるな




 里愛は少し困ったように笑う。


『今日は、紅茶を淹れます』


『二人分です』


 机の上。


 ティーポット。 白いティーカップ。


 里愛は静かな手つきでお湯を注ぐ。


 その横で、 江那はそわそわしていた。


『すごい……』


『本当に配信してるんですね……!』


『先輩、配信者さんなんだ……』


『ええと、そういうわけでは』


『お金を稼ぐために必要だと聞いて』


 コメント欄。


 > 動機が生々しい

 生活力0のお嬢様感

 かわいい




 江那は目を輝かせる。


『すごいです!』


『自分で稼ぐって、かっこいいです!』


 里愛は少し考える。


『節約もしています』


『人の暮らしを体験しています』


 コメント欄。


 > 人の暮らし

 言い方w

 どこ育ちだよ

 箱入りすぎる




 江那は笑う。


『先輩って時々すっごい変なこと言いますよね!』


『そうでしょうか……?』


『普通ですよ?』


 コメント欄。


 > 普通じゃない

 通常営業




 里愛は首を傾げながら、 棚から缶を持ってくる。


『今日は、家から送られてきたスコーンがあります』


『食べますか?』


『食べます!!』


 即答。


 コメント欄。


 > 元気で草

 後輩ちゃん良いキャラしてる




 里愛は缶を開ける。


 甘い香り。


 トングで、 ひとつずつ丁寧にスコーンを皿へ移していく。


 こと、と静かな音。


 江那はその様子をじっと見ていた。


『先輩って、本当にお嬢様なんですね……』


『……?』


『普通では』


『違いますよ!?』


 江那の声が少し大きくなる。


『トングでスコーン取る人、初めて見ました!』


 コメント欄。


 > 草

 確かに

 育ちが出る

 手で取らないんだ……




 里愛は少し考えてから、


『手で触ると崩れますので』


 真面目に返した。


 コメント欄。


 > 理屈は正しい

 でも育ちが良い




 江那は楽しそうに笑っている。


『なんか、先輩見てると安心しますね』


『安心……ですか?』


『はい!』


『静かで、優しくて』


『あと、紅茶いい匂いです!』


 コメント欄。


 > 癒し空間

 後輩ちゃんが視聴者目線

 分かる




 里愛は少しだけ目を伏せる。


『……そうなら、良かったです』


 湯気が揺れる。


 静かな部屋。


 けれど今日は、 いつもより少しだけ温かかった。

深夜。


匿名掲示板サイト《裏窓ログ》。


【今週見つけた新人配信者を雑に語るスレ part131】



---


102:名無しの観測者

今日のリュシア配信めっちゃ良かった


103:名無しの観測者

後輩ちゃん回な


104:名無しの観測者

急に賑やかだった


105:名無しの観測者

でも空気壊れてないのすごい


106:名無しの観測者

江那ちゃん可愛かった


107:名無しの観測者

先輩大好き感すごい


108:名無しの観測者

「先輩すごいです!」

↑犬みたいだった


109:名無しの観測者

分かる


110:名無しの観測者

あの子視聴者目線だったな


111:名無しの観測者

「先輩って本当にお嬢様なんですね……」

↑みんな思ってた


112:名無しの観測者

トングでスコーン取る女


113:名無しの観測者

育ちが良すぎる


114:名無しの観測者

しかも本人無自覚


115:名無しの観測者

「崩れますので」

↑真顔なの面白すぎた


116:名無しの観測者

悪意ゼロだから強い


117:名無しの観測者

あと地味にヤバかったの


118:名無しの観測者

どこ


119:名無しの観測者

「人の暮らしを体験しています」


120:名無しの観測者


121:名無しの観測者

どこの箱入りだよ


122:名無しの観測者

節約配信のはずなのに生活感が上流


123:名無しの観測者

でも嫌味じゃないんだよな……


124:名無しの観測者

なんか見てると浄化される


125:名無しの観測者

後輩ちゃんが楽しそうなの良かった


126:名無しの観測者

リュシアって一人だと静かすぎるからな


127:名無しの観測者

江那ちゃんいると学校の先輩感出る


128:名無しの観測者

分かる

急に年相応だった


129:名無しの観測者

普段浮世離れしてるから……


130:名無しの観測者

でも紅茶淹れてる時の動き綺麗だったな


131:名無しの観測者

手元ずっと見てられる


132:名無しの観測者

ASMR適性高すぎる


133:名無しの観測者

音全部静かなんだよな


134:名無しの観測者

後輩ちゃんが「いい匂い!」って言った時なんか良かった


135:名無しの観測者

空気が平和


136:名無しの観測者

これ深夜に効く


137:名無しの観測者

あと後輩ちゃん普通に危なかったな


138:名無しの観測者

どこ


139:名無しの観測者

背景映りそうだった


140:名無しの観測者

あー


141:名無しの観測者

リュシア本人より危機感ないタイプだあれ


142:名無しの観測者

姉さま案件


143:名無しの観測者

今日保護者コメ無かったな


144:名無しの観測者

逆に怖い


145:名無しの観測者

裏で監視してそう


146:名無しの観測者

江那ちゃん来るから事前にチェック入ってそう


147:名無しの観測者

「配信前に部屋を片付けなさい」

とか絶対言われてる


148:名無しの観測者

容易に想像できる


149:名無しの観測者

なんかもう姉さまが裏のレイドボス扱いなんだよな


150:名無しの観測者

でも絶対妹大好きだろあの人


151:名無しの観測者

感情出さないタイプの愛情


152:名無しの観測者

分かる


153:名無しの観測者

「危ないからやめなさい」じゃなく

「窓を閉めて」なのがそれっぽい


154:名無しの観測者

行動から入るタイプ


155:名無しの観測者

後輩ちゃん、途中から普通にリスナー化してたな


156:名無しの観測者

「安心します!」って言ってたの良かった


157:名無しの観測者

あれ視聴者みんな思ってる


158:名無しの観測者

なんか眠くなるんだよなあの配信


159:名無しの観測者

癒し枠


160:名無しの観測者

でも時々 守らなきゃ感が出る


161:名無しの観測者

危ういんだよな


162:名無しの観測者

本人が平和すぎる


163:名無しの観測者

お菓子の缶の住所ラベルは剥がしておいて


164:名無しの観測者

いた


165:名無しの観測者

仕事してる


166:名無しの観測者

もう条件反射なんだろうな……


167:名無しの観測者

姉さま今日もお疲れ様です



---


深夜2時46分。


スレッドは静かに流れ続けていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ