第12話:幸運の正体
夕暮れ時、訓練を終えて草原で休んでいると、リシテアが俺の頭に腰かけてきた。
「ねえ、カイ。アンタ、まだ《天運掌握》の力をちゃんと理解してないでしょ?」
「……いや、正直なんとなく“運がいい”程度しか分からん」
リシテアは得意げに胸を張った。
「じゃあ説明してあげる! いい? アンタのスキルは、普通の幸運じゃない。“世界を味方につける”レベルなの」
「まず、レアモンスターの出現率。あのメタルスライム、覚えてる?」
「ああ……逃げるのを偶然仕留めたやつか」
「普通は一生かけても会えないような存在なのよ。なのに転生してすぐ遭遇。これが《天運掌握》の効果。アンタ、レアモンスターに異常なほど遭遇しやすいの」
「……つまり、俺はエンカ率チートってことか」
「次にレアアイテムのドロップ。腰の剣、見てみなさい」
俺は銀に輝く剣を取り出した。
「本来なら数百体狩ってようやく手に入る代物よ。それを一発ドロップ。――つまり、レアアイテムの入手率が桁違い」
「……まじで運ゲーの神様だな」
「それから、レベルアップ時の補正。最近、体が軽く感じない?」
「そういえば……剣の稽古の時、昨日より今日の方が振りやすかったな」
「それもスキル補正。普通の人より能力上昇が強化されてるの。経験値効率が倍以上ってわけ」
「……チートすぎる」
クリティカル率上昇
「そして戦闘。アンタ、無意識でもクリティカルが出やすいの」
「……あの時、俺の剣が偶然鎧の隙間に入ったのも?」
「そう。狙ったんじゃなく、“狙えちゃった”。これが《天運掌握》」
回避・防御の偶然発動
「防御面も同じ。足を滑らせて敵の矢を避けたり、たまたま倒れた瓦礫が盾になったり。アンタの“失敗”ですら運が味方して防御に変わるのよ」
「……つまり、俺はドジでも生き残れるってことか」
「そういうこと!」
偶然の出会い
「最後に――これが一番ズルいかもね。偶然の出会い」
「出会い?」
「そう。普通なら一生会えないような人材に、アンタは“たまたま”出会える。例えばヴァルドとの出会いだってそう。アンタが欲する人材は、必ず引き寄せられるの」
俺は思わず息をのんだ。
「……ってことは、仲間集めも?」
「ええ。アンタの運が、必要な人材を連れてきてくれる。だから胸を張りなさい。アンタのスキルは、国を作るために最適なんだから」
俺は焚き火の明かりに剣をかざした。
銀の刃が夕暮れに反射して、淡く光っている。
(……クリティカル、回避、出会い、レア運。全部が俺を後押ししてる。なら、この力で……国を作る)
リシテアはにやりと笑った。
「そうこなくっちゃ!」