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出撃前の情景

●福島県 近衛軍陣地 中隊長室

「戻りました」

 この運動公園の自慢は、その広い陸上競技場所だった。

 しかし、そこは今、メサイア達と整備機材が並び、選手を応援する歓声に代わり、機械のノイズが耳をつんざく。

 その隅に設置されたコンテナハウスの群れ。

 その一つ。「中隊長室」と看板がかかったコンテナに入るなり、美川は一礼した。

 スチール製のデスクが4つと、組み立て式のスチール戸棚が1つの殺風景な景色がそこにはあった。

 戸棚にはヘルメットが並んでいる。

 まるで土建屋の現場だなと、美川は入る度にそう思う。


「おう」

 書類に目を通していた初老の男が眼鏡を外し、ドアに立つ美川を見た。

 ごま塩混じりの頭髪を短く刈り込んだ髪に日焼けした顔立ち。軍服を着ていなければ農家のオヤジで通用するだろう程の好々爺とした人物。

 倖田中佐―――美川の所属する戦隊の戦隊長であり、美川にとっては公私の隔てなく世話になっている相手というか、ほとんど美川にとっては血の繋がらない父親同然の人物だ。

「娘さんの具合はどうだった」


「―――いつも通りです」


「……そうか」

 小さくため息をついた倖田は立ち上がった。

「茶でも飲むか?」


「いえ。出撃に備えておこうかと」


「まぁ、そう急ぐな」

 倖田は、空いたデスクの上に雑然と置かれる野戦食の空き箱やミスプリントのゴミ山からポットを引き出し、山の中に手を突っ込んだ。

「コップはたしか……ああ、これだ」

 紙コップと袋を山から引っ張り出した倖田は続けた。

「独立駆逐中隊の準備が整っていない。

 しかも、出撃は明日の0300だ。

 今からコクピットで頑張ってどうする」


「……はぁ」


「―――まぁ、飲め」

 倖田は、粉末の紅茶を溶かした中へブランデーを入れたのを、美川の前に差し出した。

「しかし」


「酒飲んだ程度でどうこうなる体じゃあるまい」

 言いつつ、倖田自身は空の紙コップにブランデーを注ぎ込んだ。

「今やブランデーは特級の貴重品だ。飲めるうちに飲んでおけ」


「いただきます」

 美川は、喉が焼けるのを感じながらコップの中身を胃袋へ流し込んだ。


「娘さんの手術、メドがついたのか」


「……いえ」

 美川は近くのデスクに腰を下ろした。

「さすがに……簡単にはいきません。交通事故との因果関係もはっきりしないと、保険の適用も拒否されてますしね」


「いくらだ」


「医者から言われているのは」

 倖田は、その額を聞くと深いため息と一緒にコップをデスクに置いた。

「……いいか?美川」


「―――はい」


「近衛は、任務の危険度にあわせて報奨金を設定している。とはいえ、支払いは成功した時だけだ。しくじったら」


「わかっています」

 美川は真顔で頷いた。

「ドジはしませんよ」


「俺の小隊を預けているんだ。死に急いでもらっては困る」


「……ええ」

 美川は答えながら、掌の中で紙コップを弄ぶ。ブランデーの強い香りがコップから立ち上り、それだけで酔いそうになる。

「それに、半騎士の俺にゃ、騎士様程の仕事は出来そうにない」


「―――ぬかせ」

 苦笑混じりに倖田は椅子にどっかりと腰を下ろした。

「航空機の優位性はすでに過去の人類同士の戦闘で十分に証明されているところだ。この戦争においても変わるところはない―――むしろ」

 じろり。倖田は睨むように美川を見た。

「重要性は上がっている」


「……」


「風翔は戦闘護衛から哨戒、そして偵察まで幅広く使える点では、世界でも希有なメサイアだ。

 空に戦域を限定すれば、地上を這い回るしか脳のないバカで目立ちたがりのおめでたい騎士共より戦果は挙げやすいだろう?

 銃火器系兵器で狩りたい放題の一方的に近い戦闘だって、お前にとっては朝飯前。

 現に飛行系妖魔の撃破で……お前にとってはそれなりの額の」


「……」


「―――よく言ってスコア、悪く言えば、撃破報奨という名のカネになる。問題は」

 はぁっ。

 倖田はブランデーを一気にあおった。

「娘さんの目を治すにゃ、それでも足りないってことだな」


「……全然ですよ」

 美川は寂しげに笑った。

「あいつが―――みさきがあの時事故にあったのだって、バカな理由で町中で口喧嘩なんておっぱじめたからだ。

 そんなバカなことしている間に、あいつは道に飛び出して車にはねられた。

 すぐ近くに小さな病院に連れて行って、打撲って診断だけ信じて、ロクな検査もさせなかったのも、そのまま示談書類にハンコ押したのも、みんな俺達夫婦が……いや、俺がバカだったからですよ」


「……」


「おかげでみさきはあのざまです。俺みたいな親をもったばっかりに……」

 うなだれる美川を前に、倖田は軋む椅子の背もたれに体を預けた。


「今更、過去を悔いてもどうにもなるまい。それでまかり通るなら、俺の目玉をくれやったっていい。俺だってそう思っている」


「……中佐」

「カワイイ部下の娘。しかも、俺はあの子の名付け親だぞ?俺だって一応は、親だ」


「……すいません」


「俺の退職金を上乗せしても……とても足りる額じゃない」


「……」


「かといって……死に急いでくれるな?“お父さんはどこ?”なんて、葬式の場で子供に聞かれるのはもうこりごりだ」


「……妻からも似たようなこと言われていますよ」


「当然だ……まぁ、風翔で地道にミッションをこなせ。そうしていれば、こういう突拍子もない特別ミッションが下ることもある」


「成功の報酬は?」


「通常出撃の3倍」


「十分です」

 美川は頷いた。

「新潟県の沿岸部に対する強行偵察を擬装すればいいんですね?」


「ああ。敵陣地一つ見つけるごとに、別報酬が出る」


「額は」


「見つけた後の話さ―――新潟県の状況は人類の誰も把握していない。ただ、あの浮遊城と魔族軍が関係しているなら、どこかにあの城と本州を結ぶ補給ルートがあるはずだ。当然、新潟県の港が怪しいとなる。それはつまり」

「魔族軍の補給、もしくは物資集積施設がある」


「破壊を焦るな?」

 倖田は念を押すようにゆっくりと言った。

「現状では新潟侵攻なんて夢物語の域だ。そんな所で何を破壊しても評価は低い。施設の位置だけわかっていれば、それだけでいい。上層部はそれしか評価しないぞ」


「……やれやれ」

 美川は腰を上げた。

「戦っても評価されないとはね」


「そういうものだ」





「さぁて……と」

 ポキポキ

 土浦涼奈つちうら・りょうな中尉は紅龍のコクピットで指を鳴らし、舌なめずりした。

「STRのフィッティングは大凡OKね」


「了解。関節部はこれで固定しますよ?」


「ええ。ただ」


「ただ?」


 涼奈は意味ありげに腕を組んだ。戦闘服越しにもわかるその豊かな双丘が腕の中でたわわに揺れた。


「胸がきついのよ。なんとかならなぁい?」



「―――ったく」

 土浦隊の一人、矢崎綾やざき・あやは、STRシステムフィッティング中の整備兵をからかう涼奈を見て顔をしかめた。

 金髪に染め上げた髪を無造作に後ろで束ねた綾は涼奈より一つ年上。彼女よりずっと高い身長とスレンダーな体型、低い声で男性と間違えられることの多い彼女は、実際の所、あまり涼奈と一緒にいるのを好まない。

 列騎としてメサイアを駆る上ではまたとないパートナーだと涼奈から頼られても、個人の感情は別だ。

「逆セクハラはやめろというのに……あーあ。“ぱふぱふ”されて喜ばない男の子はいないって言うけどさぁ……可哀想に、また一人、道を誤った男が出そうね」


「……」


「……つーかさぁ」

 紅龍のコクピットハッチから中をのぞき込み、綾は言った。

「ちょっとは部隊内でのコミュニケーションとろうって気にはならないの?あんたさぁ」


「……必要なことはしているはずです」

 そう答えたのはセッティングに余念のない染谷だ。

 計器類から目を離さず、染谷は短く答えた。

「軍隊ですよ?」


「軍隊だから」

 綾はコクピットに首を突っ込んだ。

「こう―――腹割って信頼関係作らなきゃ!」


「……必要ないです」


「そのうち、後ろから撃たれるわよ?あんた」


「……」


「その時に、この私のお慈悲を聞いておけばよかったって後悔しても遅いんだからね?」


「……」


「……はぁっ」

 綾は肩をすくめ、首を左右に振ると、その場に腰を下ろした。

「彼女を戦争で失ったなんて、人類史上、何件のケースがあるかわかってる?」


「……」


「あんた―――かなり優等生だったんでしょう?部隊叩かれたり、いろいろ苦労もあったとしてもさぁ」


「……」


「あんた一人でドンパチやってんじゃないってことまで否定出来るの?」


「私は一人でも戦います」


「……思い上がんなっての。自分の殻に籠もった男なんて最低だって言われるわよ?私ゃさぁ……まだ、面倒見がいいから、こうして話ししてあげているけど。その態度じゃ、どこにも居場所ないでしょう?」


「……」


「あの和泉大尉ってのも、昔の彼女だって聞いてるわよ?」


「……」


「フィアちゃんだっけ?いろいろ、聞かなくていいの?何があったのか……とか」


 ジロリ。


 染谷は無言で綾を睨み付けた。

 どう猛な獣を連想させる鋭利な視線。

 それでも綾はひるむことはない。

 この程度の殺気でビビっていたら、世の中生きていけないというのが、綾の持論だ。


「聞かずに殻に籠もっている辺りが、あんたがお子ちゃまだって証拠なんだけどねぇ」


「……聞かなくてもわかってますよ」


「……へぇ?」


「結果論だけで言えば」


「……」


「和泉がフィアを殺したんです」


「……へえ?」


「……私が、部下を死なせたように」


「……はぁっ」

 だめだこりゃ。

 綾はもう一度、首を振ると、立ち上がった。

「あんたがどうしようもないバカなヒヨコだってわかった」


「……」


「面倒は見てあげるからさ?せいぜい、尾っぽに殻つけて私の後ついて来て頂戴。何なら」

 綾は悪戯っぽく笑った。

「ベッドの中でミーティング兼ねて模擬戦してみようか?相手してあげるよ?」




●都築

「くっそ!なんだ、このパワーは!」

 騎体装甲のあちこちを変形させた都築が苦々しげに“白龍”から降りてきた。

「どうして俺はこう厄介モノばっかり押しつけられるんだ!」


「おい都築ぃっ!」

 整備兵の怒鳴り声が響き渡った。

 どこかの応援団長のような押しの強い風貌と、何を考えているのか下駄を履いた大柄な男が、腕組みしながら都築の前に仁王立ちになった。


「……う、ウス」

 都築は床に降りるなり首を縮ませた。

「な……なんすか?」


「何すかじゃねぇだろうがぁっ!」

 都築の胸ぐらを掴み上げると、都築の脚が宙ぶらりんになった。

「騎体無様にぶっ壊しやがって!駆逐型ヤクトタイプは装甲が頑丈な分、あんなにひん曲げたら外すのが一苦労なんだよ!戦闘じゃねぇんだ!普通に動かすだけでここまで壊すなら、お前、赤ん坊から人生やり直してこいっ!」


「そんな無茶な!」


「うるせぇっ!坂城さんがお呼びだ!とっとと言って詫びいれてこいっ!―――おい、柏ぁっ!」

 都築を突き飛ばした整備兵は、リフトを使って騎体から降りようとしていた美晴を怒鳴りつけた。

「小隊指揮官だろうが!部下の不始末、どうとってくれんのか、坂城さんが聞きたいとよぉっ!」


「そ、そんなぁっ!」




●美奈代

「あー、よかった」

 美奈代は美晴の悲鳴を聞き、心底安堵して胸をなで下ろした。

「こっちにとばっちりが来なくて」


「そのうち来ますよ?」

 祷子は笑って言った。

「中隊前線指揮官ですもの。一番は美奈代さんです」


「勘弁してよ」


「坂城さん言ってましたもん。寝る前に一度は美奈代さん叱らないと調子が悪いって」


「……出撃前に縁起の悪いこと言わないで。どっちにしても、今回の作戦は美晴達は無理ね」


「というか。向いてませんよ」

 白龍、強襲型アサルトタイプの二号騎となった美奈代騎のコクピットブロックに腰を下ろした二人はチューブ入りのドリンクを手に、出撃準備の様子を見守っていた。

 調整の続くMCRメサイア・コントローラー・ルームには無数のケーブルが外部から接続され、何が起きているのかは全くわからない。

「駆逐型を偵察に出すなんて、本末転倒です」


「……今まで、部隊単位で動いていたからね?数が減るってのに敏感なのよ」


「本来なら」

 祷子は言った。

「もう、美奈代さんは参謀として後藤隊長の横で後方勤務。宗像さんあたりが前衛の全指揮を執っていたはずですものね」


「……ねぇ」


「はい?」


「宗像は……何を考えていたと思う?というか」


「……」


「……今、生きていると思う?」


「つまり、宗像さんがあの島で敵前逃亡したと?」


「敵前でも何でもいい」

 美奈代は膝を抱えると、その中に顔を埋めた。

「……死んだとは考えたくない」


「そう……ですね」

 祷子は頷いた。

「敵に寝返った……そんなことは、私でも信じたくないですけど」


「……」


「……可能性は否定出来ません」


「……そう」

 美奈代は頷いた。

「死んだとは思いたくないけど、でも、敵に寝返る理由がわからない」


「おちゃらけはよしましょう」

 祷子は真顔で言った。

「何か、絶対に考えるところがあったと思います。それが私情なのかはわかりませんが」


「……」


「敵に寝返ってもいいです」


「えっ?」


「私がかつての仲間として、願うことは」


「……」


「どんな状況でもいいから、生きていて欲しい。そして」


「……」


「―――私達の前に現れないで欲しい。それだけです」





 浮遊城のメース用門ゲートからデッキへと降り立ったのは、漆黒のメース。

 カヤノが駆るのと同じ、ヤクトエッジ。

 クルーの指示に従い、ハンガーベッドに騎体を収容し、ハッチから出てきたのは、あの宗像だった。

「操縦システムの方は、慣れたようですね」

 ハンガーに降りようとする宗像を迎えたのはプラツゥルだ。

 女神のような優雅な容姿をした彼女が、宗像にむかって声をかける。

 機材が爆音を立てる喧噪の中、その澄んだ声はまるで汚水の中を貫く清水のように宗像の耳に心地よく届いた。

 亜麻色の髪が無重力空間で優雅な舞いを見せるプラツゥルの腕を掴んで床に降り立った宗像は、ニコリと微笑んで見せた。


「―――人間界ではそれなりに痛い目にあったコイツですけど、慣れれば心強い伴侶です」


「……よかった」

 プラツゥルは、胸元を手で押さえると、ほうっと息を吐いた。

「この子の操縦システムは、私も関与しているんです」


「ええ。ダユー様からうかがっています。人間の私にも耐えられるように、操縦系統と神経をリンクする間のコンバートをしていただいたとか」


「正直、人間そのもののサンプルがないので、心配していたのです」

 プラツゥルは心配そうな顔で宗像に訊ねた。

「具合は悪くないですか?何か、神経に異常は?」


「今のところ」


「そうですか……一応、義務ですから医務室で神経の検査を受けて下さいね?」


「……了解」

 宗像の目の前で、彼女と共に訓練に出たバラライカ―――ティアリュート達が収容作業を終えた所だった。

「……」


「どうなさいました?」


「このヤクトエッジと、あのバラライカという騎。性能はかなり違うんだろうなと思いまして」


「……メースとしては1世代は違います」


「世代が違う騎を相手にして」

 宗像は複雑な顔をした。

「あそこまで手玉にとられる……か」


「無理もありません」

 プラツゥルは慰めるように言った。

「宗像様はまだ、メースに慣れていないのです。あちらのティアリュート様達は傭兵。そうでなくても、正規軍時代はエリート部隊で馳せた有名は、魔界でもある程度知られた方ですもの」


「……エリート……か」


「焦ってはいけませんよ?」


「焦る?」


「ええ……スタート位置を無視しては、勝負になりませんもの」


「……私は私と?」


「そうです」

 プラツゥルは嬉しそうに微笑んだ。

 それだけで宗像は心がとろけそうになる。

 ダユーといい、この女性といい、魔界には不思議な存在がいるものだと、宗像は思った。

「戦争で一番強いのは生き残った方。それに人間も魔族も獄族も関係ないのです」


「……ですね」

 宗像は、そこまで言って、プラツゥルの服装に気付いた。

 普段のドレスや白衣ではない。

 メース用の戦闘服だ。

「プラツゥル殿?その格好は」


「……似合いません?」

 プラツゥルは心配そうに首を縮めた。


「いえ」

 宗像は、意外な回答にちょっとだけ戸惑った。

「お似合いですけど……」


「……ああ」

 ポンッ。と、プラツゥルは手を叩いた。


機獣きじゅう達のリハビリとデータ収集の準備があったので」


「機獣?」


「メース化した妖魔と言えば思い出して頂けます?」


「……ああ、あのワイバーン達」


「そうです。いつまでも培養槽では可哀想ですし」


「それで、プラツゥル殿もメースに?」


「ええ」

 プラツゥルは恥ずかしそうに頷いた。

「これでも心得はあるんですよ?」


「それで……」

 宗像は広大なデッキを見回した。

「どれに乗られるのですか?」


「……あれです」


 プラツゥルが指さした先にあるのは、普通のメースの倍近いサイズの大型騎。

 短くて太い脚部といい、背後に伸びた尻尾といい、まるで往年の銀幕に出てきたトカゲ怪獣に巨大な翼をつけたようなその騎体に、宗像はふと思い当たるフシがあった。


「……銀龍?」

 そう。

 静岡戦線で危うく消し炭にされるかと思った、あの銀色の騎体によく似ているのだ。


「何です?」


「……いえ」

 宗像は首を左右に振った。

 いくらなんでも、あの騎とは違う。

 まして、味方を巻き添えにする程、目の前の美女が無慈悲だとは思えない。

「あれは?」


「……その」

 プラツゥルは、申し訳ないような顔で答えた。

「言ってみれば、妖魔達の寄せ集めです」


「えっ?」


「妖魔の中には、最新鋭のメース以上の筋力や装甲を誇る、そんな存在もいます。そんな妖魔から筋肉や外皮をとって、疑似骨格に移植したのです」


「妖魔のメース化、その一環ですか?」


「そうです」

 プラツゥルは頷いた。

「万一、機獣達がコントロールを失った場合の保険でもあります。そんなことになれば、可哀想ですが、脳と心臓部を破壊する信号を送りますが……」


「何かの拍子に、その信号を受け付けなくなり、暴走した場合、力尽くで仕留める必要がある」


「その通りです」

 プラツゥルは頷いた。

「私は、そんなこと―――好まないのですが」


「でしょうね……」

 同感です。と、宗像も頷くしかない。


「そのためには、機獣達を……単独で“処理”出来る存在が必要なので」


「それで、“あれ”が」


「……獄族のメースは、妖魔のパーツを使うことが多いのです。ですから、獄族の目から見れば異質なことではありませんけど」


「メースの感覚でコントロール出来るのですか?」


「ええ。ただ、操縦できるのは獄族だけです」


「つまり、あなた方だけ」


「はい」


「……」


「……どうなさいました?」


「リハビリというのは、いつ頃?」


「明日の夜明けに」

 プラツゥルは答えた。

「それまでにあの子の調整を終わらせなければなりません。ちょっと徹夜仕事です」

 ペロッと舌を出したプラツゥルに宗像は言った。


「もし、差し支えなければ、同行させていただけませんか?」





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