表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/39

第18話:燃える店先


翌日。

俺とヴァルドは宿を出て、街の中心へ向かって歩いていた。


「この街で国を作るわけではないが……物の流れや相場を知っておくのは悪くない」

「確かに。交易都市の経済を理解すれば、後に必ず役に立ちましょう」

ヴァルドは相槌を打ち、落ち着いた足取りで俺の隣を進む。


リシテアが肩の上で手を叩いた。

「いい心がけね! 国づくりを目指すなら“お金の流れ”を読むことは大事よ!」


そうして俺たちは、市場の方へ足を向けた。


だがその途中――

「火事だ! 水を持ってこい!」

叫び声と共に黒煙が視界に飛び込んできた。


「……あそこだ!」

俺とヴァルドは駆け出す。


煙が上がっていたのは、昨日訪れたあの武具店だった。

入口から炎が噴き出し、店主が路上で半狂乱になっている。


「無茶をするな! 死ぬ気か!」

ヴァルドが店主を押さえ込み、俺と周囲の人間は桶の水を運び火に浴びせた。

リシテアは風を操って炎を外へ吹き飛ばさないよう制御する。


必死の作業の末、ようやく炎は収まり、黒焦げの残骸だけが残った。


店主はその場でへたり込み、灰まみれの手で顔を覆った。

「……ありがとう、助かったよ」


ヴァルドが彼を立ち上がらせ、近くの裏路地へと誘う。

「ここでは人目が多い。落ち着いてから話を伺いましょう」


ーーー


裏の小さな石段に腰を下ろした店主は、肩で息をしながら語り出した。


「俺は、このカルナスで二十年以上、ひっそりと武具屋を続けてきたんだ……だが“ラブプラム武器商会”が現れてからすべてが狂った。良質な武具はあいつらが買い占め、鉄も革も独占され、俺の店には粗悪な品しか回ってこない」


「今日もいつも通り帳簿を整理しに来たんだ。そしたら……数人の黒い影が油を撒いて火をつけた。止める暇なんてなかった」


「……見たんだな、犯人を」

俺が問うと、店主はうなずき、悔しそうに歯を食いしばる。


「ええ……だが、証拠は残っちゃいない。役人に訴えても、ラブプラムの金で揉み消されるだろうさ」


店主の声は悔しさで震えていた。

俺は拳を握りしめる。


その時、背後から声がした。

「――やっぱりラブプラムですか」


振り向けば、金髪の少年ルカが立っていた。


「これで三件目です。ラブプラムにとって邪魔な店や商売人はみんな“偶然の火事”で潰されている」

彼は真剣な眼差しで俺を見つめる。

「詳しく知りたいなら……黒狼傭兵団に会うといい。明日の朝、詰め所で待っています」


そう言い残し、ルカは去っていった。

焦げた店を背に、俺は小さく呟いた。

「……いよいよ正面から向き合う時か」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ