第20話:竜騎士ジム
黒狼傭兵団の訓練場。
観客席のように集まった傭兵たちの視線の中、俺とジムは向かい合った。
「全力で来い、カイ。命を懸ける気でなきゃ、戦場じゃ一秒も生きられねぇ!」
ジムが槍を構える。荒っぽい声だが、その眼差しは真剣だった。
俺も剣を抜き、深呼吸して構えた。
――ヴァルドに叩き込まれた基本を忘れるな。剣は焦らず、守りを崩さず。
「はぁっ!」
ジムが踏み込み、槍の穂先が稲妻のように突き込まれる。
反射的に身を捻り、剣で受け流す。火花が散り、腕が痺れた。
「ほう……」
ジムがにやりと笑う。
「悪くねぇな。だが――これでどうだ!」
槍が唸りを上げて襲いかかる。速度も重みも桁違い。
俺は必死に受け、足を動かし、何度も打ち返す。
汗が背を伝い、息が荒れる。だが不思議と、体は折れずに応じられていた。
(……やれる。ヴァルドのおかげだ)
そして――運命の瞬間が来た。
ジムの槍が俺の肩をかすめ、体勢を崩しかけた刹那。
足元に転がっていた小石にジムの踵が乗り、ほんの一瞬だけ動きが鈍った。
「今だ!」
俺は渾身の力で剣を振り下ろす。
槍を弾き飛ばし、刃をジムの首筋に突きつけていた。
訓練場がどよめく。
ジムは大きく息を吐き、豪快に笑った。
「……参った! 今のは完全にやられたな!」
剣を下ろした俺は、膝が笑うのを堪えながら立っていた。
ライオネルが静かに歩み出る。
その瞳が、俺の剣の軌跡を見つめていた。
「……その構え、その足運び……見覚えがある」
低い声が広間に響く。
そして、ゆっくりとヴァルドに視線を移した。
「……まさか。ヴァルドか?」
傭兵たちがざわめく。
ヴァルドはわずかに目を細め、深く頭を垂れた。
「……いかにも。歳月は過ぎましたが、かつて幾度か、貴殿と剣を交えたことのある身にございます」
ライオネルの目が見開かれる。
「道理で……立ち振る舞いからしてただの爺さんじゃないとは思っていたがな…」
そして俺に向き直る。
「カイ。お前の剣には確かにヴァルドの教えが息づいていた。……ならば信じよう。この者を師と仰ぎ、ここまで戦う覚悟を持ってきたお前を」
ライオネルの声が鋭く響いた。
「カイ。黒狼の仲間と認める。共にこの街を守ってくれ」
胸の奥が熱くなった。
俺は剣を握り直し、力強く頷いた。
「……はい!」




