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嵐の前 第一話

「聞きたいことが二つある」

 中野に言われ、美奈代はもう諦めた。

 どうせ、ロクなことは言われないだろう。

 もう疲れた。

 美奈代は昼休みに買ってきた便せんに、辞表のサンプルを丸写ししていた手を止めて、彼の前に立っている。

 何か怒られたら、続きを書いて、封筒に入れたら提出すればいい。

 昨日の夜、コンビニで買ったバイト雑誌は熟読して、めぼしい所には赤丸もした。

 即日採用してくれる所ばかり探したし。

 だから、明日からは、バイトの口でもみつけて頑張ろう。

 少なくても、アルバイトで死ぬ危険はないだろうし、コイツに怒られることもないだろうから。

「まず一つ」

 中野は書類を手にとった。

「“死乃天使”の外部パネルがそっくり1セット消耗している上に、追加が3セット発注されているが、お前、何やったんだ?」

「改装中ですよ?」

 美奈代は答えた。

「改装担当の整備部隊に照会するのが筋でしょう?」

「確認して報告」

「……はい」

「それと、共済組合から確認依頼だ。小清水少尉のことだが」

「涼が?」

「少尉は、何をしたんだ?」

「というと?」

「二千万もの振り込みを一括でやっているんだ。相手は水瀬財団だ」

「そんな金額を?」

「水瀬財団は、水瀬伯爵家の絡みというか、ダミー会社だ。そこにこれだけの金額を振り込むというのは、普通じゃ無い。これは異常だということで、金銭管理を管轄する組合から、事情確認の依頼が来ている」

「……ああ」

 美奈代はしばらく考えてから思い出した。

「療法魔導師を依頼した件ですね」

「療法魔導師?」

「ええ。これは後藤隊長から口止めされてますから詳細は言えません。何でしたら、後藤隊長に直接ご確認下さい」

「水瀬家絡みの療法魔導師を雇った代金がこれだと?」

「多分」

 ったく。何やってるのよ、涼ったら。

 内心で美奈代は舌打ちした。

 あれは、光菱にメサイアの修理費用の中に入れておくって話しになっていたのに!

 ……でも、あの子が律儀に支払った理由って?

 ……あれ?

 あの時……何か、言ってたなぁ……あれ?

 ……

 美奈代はそこまで考えて、涼がそこまでやった理由にたどり着いた。

「……まずい」

「何が」

「……いえ」

「顔がまずいのはわかっている」

「じ、女性に対して、どういう言い間違いですか!」

「事情を話せ」

「……実は」


 美奈代は、水瀬悠理と名乗った子供から受けた請求書の処理について、大まかなところはぼやかせて説明した。


「つまり―――」

 中野は話をまとめた。

「後藤さんが個人的に雇った療法魔導師の治療代を、部隊がらみだからと言って、お前に払えと、後藤さんはそう言って、渋ったら、部下である小清水少尉が代わりに支払うことを申し出たと」

「……です」

「……はぁっ」

 中野は深くため息をついた。

「お前、どこまでバカなんだよ」

「はいっ!?」

「部下にカネの支払いを頼んだってことだろ?そんなことで部隊長としてやっていけるのか?」

「そ、そんなこと言ったって!二千万ですよ!?」

「後藤さんにきちんと頼め。あの人だったら何とかなるはずだ」

「頼んだ結果として、こうなったんです!」

「後藤さんにも考えあってのことか……それにしても……小清水少尉の狙いは何だ?二千万なんて、十代の娘がおいそれと支払うことが出来る額じゃないぞ?」

「私もまだ二十歳前なんですが!」

「お前の事なんて聞いてない」

「―――っ!」

「かっかするな。シワになるぞ」

「免職覚悟しましたから、殴らせて下さいっ!」

「刑務所出ると就職困難だぞ?それで?」

「……多分、後藤隊長とのやりとりを本気にしたんだと思います」

「何だ、それは」

「代金肩代わりしたら、私を手に入れることが出来るって」

「……は?」

 中野は怪訝そうに眉をひそめた。

「つまり、何か?借金のカタに、お前を好きに出来る権利を、小清水少尉は手に入れたと?」

「多分」

「同性を相手に二千万支払って?」

「……です」

「冗談なら、もっと信憑性を持たせろ」

 ばっさりと中野は美奈代の言葉を冗談だと切り捨てた。

「そんな馬鹿げた話があるか」

「私も、まさかとは思いましたがね。これが現実です」

「……」

「私の部隊は、はっきりいろいろ異常な部隊なんですよ?」

「……後藤さんに、ちょっと確認しておく」

「とにかく、私に言われてもどうしようもないことですから!」

「……わかった」

 何故か、中野が何かを思い詰めているように、美奈代には見えた。

「?」




「どう?“白雷はくらい”の感想は」

「いやぁ」

 シミュレーションを終えたばかりの麻紀は、苦笑いを浮かべながら答えた。

内親王護衛隊レイナガーズでも話題にはなっていたんですけど、本当にバケモノですねぇ。パワーゲージが“鳳龍改”とは比較にならないっていうか。最初、感覚が全然違うから焦りましたよ。スロットル開き過ぎちゃって、オーバーブースト引き起こして、発進と同時にエンジン吹っ飛ぶし」

「みんなそうよ。でも、ほむちゃんは、結構平気だったみたいね」

 美晴は、皆にロールケーキを勧めながら言った。

「そんなことありません」

 皆にコーヒーを入れる千鶴は小さく首を横に振った。

「モードG以降は、そこそこ手こずりました」

「うわっ!もうそこまでいってるの!?私達、モードBやっと入ったところだよ!?ちょっと、麗央?こうしちゃ……って」

 麻紀は、そこで初めてテーブルに潰れている麗央に気付いた。

「ち、ちょっと麗央っ!?」

「……死んだ。思いっきり死んだ」

 麗央は突っ伏したまま、そうぼやいた。

「体がもたない……死ぬ」

「あらら」

 涼が苦笑気味に言った。

「私達も経験あるから、わかるんだよねぇ。今が一番辛いときだもん。麗央ちゃん?今が辛抱する時だよ?」

「だよねぇ……私達、シミュレーションなしでいきなり実騎。騎体壊して、整備班長の前で何回土下座させられたっけ」

「お姉様も一緒になってね……辛かったけど、今になったら懐かしいわ」

「そうだねぇ……麗央ちゃん達も、あと6時間も乗ったら、体に免疫つくって」

「そうですかぁ?」

「はい。ココア」

 千鶴が麗央の前に紙コップを置いた。

「砂糖、大目にしておいたから」

「ありがと……おいしい!」

 麗央は目を見張った。

「小清水少尉騎の“しょこら”から教わった入れ方で作った」

「性能違うと、精霊体までいろいろ出来るようになるんだぁ」

 ちらりと、麗央は視界に入った千鶴に言った。

「そういえば、千鶴は何乗るの?」

「私は……」

 千鶴は考えてから答えた。

「一応、“死乃天使”の二号騎」

「一応?」

「名前、制式に決まってない。外見は“死乃天使”だから、そういう仮称で話しが進んでいるの」

「じ、じゃあ!“白雷改”には乗らないの!?」

「ベースはほとんど同じだと思うけど?」

「むうっ!?“死乃天使”って、ど、どんなヤツよ。まさか、と、特別騎とか!?」

 麗央が血走った目で千鶴を睨み付けるが、千鶴は平然としたものだ。

「組立中。でも」

 眉ひとつ動かさない。

「外見や性能じゃないと思う」

「きぃぃぃっ!」

 突然、麗央が金切り声をあげた。

「ち、千鶴ちゃんの分際でナマイキっ!」

「?」

「わ、私にそっち回しなさいよ!いいでしょ!?」

「シミュレーションモード、AA+のZからだけど、いい?」

「えっ」

 麗央の顔が青くなった。

 モードがAA+のZ、それはつまり、AAレベルの騎士でも相当な腕利きであることが求められるシミュレーションのレベル。

 正直、自分でやりこなせる自信はない。

「そ、操縦、そんなに難しいの?」

「クセがあるというか、かなりピーキーなマシンではある。“白雷改”をよりソリッドにチューンしたら、あんな感じかしら」

「そ、想像が出来ない」

「うーん」

 美晴が助け船を出した。

「基本、“死乃天使”は、美奈代さん専用―――AAA以上の騎士対象で設定組んでいるって、津島博士が言ってるのは聞いたことある」

「―――そういうこと」

 千鶴は言った。

「私が選んだというより、騎体が騎士を選ぶの。

 でも、私は別に“死乃天使”をそれ程高く評価していない」

「な、なんでよ」

「汎用性が低すぎる。広域火焔掃射装置スイーパーズフレイムも使えないし、背中にマウントする方面の武装はほとんど使えない。

 ハルバードみたいな武器もね。

 私の勝手な判断だけど、あのタイプは、ほぼ完全に空中機動戦を主眼としている。

 だから、地面に脚を踏ん張らないと使い物にならないハルバードのような、ポール・ウェポン系武器は最初から想定外というか、不向きだと、はっきり言える」

「踏ん張りきかなくちゃ……脚部ブースターで踏ん張りをカバーするのは無理か」

 麻紀はロールケーキをつまみながら頷いた。

「斬り込みの要である脚の微妙な捻りなんて、ブースターで再現できるもんじゃないし」

「そう。それに、“死乃天使”達はあくまで脇役。主役はどうあっても“白雷改”。これに変わりは無い」

「ど、どういうこと?」

 麗央は、納得出来ない。という顔で訊ねた。

「性能からしたら、主役は―――」

「“死乃天使”は斬り込み部隊。その目的は、あくまで後方攪乱。つまり、大規模な部隊を相手に戦線を支えきれるようには設計されていない。

 最強のメサイア。その定義が、敵を殲滅することを意味するなら、強いという評価に相応しいのは、むしろ“白雷改”。

 武装に対する幅も広いし、装甲も厚いし、耐久力も高い。

 これらが前線では戦力に直結することは言うまでも無いでしょう?

 機動性重視で、武装拡張性を犠牲にした“死乃天使”では、そうはいかない。

“死乃天使”を改装しないで、“白雷改”を、次期ベータ級主力メサイアである“白龍”のテストベッドにする津島博士の方針は正しいと思う」

「む、難しい……」

「穂村少尉の言い分は正しいと思うわ?」

 頷いたのは麻紀だ。

「敵陣へスピードだけを頼りに斬り込む。奇襲攻撃に特化した存在が、“死乃天使”だっていうんでしょう?」

「そう。広域戦闘から格闘戦まで、広い任務に耐えられる汎用性や拡張性を持ち合わせている“白雷改”には、評価の面で勝てはしない」

「ふぅん?」

 かおるが、感心したように言った。

「派手な戦いしているから、“白雷はくらい”より“死乃天使”の方が性能高いと思っていたけど、評価ってそうなるのかぁ」

「今回の改装で、“白雷改”が“死乃天使”型へ改装する指示が出なかったのが証拠だと思う」

「―――つまり、ほむちゃんは」

 どうぞ?

 涼は、ケーキを勧めながら千鶴に言った。

「麻紀ちゃんに、“私よりいい騎体に乗ってるんだぞ?”って、そう言いたかったのね?」

「……正解」



 かつて人間の使っていた病院の一室。

 厳重な警備が敷かれた中、神音は看護兵に付き添われるようにして室内に入った。

 カーテン越しに、午後の日差しが入る室内には、白衣を着た数名の医師が立っている。

 そして、彼等に守られるように、ベッドが一つだけ、置かれていた。

「お初にお目にかかります」

 ベッドの上に横たわる白髪の老人に、神音は静かに頭を下げた。

「神音商会総帥、天原神音でございます」

「……抹鯉商会の主の娘だったか?」

「はい」

「先代には随分と無理をさせた……その娘に今度は世話になるとはな」

「そのようなお気遣いは無用に願います」

 神音はやんわりと笑った。

「ここまで来れば、最早、一蓮托生。今後共によしなに」

「……心得ておこう」

「……」



「ご容態は?」

「封印の影響が少し残っている程度だ。あと数日もすれば、ベッドから出ることも出来るだろうと軍医は言っている」

 かつての待合室。

 今は使う者とていない革張りの古ぼけた長椅子に座ったガムロは頷いた。

「魔界では大騒ぎですよ?ヴォルトモード卿、ついに復活と」

「でなければ困る」

 ガムロは頷いた。

「軍資金に兵、そして物資の調達に支障が出る」

「実際、ここの所、滞っていた義援金の支払いは目に見えて潤沢になったとか」

 神音は答えた。

「メース、妖魔共に納品は順調ですが―――気になる話を聞いたのですが?」

「何だ」

「人間の軍と本格的に共闘態勢を構築すると」

「―――ああ」

 ガムロは、面白くない。という顔で頷いた。

「漢民族だろう?向こうから申し出があった。この弓状列島を我が物にしたいと」

「……それで?」

「この列島を支配下に置き次第、海を渡って漢民族と対立する国―――ロシアというらしいが、そちらへ侵攻する。

 メースもある。我々もいる。眠っていてた間のような不始末は起こさせはしない」

「つまり、漢民族は傭兵として?」

「保証とでも言おうか」

 ガムロは小さく喉で笑った。

「最後に殺される人間の民族として、名を残してやるだけのことだ」

「……資金援助を?」

「ああ」

 ガムロは頷いた。

「所詮は人間だ。どんなご託を並べても、金の輝きには弱い

「……成る程?買収したと」

「共に手を握っただけのこと―――こちらから頼んだわけではない」

「としておきましょうか?飛鼠ひそ級の発注が減ったので気になっていたのです」

「一時的なものだ。漢民族が自分の所で生産したものを売り込みたくて仕方ないらしい」

「我が社製では信頼できないと?」

「むしろ、人間の作ったシロモノを、我々がどこまで信じられるか。だな」

「信じているから、発注量を増やした」

「皮肉な物言いだな。漢民族の言う“義勇兵”を搭乗するだけの飛鼠ひそを、こちらで用意しろというのが、厚顔無恥なあのバカ共の言い分だ」

「それを鵜呑みにしたのですか?」

「ああ―――安心しろ。魔族軍の義勇兵向けは、貴殿の製品しか回さない。人間共の製品は評判が悪すぎる」

「そりゃぁ」

 神音は言った。

「こっちは魔族軍規格、向こうは人類規格ですからね。整備兵からすれば、評判悪いでしょうよ」

「……どちらにしろ、サライマ、ツヴァイにヤクトエッジも配備が進んでいると聞いているが?」

「ええ」

 神音は頷いた。

「停戦前と比較して、消耗復旧率は98%……ここに飛鼠ひそは入っていません」

飛鼠ひそはどの程度、納入できる?」

「そうですね……あと1月で強化型が100騎って所ですか。火力的には、ツヴァイと同等の戦力ですよ?それと―――アイバシュラ」

「アイバシュラは、今後の我が軍の主力と言っても良いだろう」

 ガムロは言った。

「あのタイプは補充が容易で、消耗を補充がカバーできるのが強みだ」

「捕獲と大規模繁殖に成功したのは、我が社の功績であることをお忘れ無く」

「覚えておこう。従来の妖魔達は、長野と新潟、それと石川県に後退させ、一部は魔界へ戻しつつある」

「従来の妖魔は、物量というか、重突撃主眼の、いわば破城攻撃兵器の一種です。この日本という戦域では、むしろ機動性に長けたアイバシュラの方が有利でしょう」

「さもありなん―――この程度の土地も総掛かりで確保出来ない現状では、閣下に顔向け出来ん」

「お察しします」

「日本海は天壇とその部隊が制海権と制空権を確保している。この壁があるから、日本海沿岸は我々の橋頭堡にして休息地として活用できる。問題は、太平洋側だ」

「すでにズルド卿が静岡を確保されていますが」

「ああ。ただし、人類も死に物狂いで抵抗している。その分、メースもアイバシュラも優先的に送ってやりたいところだ」

「何か、問題が?」

「メース使いの不足が深刻だ」

「義勇軍は使い物になりませんか?」

「偉そうなこと言う、口先だけの小物ばかりだ。飛鼠ひそにやっと乗せることが出来る者ばかりが集まっているのが現実だ。下手をすれば、漢民族の方が使えるかもしれんぞ?」

「まさか、ヤツ等をメースに?」

「メースでは、人類の神経が耐えられないだろう?我々とて、その辺は人類の好き勝手にさせないように人類を作ったことを忘れるな」

「……でしたね」

 神音はほうっ。と安堵のため息をついた。

「あの猿共にメースの技術がそのまま渡るかと思うと、ぞっとしました」

「肩入れがすぎるぞ?」

「親とはそういうものです。ビジネスの話しに戻りますけど……魔界と天界、共にやはり、我々には協力しない方針ですね」

「何かあったか?」

「両政府が協定を書き換えました」

「ん?」

「ガストラフェテスをはじめとする、大型広域破壊危惧種妖魔の空間移動禁止に関する国際法が成立。これをもって、我々はガストラフェテス等、国際法が指定する妖魔の販売が出来なくなります」

「……対象リストは」

「オフィスに提出しましょうか?」





「メース部隊の補充が十分でないとは、どういうことだ!」

 ズルドは怒鳴るしかなかった。

「ここは最前線だぞ!?」

「負傷兵の復帰は進んでいます」

 マーリンは答えた。

「騎体の補充率も75%を確保していますが」

「120%を確保しなければ、いざという時、補充も出来んぞ!」

「その分を飛鼠ひそでカバーするというのが、ガムロ卿からの指示で」

「あんなもの使い者になるか!」

 ガンッ!

 殴られた木製のデスクが音を立てて真っ二つになった。

「使いモノになるメースとメース使いを送れと、兄貴に要請しろっ!戦争は数だぞ!」

「はっ!」

「義勇兵で使いモノになる奴らを中心に部隊の再編成を急がせろ。飛鼠ひそなんぞに乗って一端を気取るバカ共は、対機甲戦部隊に回せ。対デミ・メース戦は、これからが正念場だぞ!」

「案ずるな。ズルドよ」

 部屋に入って来たのは、ホーサーだった。

「我々、義勇兵の中でも少しは“使いモノになる”連中もおる。その上、辺境から名の知れたメース使い共が、続々とゲートを超えようとしている。やはり、ヴォルトモード卿の復活の知らせは、皆を熱くさせているようじゃのぉ」

「ふん!個人としての戦いではなく、集団戦に長けたメース使いなんだろうな。スッパード!」

「ワシの鍛えた若造達もかなりになる。奴らなら大丈夫じゃ」

「なら」

 ズルドは答えた。

「選抜は年寄りに任せるぞ」

「やれやれ……しゃしゃり出るもんじゃないわい……ほれ」

 ホーサーは、ズルドに小さな紙袋を手渡した。

「フィーリア姫からじゃ。クッキーを焼いたというてな?渡してくれと」

「そ、そうか」

「頑張って下さいと伝えてくれという」

「ああっ!」

 ズルドは娘の励ましを耳にして、顔を紅くして頷いた。

「俺は頑張る!勝って、フィーリアに幸せなこの人間界を見せてやるのだ!」






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