第17話_頼もしい助っ人
杖を持った女性に向かって、マイリンさんが困った表情で答えた。
「こちらの少女、アイさんがハンターになりたいそうです」
「アイちゃんというのかい、あたいはリリスールさ。ここのハンターギルドに所属しているハンターだけれど、アイちゃんは神殿で加護を受けたことがあるのかい?」
リリスールさんが、興味を持ったような目で私を覗く。
「神殿には行ったことがないけれど、何でそう思ったの?」
聞かれた理由が分からなかったので素直に答えた。リリスールさんは少しだけ考えているように見えたけれど、すぐに笑顔をみせた。
「ちょっと気になっただけさ。アイちゃんはハンターになりたいのかい?」
「魔物を退治してお金を稼ぎたいから、ハンターになってみたい。魔物が倒せれば旅も安全になるから、この世界を楽しめると思う」
リリスールさんと視線が合って、私が本気かどうか確認しているみたい。決意が強いと示すためにそのまま見つめ返した。
「アイちゃんはただの遊びとは考えていないようだね。マイリン、試験を受けさせてみなよ。責任はあたいが取る」
「本気ですか」
マイリンさんが驚いた声で聞き返していた。
「もちろん真面目さ。ただしアイちゃん、試験に合格できてもハンターギルドへの入会可否はギルドマスターが判断する。それでも構わないかい」
単純に成績だけでは決まらないみたいだけれど、やることに変わりはなかった。
「リリスールさん、受けさせてもらえれば平気よ」
「試験を受けるだけでも金貨が1枚必要です。それでも平気ですか?」
マイリンさんだった。お金が必要とは思わなかったけれども、イロハ様にもらった金貨はまだ手元に残っていたので、そのうち1枚を取り出した。
「これで足りるよね」
「たしかに金貨1枚を受け取りました。試験内容ですがリーフウルフ3匹を討伐することです。討伐の証として魔石を持ってきてください」
リーフウルフは、以前プレシャスが倒していた魔物よね。
「魔石は魔物から入手できるのは知っているけれど、それ以上はあまり詳しくないから、確認のためにいろいろな情報を教えてほしい」
プレシャスから魔石は魔物を倒すと入手できて、魔道具の動力としても使われているとも聞いた。ただハンターギルド特有な情報があるかと思って質問している。
「国によって若干異なるけれど、魔石の基本は何処でも同じだよ。魔石は魔物の核と呼ばれている石で、魔物を倒すと魔物は魔石を残して消滅する。魔石は魔道具や装備強化に使われていて、魔法も付加できるから売れるのさ」
リリスールさんが答えてくれた。
装備への強化や魔法の付加も初耳だった。最強には興味はないけれど、私自身の身を守る程度には装備を強化するのもよいかもしれない。
魔物は消滅するから、普通の動物とは異なると安易に想像できる。でも元の世界には魔物がいないから、せっかくだからもう少し聞いてみたい。
「魔物を倒すと魔石が残るけれど、魔物自体はどうして消滅するの?」
「アイちゃんはしっかりした話し方をするけれど、世間の常識はまだ知らないようだね。見た目通りの年齢なら仕方ないけれど、何処で暮らすにしてももう少し常識を知っておくと便利になるさ。それでなぜ魔物が消滅するかかい?」
リリスールさんの確認に頷いた。
「暴走した魔力がなくなるからだよ。運がよければ、皮や牙などの素材も残る場合があって、めったに残らないから貴重な素材さ。魔物の素材は動物の皮や牙に比べて性能がよいから、忘れずに持って帰りなよ」
ハンターは魔石と素材が収入源のひとつみたい。そういえば、お金の価値もくわしく知らないから、あとでプレシャスに聞く必要がある。
でも今は試験が大事だった。
「教えてくれてうれしい。常識も少しずつおぼえておくね。あと試験は今からでも平気なら始めたいのだけれど、たぶん私自身でリーフウルフを探して倒すのよね。でもリーフウルフの出現場所は知らないから時間がかかると思う」
プレシャスに聞けば探してくれると思うけれど、試験だからできるだけ私自身の力で試したかった。
「マイリン、リーフウルフの場所まで試験官が案内しても平気かい?」
「探すのもハンターの能力ですが、アイさんはこの街に詳しくないようです。場所までの案内は認めます」
「残りの問題は試験官だね。アイちゃんに試験を受けさせようとした私では、公平性に欠けそうだね。ライマイン、いるかい?」
リリスールさんが酒場に向かって大声をだした。その声に反応して、体格のよい男性がこちらに歩いてくる。働き盛りの若者という感じで、手には両手用の剣を持っていた。私には持てそうもない重さの剣に見える。
「リリスールが俺に用事とは珍しい。飯でもおごってくれるのか」
「仕事だよ。このお嬢ちゃん、アイちゃんの試験官をしておくれ。少し常識を知らないから無茶だけはさせないでおくれよ。試験内容はいつも通りにリーフウルフを3匹で、くれぐれも怪我をさせないでおくれ」
「嬢ちゃんのお守りか。リリスールは子供に甘いな」
ライマインさんが苦笑いをしながら答えてから、私のほうへ顔を向ける。
「アイという名前があるのよ。攻撃魔法は使えるから魔物くらい大丈夫よ」
「しっかりしている嬢ちゃんだ。いや悪い、アイだった。でも俺が危ないと判断したら試験は中止だが、それで構わないか」
「初めての魔物退治だけれど、その内容で平気よ。リーフウルフがいる場所は知らないから教えてほしい」
「使い魔がいるのに魔物退治はまだなのか。精霊と会った方法に興味あるが、試験を先に済ませたほうがよさそうだ」
ライマインさんは不思議そうな目で、プレシャスと私を交互にみていた。
「ライマイン、あとは頼んだよ」
リリスールさんが念を押すようにお願いしてから、私はプレシャスと一緒に、ライマインさんのあとに続いた。




