第23話_女神様との再会
プレシャスと一緒に寝室で寝たはずなのになぜか星空が見える。でも見覚えのある景色で、ここが何処なのか思い出してきた。
「愛しいアイ、会いたくて呼びました。少しはワタシの世界になれましたか」
顔を向けるとイロハ様がいた。最初に出会ったときと同じく、ダイヤモンドのように輝く本物の女神様がいる。
「またイロハお姉様に会えてうれしい。常識を覚えるのが大変だけれど、魔法を使って楽しんでいる。プレシャスもやさしくて一緒に宝石の話をできるのもうれしい」
「あの子から状況を聞いています。アイは常識知らずのようですね」
やさしい笑みを見せながら話しかけてくれる。常識の話題はきっと私の緊張を和ませてくれているように思えた。
「元の世界と異なるから大変だけれど、イロハお姉様の世界は新発見ばかりで興味が尽きないよ。とくに魔法は自由度が高くて楽しく作っている」
「楽しんでいるようでよかったです。ワタシもアイの生き生きした姿が見られて、とてもうれしいです」
イロハ様が抱きついてきて、まだ慣れなくて少し恥ずかしい。少女の姿だからなのか、頭を撫でられて頬ずりまでされた。緊張が和らいだ頃に開放された。
私に抱きついたときの態度と異なって、イロハ様が急に真面目な表情になった。
「アイに伝えたい内容があります。ザムリューン王国の国境付近に上位魔物が出現しました。家の加護では上位魔物から家を守れませんが、もし危険が迫れば、あの子が助けてくれるでしょう」
「もしかして100年単位に出現する強い魔物よね。今いるリガーネッタの街が危なくなるの?」
リガーネットの街は中規模と聞いていたけれど、どれほど上位魔物が強いのかは分からなかった。それでもイロハ様が伝えるくらいだから、生半可な強さではないと想像できる。
「アイにはワタシの加護がありますので平気ですが、無理は禁物です。愛しいアイが怪我する姿は見たくないです。街への破壊規模はザムリューン王国の対応次第でしょう。大陸全土に破壊が進み、世界破滅の要因になればワタシが人間に提言します」
「街程度の破壊なら、イロハお姉様は人間を助けないの?」
多くの人間がイロハ様を女神様と崇めていて、神殿も建てて信仰している。町の破壊となれば、当然ながら神殿も無傷とは考えにくい。
「自然の摂理に反する行為はしませんが、国ごと消滅するような世界破滅に繋がる場合のみ関与します。人間は弱い生きものですが魔物を退治してくれますので、願いに応えて特別に神聖魔法を与えました。これ以上は高望みというものです」
人間も自然界の一部だから、過度の加護や肩入れはむずかしいのね。重要なのは世界破滅みたいだから、宝石魔法を作るときには注意が必要ね。
「イロハお姉様の考えが少しは分かったと思う。宝石魔図鑑で世界破滅するような悪さはしないし、犯罪に荷担もしない。でも自由な発想で魔法を作るのは好きで、イロハお姉様の世界にも宝石があると聞いたから、世界を回って宝石も集めてみたい」
「妹のアイが作った宝石魔図鑑は、自由度が高くて万能と思いますが最強とは異なります。アイは宝石魔図鑑には満足していますか」
最初のアイ様は本物のアイ様についてよね。イロハ様が覗き込むような視線を向けてきて、きっと私の考えを知りたいのかもしれない。
「宝石魔図鑑は私には勿体ないくらいすてきな魔法だから、宝石魔法の威力は一般魔法と同じで構わない。自由な発想で魔法が作れるから、イロハお姉様の世界を今以上に楽しめると思う」
最強よりも、この世界を楽しむために魔法を使えるほうがうれしい。勇者にもあこがれていないし、宝石に囲まれながら過ごせればそれで平気だった。
「うれしそうに話すアイの喜ぶ姿が見られて、ワタシは満足です。ワタシの世界を好きに楽しんでください。集めた宝石をなくしたら大変でしょうから、家の地下に収集部屋を作りました。アイの手でのみ扉が開くので、存分に宝石を集めてください」
「イロハお姉様の気遣いがうれしい。せっかくだから宝石以外にも色々な品物を集めて楽しみたい。でもどうしてイロハお姉様は、私にそこまで親切なの?」
素朴な疑問だった。本物のアイ様による手違いで私は消滅したけれど、その償いで姉であるイロハ様の世界で過ごせるようになった。私ひとりのためにイロハ様が、ここまで気を使うのが不思議だった。
「アイは本物の妹であるアイとの絆だからです。最近の妹は少し反抗期で、地球の人間が科学技術で発展したのも反抗期の現れでしょう。その妹がワタシを頼ってきた絆がアイで、ワタシと妹を結ぶ掛け替えのない存在です。ワタシなりのお礼です」
「私自身が何かした訳ではないけれど、理由が分かってよかった。衣食住がそろっていてプレシャスもいるから、私には充分すぎるくらい楽しい毎日を送っている。イロハお姉様の加護と宝石魔図鑑もうれしかった」
「アイが喜んでくれれば、ワタシは満足です。本物のアイがワタシの世界を楽しんでいるようで、錯覚だとは理解していますがアイはそれほどまでに妹に似ています」
またイロハ様に抱きしめられて、恥ずかしいけれど嫌いではなかった。イロハ様が女神様だからか温かい気持ちになった。




