第10話:凱旋の間
王都に戻った俺とヴァルドは、玉座の前に進み出た。
重々しい空気の中、王の声が響く。
「報告はすでに受けておる。山賊の砦、ついに陥ちたとな」
広間にざわめきが走る。
山賊の頭領は、十年にわたり討伐隊を退けてきた強敵だった。その弟と揃えば、ヴァルドですら容易には勝てぬほどの実力者。
本来ならヴァルド一人で片がつくはずだったが、王は俺を試すため、あえて共に戦わせた――そう聞かされた。
(……やっぱり俺は試されてたのか)
だが、胸の奥に悔しさはなかった。
むしろ、あの戦いを共にしたからこそ、今の俺の気持ちは決まっている。
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「若者よ、カイと言ったな」
王の視線が俺に注がれる。
「そなたには褒美を与えよう。望みを申せ」
周囲が息を呑む。
ここで領地や金を求めれば、順当で誰もが納得する。
だが、俺は一歩前に出た。
「……俺は、国を作りたい」
その言葉に、広間がどよめく。
「この世界ならできると思うんです。皆がそれぞれの力を出し合い、笑って暮らせる国を……俺はそれを、自分の手で作りたい」
玉座に座る王が目を細める。
「国を、か。若造の夢物語に聞こえるやもしれぬ」
「ええ。夢物語だと笑われるかもしれません。でも、俺はその夢を叶えるために、この世界に来たんだと信じてます」
心臓が破裂しそうなほど高鳴っていた。だが、迷いはなかった。
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「では、褒美は何を望む?」
王の問いに、俺は即座に答えた。
「――ヴァルドを、俺の旅の仲間にください」
広間がさらにざわつく。
「老騎士を……!?」「正気か……!」
だが、俺は視線を逸らさなかった。
「俺の夢には、どうしてもヴァルドが必要です。彼の剣、彼の知恵、彼の生き方……全部が、俺にとって道標になる。だから……俺と共に来てほしい」
ヴァルドの眼差しがわずかに揺れる。
やがて彼は一歩進み出て、膝をついた。
「陛下。もしそれが御意であるならば……この老骨、カイ殿と共に歩みましょう」
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王はしばし沈黙し――やがて笑った。
「よかろう。ヴァルド、カイと共に旅立て」
広間のざわめきは最高潮に達した。だが、俺は拳を握りしめる。
「ありがとうございます……必ず、やり遂げてみせます」
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リシテアが肩でクスクス笑った。
「やっぱりアンタ、大胆だわね。国王の前で『国を作る』なんて宣言するなんてさ」
「……言っちまった以上、やるしかないだろ」
「ふふっ。いいわ、その開き直り」
炎のように熱い決意が胸に燃えていた。
――ここから始める。俺の夢を、俺の国を。
アストレア王国については今後も重要な国です
ヴァルドは昔は一番の騎士でしたが現在序列は4位との事…。山賊さっさと倒せよ!