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フィアの活躍


 ズンッ!


 ビーッ!

 ビーッ!

 ビーッ!


「上部FGF消滅っ!」

 爆発音と同時に、一瞬、艦内の全ての照明が落ちた。

 すぐに非常電源が作動し、視界は復旧する。

 その中で、砲術長が怒鳴る。

「砲門開け―――撃てぇっ!」

 “鈴谷すずや”甲板上からツヴァイを照準していた全ての火器が砲門を開き、激しい火線がツヴァイを襲う。

 ツヴァイ達は右へ左へと攻撃をかわしながら“鈴谷すずや”への攻撃を試みる。

 

 “鈴谷すずや”の甲板に3発の攻撃が命中した。

 攻撃は甲板を貫通した。


「何だと!?」

 驚いたのはエーランド達だ。

「対重力防御壁が無くなったら、こんなに脆いだと!?」


「敵騎3騎、接近してくるっ!」

「―――くっ!」

 飛行中のメサイアの機動性は爆撃機並に低い。

 それがメサイアに関しては常識だというのに、魔族軍のメサイアの機動性は―――

「早すぎるっ!弾幕どうした!」

 ズンッ!

「左舷直撃っ!第67区画閉鎖っ!」

「69区画で火災発生!」

「ダメコン急げっ!」

「艦軸足弱まる!」

「艦長!速度低下、現在18ノット!」

「―――くぅっ!」

 今の美夜に出来ることは、蝶のように舞う敵騎を睨み付けるだけだ。

「ふらりふらりと―――っ!」


 ズズンッ!


 艦が激しく揺れた。


 ガンッ!


 いや―――


 揺れ続けた。


「な、何だ!?」

「ハンガーデッキより艦長!」

 整備兵の悲鳴のような声がスピーカーから流れた。

「整備中の“幻龍改げんりゅうかい”が!」

「平野だ!どうした!」

「暴走した!今、長野大尉と二宮中佐が止めようとしている!」

「何っ!?」

「二宮だ!美夜、予備騎には、騎士の搭乗は確認されていないっ!コクピットに対人反応なしっ!」

「騎士が乗って無くて、どうしてここまで動けるのよ!」

「乗ってる奴に聞きなさいよ!」

 バキィィィッ!

 背筋が寒くなるような音がした。

「ハッチぶっ壊しやがった!ハンガーデッキからフライトデッキに向かっている!」

「フライトデッキのハッチあけろ!あそこまで壊されたらまずいっ!くそっ!こんな時にっ!?」

 美夜は艦長席のアームレストに設置されているインターフォンを“幻龍改げんりゅうかい”の予備騎、そのMCRメサイア・コントローラー・ルームへとつないだ。

「こちら艦長だ!誰が乗っている!?所属官姓名を述べろ!」



「えっと!」

 聞こえてきたのは、耳にも心地よい美しい女の子の声だった。

 幾分緊張している様子だが、はっきりと張りがある声色に、一瞬、毒気を抜かれたのは美夜だけではなかったはずだ。

「文句は第七分隊の和泉候補生に言ってください!」

「そ、その声は!?」

「私、フィアです」

「な―――どうしてメサイアを!?」

「このままじゃ!」

 フィアは大声で言った。

「瞬が帰るところがなくなっちゃうから!何か武器は!?」

「武器っ!?」

「“この子”の武装じゃ、どうあっても“アレ”には勝てない!」

「斬艦刀を!」

 通信に割り込んできたのは、二宮だ。

「何、それっ!?」

「壁にかかっているデカイ刀をもっていけ!」

「はいっ!」

 “幻龍改げんりゅうかい”の手が伸びて、壁のウェポンラックにかかっていた斬艦刀をわしづかみにすると、手近のシールドラックに固定されていたメサイア用のシールドを一刀の元に切り捨てた。

「やれるっ!」

「艦内で試し切りは禁止だ!バカぁっ!」



 必死になって対空砲を打ち上げる“鈴谷すずや”に、ほぼ一方的に攻撃を仕掛けるエーランド達の前に、“幻龍改げんりゅうかい”が現れた。

「少佐」

 その姿を認めるや、通信に入ってきたのはアークだ。

「仲間のカタキを討たせてください。彼奴等の敵をどうあっても!」

「―――油断するな」

 エーランドは言った。

「あの長刀にだけ神経を注げ。あれの前には、装甲はないに等しい―――かわすことが出来れば、お前でもやれる」

「はいっ!」

「マオ、私と共にこの艦の脚を止めるぞ!」

「了解っ!」


 ガンッ!


 派手な音と振動を伴いながら、甲板にツヴァイが降り立った。

 甲板のダメージをまるで考えずに着艦したものだから、甲板が派手にへこんだ。

「さぁて!」

 メサイア使いとして経験の浅いアークにあるのは、目の前の敵をなぶり殺しにする欲望だけだ。

 敵騎を細切れにした後、この飛行艦も戦斧で切り刻んでやるっ!

「さぁ―――かかってこい、人類っ!」

 戦斧を頭上で派手に振り回すアーク騎に“幻龍改げんりゅうかい”が斬艦刀を横薙ぎに振り払った。

「甘いっ!」

 激しい音と共に斬艦刀の峰がはじかれた。

 大きく体勢を崩した“幻龍改げんりゅうかい”に、アーク騎、ツヴァイが迫る。

「こうもあっさりと!」

 ツヴァイが再び戦斧を振りかざした。

「―――終わらせるなぁっ!」


「ワァッ!」

 艦橋で推移を見守っていた皆が悲鳴に近い声をあげたその瞬間―――


 ガンッ!!

 “幻龍改げんりゅうかい”のアームガードがツヴァイの顔面をモロに捉えた。

 戦斧を振り下ろしかけていたツヴァイは、その直撃を避けることが出来なかった。

 顔面装甲が吹き飛び、メインカメラが粉砕される。

「くそっ!?」

 それでもアークは、ツヴァイの戦斧を振り下ろそうとした。


 敵がこの騎をぶん殴ったとしたら、敵は真っ正面にいる!


 サブカメラにツヴァイの眼が切り替わった頃には、敵は真っ二つだ!

 アークは、その若い顔を勝利の予感に緩めたが……。


 ガンッ!


 戦斧を振り下ろすツヴァイの手が止まり、コクピットを、そんな音と共に激震が襲った。

 モニターや計器類が火を噴き、電源が全て落ちた。

「なっ!なっ!?」

「アーク!脱出しろっ!」

 予備電源が入った途端、レシーバーにマオの怒鳴り声が響いた。

「こっちで仕留めるっ!」

「まだやれるっ!」

 アークはマオに怒鳴り返した。

「予備電源が入るんだからっ!」

 アークは戦斧を手放すことにした。

 なぜか振り下ろそうとすると、両手が動かないのだ。

 敵騎に片手で両腕戦斧の柄を掴まれているなんて、想像さえ出来なかった。

 まして、片手で腹部のコクピットハッチを殴りつけられているなんて尚更だ。

 いや、殴られ続けた衝撃で、段々とコクピットハッチ部がゆがんで、コクピット内部にいても、イヤでも外で何か恐ろしいことが起きていることを思い知らされる。

「―――くっ!」

「アークっ!」

 マオ騎が接近を試みるが、対空砲火に邪魔されて思うように“鈴谷すずや”に近づくことが出来ない。

 敵も死に物狂いだ。

 そう簡単には―――!

「くそっ!」

 マオは舌打ちした。

「アーク、脱出もダメなら、せめてそいつを抑えろっ!狙撃するっ!」

 その言葉に、アークはさすがに、それしかない。と判断した。

 スクリーンが映らなければ、敵がどこにいるかわからない。

 ハッチを爆破して目視も考えたが、さすがに自殺行為だ。

「……了解した!」

 戦斧を手放し、アークは再び、ツヴァイの手を大きく上に振り上げた。

 敵の手から放れたツヴァイの両腕で、アークは敵騎の両肩を掴んだ。

「やったぞ!マオっ!」


 アーク騎が飛行艦の甲板上で敵騎の両肩を掴む姿は、“鈴谷すずや”を大きく回り込んだマオ騎からも目視出来た。

「こちらでも確認した!」

 敵騎はすでにロックオンしている。

「この距離だ!外しようが……」

 トリガーにかかったマオの指に力が入った。

 マオ騎からの一撃が、敵騎に向かって放たれた。

 だが―――


 ズンッ!!


 その一撃をまともに胴に喰らったのは敵騎ではなかった。

 アーク騎だ。


 直撃を喰らったショックで関節がイかれたのだろう。

 四肢をピンと伸ばした、X字の状態で敵騎に持ち上げられていた。


「なっ!?」

 唖然とするマオ騎に、敵騎からの一撃が襲ったのは、その時だった。


「マオっ!」

 アーク騎から奪ったライフルからの一撃は、マオ騎のコクピットを直撃した。

 操縦者を失ったマオ騎がまっすぐに地面に落下していく。

「くっ!?」

 一瞬、頭に血が上ったエーランドは、戦棍せんこんを構え、敵騎めがけて襲いかかった。

「何度も何度も!」

 アーク同様、甲板に派手に着艦した途端、エーランド戦棍せんこんが“幻龍改げんりゅうかい”を襲った。

 アーク騎を楯にした“幻龍改げんりゅうかい”が、楯になったアーク騎ごと吹き飛ばされる。

 フィアは、危うく甲板から落下する寸前でこらえ、逆襲に出た。

「このっ!!」

 戦棍せんこんで殴りかかったエーランド騎を、“幻龍改げんりゅうかい”が、腰から引き抜いたライフルの砲弾が襲う。

「甘いっ!」

 それを大きく跳躍してかわしたエーランドは、膝蹴りを“幻龍改げんりゅうかい”に見舞ったが、

「あぐっ!?」

 その膝蹴りを最小限度の体勢で捌いた“幻龍改げんりゅうかい”は、逆にエーランド騎の背めがけてハイキックを決めた。

 エーランド騎から戦棍せんこんが吹き飛び、不可視の海へと消えた。

「ば―――ばかなっ!?」

 ブースターを全開にして不可視の海への落下を回避したエーランド騎は、急上昇を駆けた。

 加速が乗り出した瞬間、その両足が吹き飛んだ。

「ぐうっ!?」

 “幻龍改げんりゅうかい”からの攻撃が両膝に命中したのだ。

 警報が鳴り響くコクピットで、エーランドはそれでもなお、敵騎に挑んだ。

「これだけ騎体を潰されて―――!!」


 彼に残された武器はもう、腕に仕込まれた速射砲だけだった。


 ライフルが数発、脚と肩の装甲に命中し、左腕を肘の根本から吹き飛ばされてなお、エーランドは戦いをやめようとしなかった。


 左肩の装甲が吹き飛んだのを最後に、敵のライフルは火を噴かない。

 弾切れだと、エーランドはそう判断した。


 勝てる!

 勝たねばらなない!

 でなければ―――!!


「おめおめと、どの面さげて、手ぶらで帰れるというんだぁっ!」

 バランス補正が終わらない騎体を無理矢理ねじ伏せながら速射砲を乱射するが、元々が攪乱用に設計された速射砲だ。

 そう簡単に当たるものではない。


 ガチンッ!


 耳慣れない奇妙な音に続いて、警告が短く響いた。

 残弾が尽きたんじゃない。

 砲が故障したのだ。


「くそぉっ!」

 エーランドは罵り声をあげた。

「どこまで私は―――っ!」


 自分でも意味不明の叫びをあげながら襲いかかったエーランドの視界一杯に、敵騎が映し出される。


 だが……。


 彼が覚えているのは、そこまでだった。


 “鈴谷すずや”から放たれたMLの攻撃が、エーランド騎を容赦なく叩いた。

 騎体を文字通り蜂の巣にされ、“鈴谷すずや”の甲板で一度大きくバウンドしたエーランド騎は、炎をあげながら闇の中へと消えていった。





  


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