対帝剣戦
●ボルネオ島 中華帝国軍司令部
「“赤兎”隊、被害甚大」
「後退命令を出せ」
朱少将は言った。
「可動機はすべてだ」
朱少将はシートにもたれかかり、深いため息をついた。
「何という体たらくだ」
倍する戦力を持ちながら、“赤兎”隊は一方的に倒されたとしか言い様がない。
グレイファントム達を相手に撃破の戦果が挙がっていてないのに、損害が投入戦力の3割に達している。
司令官として、これ以上の損害は看過出来ない。
戦いはまだ続くのだ。
徒に貴重な戦力を浪費すべきではない。
「本土からの返答は?」
「飛行艦隊が重い腰を上げてくれました」
参謀は言った。
「この島の鉱物資源を飛行艦で安全に運びたいというのが本心でしょうが」
「戦場に空荷で来る馬鹿もおるまい」
朱少将は参謀からコーヒーを受け取った。
「負傷兵は集めておけ。本国へ後送する。それと、メサイアが確認されたというのは、どこだ?」
「はっ」
参謀は島の地図を指さした。
「島東南部。偵察隊が発見しています。近くでは島北東部でも」
「回せるメサイア部隊は?」
「夕刻までお待ち下さい」
参謀は言った。
「本国から教導隊が到着します」
「教導隊?」
怪訝そうな朱少将に、参謀は自信げに答えた。
「“帝剣”の運用部隊です」
●ボルネオ島北東部ジャングル
時折、中華兵に見つかるように動くだけでいい。
中華兵が時折思いついたように小銃を発砲するが、メサイア相手では豆鉄砲にすぎない。装甲を傷つけることさえ出来ない。
美奈代は島の北東部でそんなことをしていた。
モグラ叩き。
その任務をそう評したのは、精霊体の“さくら”だ。
「ねぇマスター」
騎体をジャングルの中に潜ませた時、“さくら”が訊ねた。
「この後、どうするの?」
「この後って?」
「この島、いつ出ていくの?」
「今、二宮教官が洋上に出て“鈴谷”と通信を試みているが……」
美奈代が戦況モニターに目をやると、二宮騎が戻ってきた。
ジャングルの上空すれすれを飛んで音もなくジャングルの中へと潜り込むという、恐ろしいほど高い操縦技術の手本を見たような気がした。
「つながったぞ」
二宮の声はどことなしに嬉しげだ。
「日没と同時に、ここに来る」
その言葉に、美奈代は時計を見た。
日没までの時間は1時間30分
「ここへ?」
「オトリだ」
二宮は言った。
「我々が通過したルートを通って別動の米軍のTAC部隊が兵士達の救出に向かう。“鈴谷”はその間のマト担当だ」
「……被害……担当艦」
ゴクッ
美奈代は自分の口から出てきた言葉に思わず唾を飲み込んだ。
戦闘において一方的に被害を受け持つことで友軍を有利にする、それが被害担当艦だ。
艦が沈むことで、戦闘に勝利する人柱に近い立場だ。
「よく平野艦長が認めましたね」
それが、信じられない。
乗組員千人の命を預かる身が、あまりに軽率にしか見えない。
「あいつが認めたんじゃない」
二宮は言った。
「認めさせられた―――いや、それさえ違う」
「……」
「“命じられただけ”というのが正しいな」
「そんな!」
美奈代は目を見開いた。
「命じられたら、部下と一緒に死ぬとでも言うんですか!」
「和泉」
二宮はため息混じりに言った。
「軍隊だけではない。組織の中間管理職とはそういうものだ。自分が望む望まないお構いなしに仕事を押しつけられる。部下と共に死ぬし、時に部下を殺す」
「……私」
美奈代は言った。
「そんなんなら、一生ヒラで結構です。組織になんか加わりたくないです」
「フン……お前はヒラでは済まないよ」
「え?」
「お前は絶対、私を越えるからな」
通信モニター越しに自分を見つめてくる二宮の声は、不思議と自信に満ちあふれた誇らしさが滲み出ているように見えた。
それは思い上がりかも知れない。
そう思った美奈代は、コンソールを見る振りをして視線を外した。
―――二宮教官が、私のような問題児を評価してくれているはずがない。
そう思う。
―――だけど
それでも、
―――もし、そう思ってくれているなら、何という嬉しいことだろう。
そう思えてしまうのだ。
「“鈴谷”の上陸地点はここなんですか?」
美奈代は不思議なほどはやる心を抑えながらそう訊ねた。
「ああ。このジャングルの上空を移動することで敵を引きつける。先に海上で別れた米軍のTACが正反対の方角で動くことになる」
「なら皆を集合させますか?」
「ポイントCでのランデブーが3時間後だ。30分もあれば十分だろう。そこでいい。というか、下手な通信は逆に危険だ」
「そ……そうですね」
「我々の任務はこの北東部に敵を誘い出すこと。そのためにやることがある」
「米軍が相手にしている敵を背後から叩く?」
「その通りだ」
二宮は楽しげに頷いた。
「ここに誘い出し、後は頃合いを見て撤退。今夜は“鈴谷”でゆっくりシャワーが浴びられるぞ」
二宮の楽しげな声に、美奈代も顔がほころんだ。
「楽しみです」
美奈代と二宮の作戦が無駄に近いものとなっていることを日米両軍で知っている者はいなかった。
中華帝国側、朱少将は戦力の限界を把握しており、それだけに米軍の残存部隊に対する攻撃は貴重な戦力の浪費と判断した。
つまりは、「撤退するなら勝手にしろ」というスタンスだ。
事実、中華帝国側の米軍残存部隊への攻撃は停止している。
米軍でも負傷兵の移送の準備と、回収出来ない兵器や機密文書の処分が進んでいる。
状況は悪くない。
日没まであと1時間。
夕日が眩しい。
金色に染まるジャングルの中、美奈代達はただ、“鈴谷”の到着を待っていた。
「もう少しで長野大尉達も到着する」
二宮騎からそんな通信が入った。
すでに敵の攻撃はない。
敵の集結地点はここからかなり離れているし、その方面からの侵入はセンサーで感知出来る。
センサーに反応はない。
「この島ともこれでおさらばだな」
「米軍はこの島を放棄するんですか?」
「違う」
二宮は笑って言った。
「中華帝国軍は、このままなら降伏する」
「えっ?」
「連中の補給線を止めた上で小さく叩く。小出しに戦力を使わせれば連中の物資は底を突く」
「……」
「和泉。補給線が切れるっていうのは、お前が想像しているより遙かに怖いことだぞ」
「―――はい」
補給線が断たれる恐怖。
そう言われても実戦経験の浅い美奈代には、どうしてもピンと来ない。
ただ、バカみたいに頷くだけだ。
「米軍はこれから制海権と制空権を奪取に動く。後は空から空爆で中華帝国を叩く。こうなればほとんど一方的な戦いになる」
「うまくいきますか?」
「行ってもらわねば―――」
ピーッ!
「熱源っ!」
「何っ!?」
ズンッ!!
二宮騎のMC、青山唯中尉の警告。
二宮の驚いた声。
そして、二宮騎が吹き飛ぶ音。
それを美奈代はすぐには理解出来なかった。
目の前で半身を吹き飛ばされた二宮騎が、ゆっくりとジャングルの中に倒れようとしていた。
「和泉候補生っ!」
美奈代より早く現実に立ち戻ったのは牧野中尉だ。
彼女の鋭い声が茫然自失の美奈代を無理矢理に現実に引き戻した。
「な、なんですか!?今の!」
「大口径MLの狙撃!」
牧野中尉は引きつった声で言った。
「ま……まさか」
「二宮教官は!」
「バイタル反応正常……せ……センサーに反応なし?そんなバカ……な」
牧野中尉の意識は、敵攻撃に備えたエネルギー感知モニターに集中していた。
ログを見ても、何の反応もない。
「魔法反応まで……ど……どうやって?」
「中尉っ!」
ギンッ!
美奈代の声と、鋭い戦闘機動で、牧野中尉は我に返った。
「て、敵は!」
「センサーに反応なしっ!」
「じゃあ、アレはなんですか!?」
牧野中尉が見たスクリーンに映し出される3騎のメサイア。
重装甲をまとった“歩く要塞”さながらの騎だった。
それは、牧野中尉が見たことのない騎だった。
即座にライブラリーが開かれるが、
「不明っ、該当騎なしっ!」
そう答えるしかなかった。
「い、一体!?」
「おそらく、中華帝国側の試作メサイアです」
牧野中尉はそう結論づけた。
「エンジン出力、その他の反応、“帝刃”や“赤兎”とは比較になりません」
パワースペックは間違いなく“帝刃”の倍では効かないだろう。
フレーム反応も最新型だろうことを示している。
あの厚さの重装甲が本物なら、実剣は通らない。
牧野中尉はデータがとれていることを確認しながら、背筋を震わせた。
「こ……こんなの量産されたら!」
厄介じゃ済まない!
その声が上がる前に、3騎は動いた。
「候補生っ!後退を!」
牧野中尉は叫ぶ。
データがない敵と斬り結ぶことが如何に危険か知っている牧野中尉の判断は正しい。
だが、
「教官を見殺しにする気ですか!」
美奈代にとって、敵が何だろうと、ここで逃げることは出来なかった。
二宮教官を助ける。
それこそが、美奈代の全てだったのだ。
迫り来る敵は長い柄に斧を付けたハルバードを振りかざす。
対する美奈代騎は斬艦刀を抜刀。
戦いの火ぶたが切って落とされた。
「くそっ!」
鳴り響く警報
魔晶石エンジンから発する甲高い戦闘出力音
スクリーン一杯に迫る甲冑のバケモノ。
美奈代は倒れた二宮騎の前に立ちはだかると、斬艦刀を構えた。
距離はまだかなりある。
あれほどの重量級だ。接近するまでにはかなり間があるはずだ。
ダンッ!
大地を蹴って敵騎が動き出した。
「―――え?」
敵の装甲の厚さは一目瞭然だ。
楯攻撃の効く相手じゃない。
グリーンの角張った恐ろしく分厚い装甲が美奈代めがけて襲いかかってくる。
「速いっ!」
その動きに、美奈代は目を見開いた。
重装甲をものともしない素早い動きを見せる。象のような鈍重な外観からは全く想像が出来ない機動性だ。
「あの装甲で!?」
重装甲に高機動性ではシャレにもならない。
美奈代は必死に隙を見つけようとした。
装甲がいくら分厚いとはいえ、どこかに弱点があるはずだ。
―――どこだ!?
美奈代は焦りながら視線を激しく移動させた。
正面から撃破出来そうな場所が思いつかない!
―――背後に回り込めば。
美奈代は、ふと、そう思った。
“装甲は、正面装甲が最も厚いが、後方や上面は得てして薄い”
かつて、授業で聞いた言葉を思い出したのだ。
戦車かメサイアか、一体、何の装甲について語った言葉で、誰から言われた言葉かさえ思い出せないが、それでも、このタイミングでこの言葉を思い出したことを、美奈代は誰かに褒めて欲しかった。
美奈代は背面に回り込もうとSTRシステムに力を込め、即座にその無意味を悟った。
否、悟らされた。
ブンッ!
突然、敵騎の上半身で白い光が走った。
メサイアの腕ほどもある三角の円錐状の光が、肩や頭部に走る。
その光に本能的な危機を感じた美奈代は動きを止め、目を見開いた。
「な、何?」
「レーザースパイクです」
牧野中尉が言った。
「固定式の光剣と思ってください。タックルでも喰らったら串刺しです」
「ズルッ!」
背後から斬り込むことはやめた。
三騎であんなものにプレスされたらたまらない。
肩部装甲のレーザースパイクが装甲の動きに合わせて激しく揺れる。
不用意な接近は、自殺行為だと、その動きが教えてくれる。
―――どうする?
接近のため、激しい動きを見せる敵騎を睨み付けていた美奈代が“そこ”に気づいたのは、そんな瞬間だった。
美奈代は結局、その三騎に何もしなかった。
牽制のためのML攻撃さえしなかった。
三騎から見れば、今の美奈代騎は、突然、仲間が倒されて動揺している程度にしかみえないだろう。
だらりと下げられた長い剣もシールドも構えられてさえいない。
戦闘の意志さえ感じられない。
そんな姿で立ちつくすのが、今の美奈代騎だ。
当然、敵はそんな美奈代騎にかける情けなど持ち合わせていない。
殺されたくなければ、全てを殺せ。
それこそが、戦場の規範だ。
三騎のメサイアを駆るメサイア使い達は、自らの規範に従順過ぎるほどに従った。
それだけだ。
楔形陣形で迫り来る三騎。
前衛騎がハルバードを振り上げた。
槍に斧を付けた斧槍
それがハルバードだ。
斧と槍双方として使え、「突き」「切り」「刺し」「払い」―――凡そ近接用武器に求められるほぼ全ての攻撃が出来る優れものだ。
その破壊力の源は、長い柄を操作することによる遠心力や慣性力―――そして操作する者のパワー。
メサイアのパワーを上手く遠心力に乗せることが出来た場合のハルバードの破壊力は、およそメサイアの扱う近接用武器の中では最強の部類に入るだろう。
まともに喰らえば、美奈代騎は真っ二つだ。
ピピピピピピ―――ッ!!
センサーが脅威を感知し、操縦者である美奈代に警告を告げる。
長い柄を両手で握って振り上げつつ接近する敵騎を、美奈代は強ばった顔で見つめていた。
―――チャンスは一度だ。
美奈代は自分に言い聞かせていた。
―――しくじったら……終わりだ。
終わり。
つまりは―――死。
死ねば、全てが終わる。
そこまで考えるのが、今の美奈代にとっては精一杯だ。
目の前に迫る敵騎を前に焦る心を押さえつけるのがやっとなのだ。
「―――せーのっ!」
歯を食いしばった途端、
ブンッ!!
凄まじい音を立てながら、敵騎がハルバードを振り下ろした。
まともに喰らったら、メサイアは脳天からかち割られるだろうその攻撃だったが、
ガンッ!!
その斧が捉えたのは、何の変哲もない大地。
メサイアの魔晶石エンジンが産み出す大出力を遠心力に変えて繰り出された一撃は、大地に深々をめりこみ、砕かれた大地が土砂となって舞い上がった。
―――かわされた!!
前衛騎の騎士は、即座にハルバードを大地から引き抜こうとして―――出来なかった。
「!?」
ハルバードの斧の根本。
何かが押さえつけている。
必殺の一撃をかわしたメサイアの脚だとわかった次の瞬間、
グガンッ!!
コクピットを凄まじいほどの振動が走った。
コクピットを形成していた様々な装備が吹き飛び、モニターや計器類が一斉に消えた。
振動が収まった時にはコクピットの中は暗闇となった。
手元でさえ見えない事態に、予備電源まで切れたことを悟った騎士が次に感じたのは、奇妙な重力感。
立っていることが出来なくなった自騎が倒れる感覚だった。
メサイアの弱点である喉部防護用可動式装甲と騎体の隙間に斬艦刀の切先を突き刺された前衛騎は、頭部にあるMCLと本体を結ぶ操縦系統を根こそぎ破壊されたことで動きを止めた。
人間でいえば、頸骨を切断されたのと同じ。メサイアといえ、ここを破壊されればどうしようもない。
ズズゥゥ……ンッ!!
奇妙な程ゆっくりと前衛騎が倒れる。
その光景に狼狽した後続騎達が一歩、後ずさった。
美奈代にはそう見えた、その次の瞬間―――
ブンッ!!
突然、左騎の腕が光った。
「ぐっ!?」
騎体に激しい振動が走り、警報が一斉に鳴り響いた。
「さっきの一撃ですっ!」
牧野中尉が怒鳴った。
「シールド43%融解、左部異常加熱警報!」
「くっ!?」
騎体の状態を示すステータスモニターをちらりと見る。
騎体の左側が危険なほど加熱していることを示す赤色で点滅している。
「一体!?」
後衛の二騎のうち、美奈代から見て右騎が何かを構えているのに、美奈代が初めて気づいたのは、その時だった。
巨大な筒―――バズーカだ。
とっさの牽制用に撃ったんだろう至近弾だけでシールドが溶け、騎体は半身が焼けた。
一体、どれほどの高出力のMLが発射されたのか、美奈代はそんなことを考えている余裕さえなかった。
キュィィィッ
筒の中が光り出した。次は外さないだろう。
「えっ!」
美奈代騎が動いた。
その時、美奈代が急速後退をかけてその攻撃を回避する機動をとると思っていた牧野中尉は、眼が点になった。
自分の乗っている騎体は後退したのではない。
前進したのだ。
「ちょっ!?」
ここで前進すれば、自分から的になりにいくようなものだ。
いくらなんでも、美奈代だってそれがわかっているはずだ。
それなのに―――?
唖然とする牧野中尉の目の前にバズーカを構えた敵騎が急速接近してくる。
よく考えられて配置された装甲は、幾重にも重なって鉄壁の防護とはどういう代物かを牧野中尉に教えてくれる。
この位置から喉部を狙うことはまず無理だ。
美奈代にどういう勝機―――いや、美奈代自身が正気なのかさえ、もうここまで来たらわからない。
そっと脱出装置の位置を確認した牧野中尉の耳に美奈代の声が響く。
「さくら、シールドパージっ!」
「はいっ!」
美奈代の声に、美奈代騎の左腕が大きく振られ、溶けたシールドが左騎めがけて飛んでいく。
右騎は、シールドを難なくかわした代わりとして、射撃のタイミングを失った。
そこが、美奈代の付け入るタイミングだ。
「そこっ!」
美奈代騎が右騎の懐に飛び込んだ。
ピーッ!
ピピピッ!
MCLにそんな音が響く。
スクリーンに映し出されるのは、敵の装甲だけ。
そのあちこちが光り始めていた。
牧野中尉は、敵騎の近接防御用のMLが発射態勢に入ったことがすぐにわかった。
―――まずいっ!
この至近距離からMLを喰らえば無事では済まない!
「候補生っ!危険すぎっ!だから、後退を!」
たまらず牧野中尉が叫ぶ。
その目の前で、自分の乗る騎が奇妙な動きを見せた。
ザンッ!
大地に斬艦刀を突き刺した右腕が、右騎の腰回りを防御している巨大な装甲プレートの端を掴むと、一気に持ち上げたのだ。
ベギッ!
奇妙な音を残して装甲プレートの可動部を止めていたボルトが破断、装甲プレートが外れた。
装甲プレートに隠れていた右騎の股関節部が丸出しになった。
そこへ―――
ガンッ!
再び斬艦刀を握った美奈代騎は、斬艦刀の切先を股関節に突き込んだ。
股関節から真上に突き入れられた斬艦刀は、熱せられたバターナイフがバターを易々と溶かし切るように、内部構造物を解かし、破壊した。
騎体の中からは、何かが連続して砕け、爆発する音が響く。
斬艦刀から手を放した美奈代は、とっさに右騎の腕からバズーカをもぎ取ると、撃破したばかりの、その騎体の背後に回った。
背後から襲いかかろうとしていた左騎が、右騎にハルバードを振り下ろそうとする。
右騎の背後から突き出されたバズーカの筒先が左騎の装甲とぶつかった瞬間―――
美奈代はバズーカのトリガーを引いた。
---用語解説-----
帝剣
・公表された時点では、ロシア製重メサイア“ローマイヤ”のデッドコピーと見られていた。
・しかし、実際はオーストラリアにより開発された“ローマイヤ”の改良発展騎である“ロンゴミアントOO”の中華帝国版であり、後の米国侵攻時には米軍の主力騎グレイファントムM14を圧倒し、米軍を想定外の苦戦に追い込んだ。
・世界トップの重装甲と高出力エンジンを搭載しており、カタログスペックでは元となった“ローマイヤ”を圧倒する。
・まともにぶつかることが出来るのはグレイファントムM64 “スーパーキャバリー”クラスに限られる。
・欧米の最新技術に中華帝国の生産能力を加えて初めて量産化出来たとさえ言われるモンスターマシン。
【ネタバレ】
・イメージは『ファイブスター物語』の“アルカナサイレン”




