第15話:路地裏の出会い
カルナスの大通り。
人と荷車が入り乱れる雑踏を歩いていると、リシテアが肩の上で身を乗り出した。
「ねぇカイ! 買い物! 買い物したい!」
「……はぁ。お前、完全に観光気分だな」
「当たり前でしょ! だって交易都市だもの!」
ヴァルドは苦笑し、人混みをかき分けながら言った。
「では私は情報収集に向かいましょう。街の評判や情勢を掴むのは大事ですからな」
そうして俺とリシテアは、店が立ち並ぶ通りを進んだ。
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雑多な店の中に「武具店」の看板を見つけた。
木の扉を押し開けると、所狭しと剣や槍、鎧が並んでいる。
「うわぁ……これが異世界の武器屋か」
思わず目を輝かせる俺に、店の奥から恰幅のいい男が現れた。
「おう、いらっしゃい! 旅人か?」
「まあそんなとこだ」
俺の腰に吊るされた剣に、店主の目がぎらりと光る。
「ほぅ……そいつは立派な剣だな。だが今ならもっと良い品があるぜ。特別に交換してやろう」
男が取り出したのは、やけに飾りの派手な剣だった。金色の装飾が施され、一見豪華に見える。
「どうだ? そこの剣と、今アンタの剣を交換だ。損はさせねぇ」
リシテアが小声で囁く。
「カイ、なんか怪しいわよ……」
俺は迷った。確かに見た目は派手だし強そうだ。
(これってもしかして、チャンス……?)
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ルカの登場
「――それ、やめた方がいいですよ」
背後から、落ち着いた声が聞こえた。
振り向くと、金髪の少年が立っていた。歳は俺よりも下、まだ幼さの残る顔立ちだが、真剣な眼差しをしている。
「それはただの見せかけの剣です。刃は柔らかく、長く使えばすぐに欠ける。値段ほどの価値はありません」
「なっ……小僧、口出しするんじゃねぇ!」
店主が怒鳴るが、少年は怯まず続けた。
「逆に、あなたの持っているその銀の剣――」
彼の視線が、俺の腰の剣に注がれる。
「……それは“月銀鋼”で作られた特級品です。軽いのに頑丈で、魔力の流れを阻害しない。魔法剣士が血眼で探す逸品……普通なら、金貨数十枚は下らないはず」
「……え?」
俺は言葉を失った。そんなヤバい代物だったのか、この剣。
「おい! 適当な嘘並べやがって!」
店主が怒鳴ったが、俺は少年の事を信じる事にして店を出た。
少年は俺の方に一礼した。
「……僕の名前はルカ。駆け出しの情報屋です。助けが必要なときは、いつでも呼んでください」
その声は柔らかく、どこか安心させる響きを持っていた。
俺は剣を握り直し、頭を下げた。
「ありがとう、ルカ。俺はカイ。……恩に着る」
こうして――俺とルカの縁が始まった。