第24話_堅固なサファイア魔法
イロハ様と別れてしばらくすると目が覚めて、今は朝食を済ませたあとに今日の予定を考えていた。テーブルの上にはプレシャスがいる。
「夢の中でイロハお姉様に会ったよ。上位魔物が現れたみたいだけれど、プレシャスは何か知っている?」
「国境付近に出現したと聞いていますが、いまのところ進行方法は不明で、どの国に向かうか定かではありません」
この街へ向かっているわけではないのでその点は安心できるけれど、ただこの街へ向かってくる可能性も残っている。
「プレシャスは上位魔物相手でも平気なの? この街が危なくなったら上位魔物と戦ってくれる?」
「上位魔物は別格の存在で、戦わずにアイ様を守るように指示されています。中位魔物までならアイ様の希望で手助けは可能です」
きっとイロハ様の指示で、なるべく干渉しないように言われているみたい。
プレシャスの言葉から、私が上位魔物を倒してと、お願いしても無理と思った。仮にお願いする場合は、私を守るためにプレシャスが動く状態を作るしかなさそうだけれど、それは私が危険の中に入り込んでいる状態を表していた。
「上位魔物に近づかないのがよいみたいだけれど、遠くからでも確認できるの?」
「ある程度の距離になれば気配でわかりますので、アイ様には危険が及ばないようにします。今まで通りに生活してもらって大丈夫です」
上位魔物が近くまで来てから、慌てて逃げ出さなくて平気そう。
「危なくなったら助けてね。魔物の気配を感じ取れるのは、使い魔の特性なの?」
「相手の気配を感じ取れる力なので、訓練をすれば人間でも可能です。すべての生きものには気配が存在しますし、この家にはイロハ様の気配が残っています」
魔物や使い魔だから考えすぎたみたいで、よく思い出してみると人の気配を感じる経験は日常生活であった。
「私も魔物の気配がわかれば、凶暴な魔物に遭遇する危険性も減りそう。自分の身を守れる力もほしいから、今日は防御魔法を覚えるね。上位魔物は別にしても街や森へ行くのに、防御魔法は役立つと思っている」
今日の予定を考え中だったけれど、防御魔法は覚えたい魔法のひとつだった。話しの流れで決まったけれど、ちょうどよかったのかもしれない。
「防御魔法があれば、いざというときに助かる可能性が高くなります。どの宝石を使って魔法を作るのでしょうか」
プレシャスが私に近寄ってきて、目をかがやかしている。プレシャスも宝石に興味を持ってくれて、一緒に宝石を語れるのはうれしかった。
「まだ決まっていなくて、いろいろな宝石があって迷いそう」
「宝石の種類によって、魔法の威力は変わるのですか」
この世界にはない宝石魔法だから、プレシャスが知らなくても当たり前だった。
「基本はどの宝石でも構わないみたいだけれど、魔法の効果を連想できる宝石ほど威力を最大限に発揮できるみたい。理屈と言うよりも雰囲気からの連想だから、私が感じたままに宝石を選ぶつもりよ」
どの宝石でも魔法が成立するのはうれしかった。いろいろな宝石で魔法を楽しみたいから、今までと異なる宝石を使って魔法を作りたい。
「好きな宝石で魔法を作れるのですね。今回はどの宝石を使うつもりですか」
「いろいろと迷ったけれど、宝石はサファイアに決めた。理由はルビーと同じで、サファイアも硬度が高いのよ」
「サファイアを見てみたいです」
プレシャスへサファイアを見せるため、宝石魔図鑑を出現させて頁をめくった。いくつもあるサファイアの写真から気に入った写真を選ぶと、青色の宝石が立体的に出現した。
「見た目はルビーと異なるけれど、同じ鉱物のコランダムになるのよ。赤色のコランダムがルビーで青色がサファイアよ。それ以外の色はファンシーカラーサファイアと呼ばれている」
一般的にサファイアと呼ぶ場合は青色のサファイアを示すけれど、ほかと区別するためにブルーサファイアと呼ぶときもあるみたい。
「同じ鉱物なのに呼び方が異なるのは興味深いです」
「人間が決めた価値だけれど、微妙な色合いは苦労するみたい。似たような色合いでルビーとピンクサファイアがあって価格はルビーが高いのよ。赤色なのかピンク色なのか、近い色合いになると私には区別がつかない」
宝石は大好きだけれど専門家ではないから、微妙な違いはわからない。宝石も好みと価値に違いが存在して、ブラックオパールは裏側が黒色ほど価値は高いけれど、私は裏側が灰色で淡い色合いを見せるルースが好きだった。
「ルビーには稀少な色がありましたが、サファイアにもありますか」
前に話した内容をプレシャスが覚えていてうれしかった。
「ファンシーカラーサファイアでは、パパラチアサファイアが有名ね。ピンク色とオレンジ色が混ざり合った色合いよ。通常の青色ではコーンフラワーブルーね。上品な色合いと鮮やかさが特徴で、今回の魔法はコーンフラワーブルーにするつもり」
コーンフラワーブルーの写真を見せる。立体映像には色合いや産地など、表示させる種類を選べるのがうれしい機能だった。
「柔らかな青色で清々しい気分になります。防御魔法とのことですが、どのような魔法効果を持たせるのですか」
プレシャスが興味深い目で私に聞いてくる。




