ヤンデレの苦悩
15分短編です
あぁ、勇気が出ない。せっかくここまで来たのに、あと一歩の勇気が出ない。
今日も彼を見送ってしまった。でもこんなに近くまで来られたのは初めて。
あぁ、今日も格好良かった。仕事をしている姿も格好良いし、食事をしている姿も格好良い。今日は昼にカレーを選んでいた。結構な頻度で食べているけど、そんなにカレーが好きだなんて、今度作ってきてあげよう。
今日はこの後家からは出ないはず。だから今日こそ、チャイムを鳴らして、彼に接触しなくちゃ。ただ家を突き止めて見つめているだけじゃ、ただのストーカー。でも知り合いになってしまえば、ストーカーではなくなるんだから、頑張らないと。
彼の家はアパートの二階。一番奥の部屋。頑張れ私、チャイムを鳴らして、声をかけるのよ!
「「ピンポーン・・・」」
チャイムを鳴らすと足音が響いて、彼が出てきてくれた。
「はーい・・・えっと・・・」
「あ、あの・・・えっと」
「どちら様ですか?」
駄目だ、顔を見たら何も言えない!
「これ・・・」
バッグの中から、クマの人形を取り出して渡した。
「じゃぁ!!」
そのまま人形を無理やり渡して走って逃げてしまった。せっかく話すチャンスだったのに!でも人形は渡せたわ!これで彼と二十四時間一緒に居られる!!
早速イヤフォンを盗聴器に繋ぐと、感度良好ちゃんと聞こえる。
「「どうしたの?」」
「「なんか知らない人がくれた」」
「「なにそれ、気持ち悪・・・」」
待って、この声誰?彼女?聞いてないんだけど。
どうやら彼には付き合ってる女がいるらしい。私というものがありながら・・・なんて浮気者なの!?でも、彼優しいから、きっと断れなかったのね・・・。女に洗脳されてる可能性も出て来たわ。
もう私は、彼と知り合いになったんだから、次は、料理作りすぎちゃった作戦で行くわ。ソレも彼の好きなカレー!そうと決まれば、スーパーに材料を買いに行かないと!
私のスペシャルカレーを食べれば、目を覚ますはず。
そのためにはまず、あの女の事を調べなくちゃ。徹底的に調べ上げてやるんだから。覚悟しなさい!
私料理は得意だから、絶対彼も気に入るはず。そうよ、私が負けるはずないわ。だって私は、彼に命を助けられたんだもの!駅の階段から落ちそうになった私を受け止めてくれた彼は、それはそれは格好良かったわ!絵本の王子様が飛び出してきたのかと思ったくらいよ!
あぁ、愛しの王子様、魔女の呪縛からあなたを助け出して見せます!待っていてね!あなたには私しかいないってことを知らしめてあげるわ!!
——愛しのあなたへ、愛を込めて——
思い込みとはこういうもの。




